プーチンを煽りウクライナ侵攻させた“真犯人”は誰か?炙り出された悪魔の構図

 

全面対決だ!と息巻きつつも、しっかりと話し合いのチャンネルをキープしているのは、紛争調停における最低限のラインを理解していると感じるのと、極端な内容をぶつけて、あとは相手が妥協し始めるまで、表情も変えずに沈黙する、というソ連時代からの交渉術は健在だという特徴も見えてきました。

「ああ、しばらくこれは長引くなあ」

通常はこう感じて、長期戦に向けた対策を練るのですが、この1週間の国際社会の異常ともいえる行動の迅速さと、これまでに例を見ないほど一致団結する様を見ているうちに、欧米や日本政府、そしてメディアが伝え続ける内容に対し、何とも言えない違和感を抱くようになってきました。

「島田、何を言っているんだ!まさかプーチン擁護か?」とご批判を受けるかもしれません。

ちなみにはっきりと申し上げておきますが、調停人という仕事柄、「まあ、どちらにもそれぞれの言い分がある」という視点は常に持ちますが、今回、ロシアが行ったように軍事力によって武力侵攻するというのは、100%支持できず、これは大きな失策かつ愚策だと思います。それがたとえ、アメリカも軍事介入を正当化する際に常用する【国家安全保障】が理由だったとしても、です。

では、どうして違和感を抱くのか?

いくつか理由がありますが、一つ目は【欧米社会による稀にみる対応の速さと、一致団結する様子】です。

ペンタゴンやフランスの防衛省、そして英国のインテリジェンスなどの分析では、ロシア軍は3日もあればウクライナ全土を制圧するという内容を示していましたが、その3日間の間に航空機のアクセスを禁止し、SWIFTからの追放を含む金融面での制裁に合意し、国連で通常あり得ないスピードで良く出来上がった非難決議が提示されて、それが僅か1日足らずで合意された姿を見て、「これはもしかして、前もって用意されていたのではないか?」と疑念を抱きました。

プーチン大統領がウクライナ全土への侵攻を命じた際、私も「欧米のリーダーたちは散々煽っていたが、プーチンの覚悟のレベルを読み違えたのだろう」と感じていました。

しかし、恐らく“主要国”の中で、本当に読み違えていたと思われるのは、習近平国家主席の中国ぐらいで、反ロシアの急先鋒となっている欧米諸国とその仲間たちは、もしかしたらプーチン大統領をいろいろな方向から煽り立てて、全土侵攻も予測したうえで、前もって対応策のパッケージについての協議を行い、有事には迅速に、それも綿密に寝られたスケジュールに沿って、淡々と執行しているようにも見えます。

最後まで厳格な対ロ制裁の執行を渋るドイツをなだめるために、アメリカはもちろん、日本や韓国にまでLNGの融通を行わせて、制裁の準備をしたとも理解できないでしょうか?

そして、その対応の波はあっという間にスポーツ界も席巻します。サッカーのEuro Championshipの決勝戦(もともとはサンクトペテルブルクでの開催)をパリに変更しただけでなく、ロシアチームのトーナメントからの排除が迅速に決められました。そして3月3日には、北京パラリンピックからのロシアとベラルーシ選手の出場資格取り消しという事態にまで拡大しています。

21日に閉幕した冬季五輪の際にドーピング問題の扱いについてあれほど時間をかけて決めたにも関わらず。恐らくテニストーナメント、フィギュアスケートなどにも波及してくるのも時間の問題でしょう。

ご批判を受けるでしょうが、ちょっとあまりにも手筈が良すぎると感じませんか?

国際社会の団結、solidarityの現れと取ると非常に美しく見えるのですが、今回はどうなのかは分かりませんが、紛争調停の経験から申し上げると、そんな美しい“現実”は存在した試しがありません。少なくとも私は知りません。

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