プーチンを煽りウクライナ侵攻させた“真犯人”は誰か?炙り出された悪魔の構図

 

そして極めつけは、【非専門家・非当事者が嬉々として行う戦況のアップデートや軍備の分析や紹介、そこに無責任に群がって勝手な議論を展開する人たちの多いこと】にとても違和感を抱きます。

「トルコがドローン兵器を投入したらしい」

So what?

「ロシア軍は士気が低く、ウクライナを攻めあぐねている」

Maybe。でも戦略かもしれませんよ。

「前から思っていたのだけど、プーチン、最近おかしいよね?」

え、本当に?あったこともないのに、そんなことをどうして言えるのか?

例を挙げだすとキリがないのでこのあたりで止めておきますが、何ら確固たる根拠もなく、ただの個人的な関心だけで発せられる内容が、いつしか事実にすり替えられるという、見事に情報戦に嵌められ、いいように利用されている好例だと考えられます。

もちろん、違うかもしれませんけどね。

ところで、このところ、ウクライナ大使館が公的に志願兵を募り、日本からは70名以上が手を挙げたとか、スウェーデンは志願兵のウクライナ入りを支持するといったような情報が流され、どこかそれを称賛するような声も多く聞かれますが、ロシアが軍事力による侵攻を行ったことに対してウクライナ人が自衛のために立ち上がる、またはウクライナ人の自衛努力を助ける支援というのはまだ理解できますが、非ウクライナ人がウクライナ入りして、ロシアと対峙するような事態、つまり【目には目を歯には歯を】という対策は、本当に称賛されるべき内容でしょうか?

ちなみに、ウクライナに外国人部隊が存在することは、プーチン大統領に攻撃のレベルアップの口実を与えることにならないでしょうか?

プーチン大統領およびその側近たちが、国際社会から袋叩きにあいつつも繰り返す介入の理由を今一度思い起こすと、何と言い続けているのでしょうか?

【アメリカ、欧州各国、NATOが、勢力範囲を東に広げ、ウクライナにまで至ることは、ロシアの国家安全保障を脅かす非常事態】

この表現は様々なバージョンがありますが、正規の政府軍の派遣でないにせよ、志願兵のウクライナ行きを後押しすることで、プーチン大統領とその側近から「ほら見たことか!」と、うまく言い訳に使われることはありませんか?

「ロシア憎し。プーチン憎し」という勢いで行動を取ってしまうことは、大変なステージに自らを押しやることにならないのか。ちょっと立ち止まって考えてみることをお勧めしたいと思います。

ところで、先ほど、本当にプーチン大統領の意図と覚悟を読み違えてしまったのは、中国の習近平国家主席だけだろうと申し上げました。

2月4日に北京で会談した際、「同盟を超えた特別な関係」とまで表現した相手でありながら、全面侵攻の可能性の高さを見落とし、国際社会の反ロシア・プーチンの大波と、欧米に対する抗戦という外交・安全保障上のスタンスとの間で板挟みになり、結果として対応が著しく(珍しく)後手に回った印象があります。

ロシアに対する安保理非難決議案に対しては棄権し、国連総会での総会決議でも棄権するのがやっとで、「外交的な解決を望む」としか発言できていません。

そんな中、反プーチン包囲網が出来た今、プーチン大統領が唯一耳を傾けるのは習近平国家主席だけだろうという見解が流れると同時に、ウクライナ外相は非常に巧みな一手を打ちました。

それは、中国外相の王毅外相にロシアとの調停・仲介を依頼した戦略です。これにより、距離を測りかねていたこの紛争に、中国は意図せず、巻き込まれることになりかねません。

北京の外交当局曰く、「受諾するも地獄、断るも地獄」の状況とのことですが、中国はどのような対応を取るのでしょうか?

公然と当事者から名指しで依頼されたので、無碍に断るのは難しいでしょう。かといって引き受けてしまうと、何よりも面子を重んじる中国流の交渉術からして決して失敗できず、それも、欧米社会や国際世論から見た“正解”を導き出すことを強要されるという状況に陥ります。

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