プーチンを煽りウクライナ侵攻させた“真犯人”は誰か?炙り出された悪魔の構図

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3月3日に2度目の停戦協議が行われたものの、ウクライナへの攻撃の手を緩める姿勢を見せないプーチン大統領。国際社会は例を見ないほど迅速にロシア包囲網を築きましたが、その動きやメディアが伝え続ける内容に対して違和感を抱く識者も少なからず存在するようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では著者で元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、ロシアの武力侵攻は100%支持できないとした上で、自身が違和感を覚えざるを得ない理由を挙げるとともに、「プーチン憎し」の勢いで行動を取ることの危険性を指摘。さらにウクライナから直接ロシアとの仲介依頼を受けた中国が置かれた立場と、プーチン大統領の恐怖を煽った勢力についての考察を試みています。

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ウクライナ紛争の落としどころは見つかるか?

2月24日に大方の予想に反してウクライナ全土への侵攻を開始したロシア。

宣言通り行ったウクライナ東部ドンバス地方へのロシア軍の“派遣”に加えて、軍事演習を継続していたベラルーシからウクライナ北部へ侵攻し、第2の都市ハリコフ(Kharkov)へ攻め入り、首都キエフへの進軍を匂わせるためにチェルノブイリ原発を制圧しました。そしてクリミア半島・黒海からはオデッサをはじめ、ウクライナ南部からの進軍を続けています。

当初、3日ほどでロシア軍が全土を掌握し、ゼリンスキー大統領を追放するというように見られていましたが、ウクライナ軍および義勇兵の善戦により、今日で侵攻開始から1週間持ちこたえたことになります。

その間、ゼレンスキー大統領はお得意のパフォーマンスを駆使して、国民の抗戦を鼓舞するだけでなく、国際社会における親ウクライナの波を創り出し、【ロシアvs.ウクライナ】の図式を【ロシアvs.国際社会】に塗り替えました。

各国では大規模な反戦デモ、そして反ロシアデモが巻き起こり、ウクライナへの多方面からの寄付と支援が驚くべきスピードで、驚愕するほどの額面が集まりました。

国連では3月2日に行われた緊急総会およびジュネーブの人権理事会において、反ロシアの支持が141か国に達し、ロシアのウクライナからの即時撤退が要請されました。総会決議には、安保理決議と違い、国際法上の履行義務は発生しませんが、国際世論は完全に反ロシアで燃え上がっていることを浮き彫りにしました。

外交的な運動と並行して、これまた驚くべきスピードと規模で、反ロシアの経済的な制裁が強化され、ついには経済的な最終兵器とまで呼ばれるSWIFT(国際決済システム)からロシアの主要銀行を排除するという“ウルトラC”まで繰り出されましたし、アエロフロート・ロシア航空による寄港および領空の飛行を禁止するという制裁も課されています。

これらの制裁の効力については、多少、疑問が残りますが、それでも【ロシアおよびプーチン大統領に対する国際社会からの激しい怒り】を示すには十分なものであると感じます。

このような国際社会からの敵対的な感情と、思うように進まない戦況(特にウクライナ攻略)に苛立ったのかどうかは知りませんが、プーチン大統領はロシアの臨戦態勢を核兵器の使用を可能にする緊急体制にレベルアップし、「ロシアの国家安全保障を脅かすようないかなる企みも、破滅的な結果をもたらすことになる」と徹底的に対峙する構えを見せました。

これで「ついに第3次世界大戦か?」とか、「ただのブラフだろう」とか、挙句の果てには「プーチン大統領の思考能力・判断力の低下」を勘繰ったかと思えば、落ち着きのない素振りを指して「プーチン大統領はパーキンソン病を患っている」という、ちょっと関係のなさそうな失礼な批判まで飛び出してきました。

核使用の可能性をちらつかせるというハードコアな対応を示しながらも、表向きにはウクライナとの停戦合意の協議には応じるという外交的な解決チャンネルもしっかりと残しているあたりは、まだ交渉上の勘はくるってはいないように見えます。

とはいえ、協議とは名ばかりで、ウクライナ側が到底飲めないような内容を繰り返しているだけで、実際にはキエフ侵攻に向けた時間稼ぎとも理解できますが。

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