ウクライナへの軍事侵攻を巡り、「停戦が可能となるのはロシアの全要求が満たされた場合のみ」とし、一切の妥協を否定したプーチン大統領。ロシアでも6日に行われた反戦デモで4,600人以上が拘束されるなど、国際社会のみならず自国民からも激しい批判が湧き上がる中、プーチン大統領が戦争遂行にこだわり続ける理由はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、「プーチンが死に物狂いで戦わざるを得ない事情」を解説。さらに今後の世界の行く末と日本が置かれる立場を考察しています。
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泥沼化するウクライナ戦争 東西冷戦構造になる
ロシアがウクライナに侵攻して、1週間以上がたち、キエフ包囲もできず、攻撃が停滞している。一方、東南部の作戦は順調であり、ヨーロッパ最大級のザポロジエ原発を抑えた。東南部はロシア優勢で、しかし、キエフ近郊はウクライナ軍が善戦している。この戦争と世界構図を検討しよう。
バイデン大統領は、米軍をウクライナに送らないと、プーチンに直接言い、ロシアを侵攻させる糸口を開いたことは、確かである。
このため、ロシアはウクライナに侵攻したが、キエフでの戦闘に負けると思っていなかったことで、誤算を生じたが、戦争に負けるとプーチン自身の命に関わるので、戦争を停止できない。
ウクライナが負けるまで、戦争を継続することになる。プーチンには出口がない。このため、欧米日の経済制裁は徐々に増してくるので、中国への依存度を増していくことになる。
バイデン大統領は、インフレも戦争も、プーチンのせいにできるので、中間選挙対策にもなる。米国の分断も幾分か緩和されることになる。敵がいれば、まとまれる。
パウエルFRB議長も、インフレはFRBの責任ではないとして、暗にロシアのせいと言っているのであろう。戦争で国民の目を外に向けさせる政策を米国は、自国の犠牲者なしで、行えることになった。
表では、NATO軍はウクライナ戦争に介入しないとするが、裏で米軍兵が大量に義勇兵として、ウクライナ戦争に参加することになる。米軍事専門会社が、ソロスなど富裕層からの依頼で送り込むからである。
すでに米兵3,000人を含む1万5,000人の義勇兵がウクライナに入国したという。この連中は戦争のプロであり、ゲリラ戦への転換ができることになる。
これって、ロシアが得意としたハイブリッド戦争をウクライナで、米国が行うことである。反対に、ロシアのハイブリッド戦争を主導してきたロシア軍参謀総長ゲラシモフ氏は、正規戦に反対したようで解任された。
ロシアは、ウクライナ侵攻では正規軍が中心になり、キエフ侵攻軍には、急遽集めた新兵を送り込んでいる。キエフ攻略は簡単に済むとみていたことがわかる。
ウクライナ軍主力も東南部戦線であるので、この見方もわかるし、現状の状態を、ロシア軍は主力のウクライナ軍を打ち破って、東南部で占領地域を広げているので、負けているとはみなしていない。
このため、プーチンもロシアが最終的に勝つと、まだ、考えているはずだ。欧米メディアの報道は、ウクライナ寄りすぎる。この戦争は、そう簡単には、終わらない。10年戦争になる。ロシアのクーデターでプーチンが殺されるまで続くことになる。
しかし、ウクライナは国が徹底的に荒廃される。ゼレンスキー大統領は、「ミンスク合意」を履行して中立化した方が、国民の犠牲者が少なく、国が荒廃しなかった。国民もNATO加盟に熱を入れずに、ロシアに譲歩した方が、結果的には良かったような気がする。
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しかし、荒廃を少なくする方法は、ウクライナ軍の補給が尽きると負けて戦争は終わったことだ。しかし、戦争終了で荒廃が止まるはずが、世界から補給物資がウクライナに送られ、義勇兵も来るので、戦争は長引くことになる。その補給ルートはポーランドであり、次の焦点はポーランドへのロシアの行動になる。
事実、ロシア外務省は、ウクライナに武器を提供する国に対し、ロシア軍に対して武器が使われた場合は相応の責任を負わせると警告した。この一番の目標は、ポーランドになる。
日中戦争で、補給ルート阻止のために、日本軍が東南アジア侵攻をした理由でもあり、補給ルートを止めることが重要とみると、次の焦点は、ポーランドになる。
ポーランドは、ウクライナ国境で鉄道線路も繋ぎ、鉄道で物資を大量にウクライナに運べるようにしている。この補給を止めないと、ロシアは勝てない。
この補給ルートを止めるために、戦術核ミサイルを使うことも想定する必要がある。ポーランドは、NATO加盟国であり、全面戦争になるが、ロシアが勝とうとすると、その可能性も出てくる。プーチンは自分が死ぬなら、道連れにする可能性もある。ロシアの負けが見えた時点が危ない。
このため、米国はプーチンの精神状況を調査する必要性を見ている。
もう1つが、ロシア軍事専門家は、ロシアの弾薬の消耗で、今後3週間で停戦するというが、プーチンが生きている限り長期戦になるとみる。プーチンは負けるとクーデターで殺されるからだ。死に物狂いで戦争遂行を行う。
すると、ロシアは1日150億ドルの戦費が必要であり、戦争物資を優先するので、国民への物資の不足が出て、かつ、ルーブルの価値が大幅に落ちて輸入もなくなり。国民生活は相当に苦労する。EU諸国はロシア向けの船便を止めたことで、日用品もなくなる。
これに、いつまでロシア国民は耐えられるかである。国民の不満爆発でクーデターになる可能性もあり、精神状況と、国民の不満の両方を見ないといけなくなる。
すでに、富裕層のロシア人たちはフィンランドに脱出している。この動きも加速する。ロシアの国力消耗と貧困化が進む。
そして、反対に世界は、ロシアに資金や物資を補給する国にも経済制裁を行うことになり、その対象国に中国も含まれることになる。これは東西冷戦構造になる。世界の分断で、グローバル経済は崩壊する。中国からの安い物資がなくなることになる。
このため、世界的にインフレが加速する。日本は貿易量の多くを中国依存であるが、それがなくなる。代わりに、円安になり、中国で生産していた物品の多くを日本で作ることになる。人手はロシアやウクライナ、中国などからくる難民、移民たちがいる。
ロシア包囲網に加わらないのは、インド、中国、中東やイスラエル、トルコなどであり、トルコはウクライナ軍にドローンを大量に供給し、かつ操縦士も送り込んでいる。一方、ロシアやイランからのパイプラインがトルコを通るので、経済的な関係もある。トルコは両方から利益を得ることができることになるが、米国の説得でロシア寄りから脱却した可能性もある。
イスラエルは、ロシアに電子兵器を補給していてお得意先である。それと、中東での戦争時、ロシアの参戦を恐れている。
米国は、2正面作戦を行う必要になり、その分、戦略が分散して、日本やインド、豪州などの負担が増えることになる。
日本は、中国と北朝鮮に加えて、ロシアにも対することになる。3正面作戦となり、苦しくなる。恐れていた事態になってきた。
さあ、どうなりますか?
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image by: Evgenii Sribnyi / Shutterstock.com