プーチンを煽りウクライナ侵攻させた“真犯人”は誰か?炙り出された悪魔の構図

 

2つ目の違和感は【情報と偽情報(Information vs. disinformation)】の区別がつかなくなってきていることでしょうか。

1991年の湾岸戦争以降、欧米諸国が絡む国際的な紛争は、勃発と同時に、Live中継され、とても臨場感があるため、なかなか隠し事が出来づらくなりました。そして今、SNSの普及とハイスピードのインターネットの存在は、市民によるLive配信を可能にし、映像と音声を瞬時に世界中に届けることが出来るようになっているため、大本営発表よりも、“信頼のおける”情報が流れているように見えます。

キエフの地下鉄の駅で身を寄せ合って恐怖と戦う市民の姿と悲痛な声。「戦争は嫌だ。死にたくない」と涙を流しながら話す子供の姿。ウクライナにいる肉親を案じる在外のウクライナ人の声。

これらに嘘はありません。

しかし、被害や戦果を伝える情報に対しては、映像と音声があったとしても、その真偽の判断にはとても慎重にならないといけません。

私はコソボをはじめ、イラク、アフガニスタン、東チモール、シエラレオネ、スリランカ…いろいろな紛争地に赴いていますが、カメラが捉え、映像として配信される“場面”は、実際にはごくごく一部の、悪い意味でフォトジェニックな場面であることが多く、その他の場所では、銃声や爆音におびえながらも、比較的普段の生活が営まれていることも少なくありません。今、私はウクライナにいるわけではないので断言はできませんが、恐らく今回もそのような日常があるはずだと感じています。

それはなぜか。

メディアなどを通じて伝えられる内容とは別に、別ルートで入ってくる情報をベースにした場合、そのように感じるからです。

とはいえ、圧倒的な戦力を誇るロシア軍が突然現れ、攻撃を仕掛けていることは事実ですので、そこには得も言われぬ恐怖の状況は存在し、私はそれを決して擁護しませんが。

3つ目の違和感の理由は、2つ目の理由にも通じるところがありますが、世界中で一気に広がったと伝えられる「反ロシア・ウクライナとの連帯」という一般市民の声と感情は、どこまで国際世論を代表しているのか?という点です。

ちなみに繰り返しますが、私自身は、ロシアによる武力侵攻に踏み切るという決断は、いろいろな理由に鑑みても、決して許すことが出来ないものですし、絶対に越えてはならない一線を越えたと考えて全面的に非難します。

加えて、ウクライナの一般市民の人々に対しての連帯にも賛同しますし、私自身もすでに多種の支援も行い、届けています。

しかし「世界の世論が…」という描写には、ちょっと不安を感じます。あまり報じられませんが、あれほど現地から臨場感あふれる状況をLiveで伝えてくるCNNでさえ、最近行った世論調査では「アメリカ人の7割強は、無関心か、距離を置いている」との結果が出たようです。これはBBCでもよく似た数字です。

なぜでしょうか?

これは気候変動問題に対する活動家によるデモにも似たことが言えるでしょう。脱石炭、再生可能エネルギーへの急速な移行、各国政府の行いは生ぬるい…。

いろいろな声が報じられ、フォトジェニックな画像が繰り返し流されますが、日本だけでなく、考えを自由に表明することを権利とさえ考える欧米の社会においても、大多数はsilentです。いわゆるサイレントマジョリティーです。

「私一人が声を上げても…」と諦めているのではないかとの指摘もありますが、自らの日常に追われているとも言えるでしょう。

特にコロナ禍ではその傾向が強まったのかもしれません。

繰り返しますが、抗議の声はどんどんあげるべきだと信じますし、私も今回のロシアの愚行・蛮行に対しては、怒りを通り越し、呆れています。

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