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国際社会から孤立するプーチン。ロシアが「経済的に破綻した核武装国」となる日

停戦交渉が続けられている一方で、ロシア軍による攻撃の激化が伝えられるウクライナのキエフ周辺。自由と民主主義を掲げる国家の首都は、独裁者の手に落ちてしまうのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、各国からの経済制裁にプーチン大統領が見せた反応の悪手ぶりを指摘するとともに、ロシアが外国人兵を投入する意味を考察。さらにロシアの戦車隊がウクライナ軍から攻撃を受けた映像等を分析しつつ、キエフ包囲戦の予測を試みています。

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キエフ包囲戦へ

ウクライナに侵攻したロシア軍は、いよいよキエフを本格的に攻撃対象とする作戦に入ったようです。同じ犬種のワンコを飼っている縁で我が家とつながっているあるウクライナ人家族は、直前まで「故郷ウクライナのために戦って死ぬ用意ができている」として、キエフの自宅に長く留まっていましたが、昨日の段階でやっと退避を始めたようです。少しでも犠牲者を増やさぬよう、ウクライナ政府が退避を勧め始めたのでしょうか。折しも、ロシア軍が3方向から進軍を再開したとの情報が駈け巡り、空港や住宅街が被弾して炎上している様子が、衛星写真で公表されています。

日本を含む欧米諸国は様々な制裁を連発して、経済的にロシアを孤立させる動きを強めてはいますが、キエフとウクライナをロシアの侵略から直接守る動きにはなっていません。残念ながら、私たちは侵略を止める有効な手だてを発見できないまま、市民が殺戮されるのを見ているしか方法がない。せめて「早く逃げて」と祈りたい気持ちです。

間違いなくこの事件は、「戦後」に築かれる新しい世界秩序に反映されることになるでしょう。それがどんなものになるのかは分かりませんが、どんな世界を作り上げるにしても、この問題を素通りすることはできないのだと思います。

というところで、春を通り越して初夏の空気に包まれている南関東の寓居から、3月13日付の<uttiiジャーナル>です。

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「デモくらジオ」(3月11日)から

今日は3月11日、震災のことももちろん大事なんですが、どうしても、本会議プレイバックを含めまして、ウクライナの問題にかなり時間を割くことになると思います。いただいているメールもやはり触れられている問題のおそらく一番多いのがウクライナのことだと思います。本会議は山口さんの司会で首藤さんとか丸山さん、太田さんの話、あとでたっぷり聞いていただきたいのですが、正直言って私は賛成しかねるところも色々あるんですけれど、そのことを含めて後で観ていただければと思います。

冒頭に申し上げたいことなのですが、プーチンさんは妙な具合になってきましたね。今日の夜のニュースでウクライナ関係のこととして二つ出ています。一つはプーチンさんが今度のことに対する日本を含めた諸国からの制裁、その流れの中でロシアに進出している企業が、とりあえず一時的という言い方が多いようですが、事業から撤退すると、あるいは休む、営業をしないということがある。マクドナルド、コカコーラ、スターバックス、ユニクロ、その他トヨタもソニーもみなそのような決定をしていますけれど、プーチンさんはそれが非常に癇に障ったようでして、そのような企業のロシア国内にある資産を差し押さえると。その言い方かどうか分からないですが、ロシア側に引き渡す、国有化…社会主義の匂いがしてきますけれどね、国有化すると。しかる後にそれをロシア国内の誰かに売却をして(営業を)継続させると。まあ法律的にそのようなことが可能ということもあり得るでしょうし、進出した資本は常にそのようなカントリーリスクを抱えていますから、その表れの一部と理解する向きもあろうかと思います。しかし、今の戦争状態が終わり、何らかのバランスというか平衡を取り戻した後で、じゃあ、その企業はもう一度ロシアに進出するでしょうか。私ならしません。そのような企業、ロシアに貴重な資本を投下してくれた企業に対して非常に敵対的な、二度と来るなと言っているのと同じだと、普通なら解釈されるのではないでしょうか。そういう問題があります。ロシア市場がおいしいので、ロシアの政権がどんなに残虐非道な国際法違反のことを行おうとも、それでも進出するという企業があるのかもしれませんが、その企業にとっては、支払いがルーブルでなされるということになりますよね。どうなんでしょう、本当においしいのか。もうルーブルの価値はガラガラ下がっていますから、その先に国際経済の中でもロシアのポジションはキューンと縮んでくるということですので。(企業からも)もう相手にされなくなるということがあり得るのではないでしょうか。それから今日発表になった新しい情報のもう一つは…あ、ごめんなさい、それを言う前にもう一言。外国企業の資産差し押さえの話というのは、自分で自分の首を絞める政策。本当ならそれはちょっとやめなければならないですと側近が、側近だかなんだか分かりませんが、そういう人たちがプーチンさんを押しとどめなければならないと思うのですが、そうならなかった。これはもう焦りの表れであって、ロシアはますます苦境に立たされるという。プーチンさんにとってどうかは分かりませんが、ロシア全体としてはますます苦境に陥ることになると思います。

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もう一つの話。もう一点は、戦域にロシア兵ではなくて外国の兵隊を導入するということを発表しています。すごい話ですよ、これ。(ニュースなどでも)割とサラっとそのまま通してしまっているものが多いですが。ロシア兵がたくさん死んでいるということですよね。本会議ではウクライナから、あるいはロシアから出てくる情報はインチキが多いのだというふうな話をされていますが、いまやほとんどの人がスマホを持って目の前の状況を撮影できるというところからいろいろな情報が出てきているので、それらをすべからくフェイクと言うのは間違っていると思うんですね。たとえば戦場、最前線の映像などはBBCのニュースなどを見ていればいくらでも出てきますし、そこにはおそらくはロシア兵に撃ち殺された市民の遺体であるとか、あるいはロシア軍は非常に単純な攻撃をしてくるようなのですが、単純に突っ込んできたためにその場で射殺されたロシア兵の遺体であるとか。さらにはケガをした子供が病院で血だらけになっている映像であるとか、いくらでも出てくると思います。

ロシア兵に関しては500人くらい死んでいるとロシア国防省も認めているようですが、そんなもんじゃないだろうと。一説には死者が2万人に近づいているのではないかという話がありました。ごく最近公表された、BBCのニュースで出てきましたが、ロシア軍の戦車隊がキエフに向かって進軍しようとしているところをウクライナ軍に待ち伏せされて、どうもあれは例の対戦車ミサイルではないかと思うのですが、煙の広がり方から見て、真上から落ちてきている。ロシア軍の戦車が破壊される映像がありますけれど、相当犠牲が広がっているのではないか。そうするとロシア兵の死者が増えると、国内で遺族あるいはそのこと自体に反応する人たちがたくさんおられると思うんですね。遺族はもちろん、そうでなくても「こんな戦争はやめてくれ」という声が大きくなる。(外国兵の導入は)それを避けるのが目的と考えられるわけですけれど、同時に、例えばゼレンスキー大統領の暗殺計画が浮上しましたが、三つのグループがウクライナに入り込んでいるという話でした。そのなかにはチェチェンの暗殺部隊が来ていたという話(悪名高きカディロフの手下だったようですが、全滅したようです)、チェチェン紛争の時にもチェチェン内部でロシアに呼応して残虐行為を働いたものたちがいた。そういう人たちも今度の動きの中に含まれるのかもしれない。恐ろしいのはベラルーシとかですね、あるいはプロの戦争屋ですよね、そういう人たちを使って、動員しようとしているのか。そうなるとですね、戦争の目的自身が強く疑われることになる。大勢の人がそのように思うようになるのではないかと思います。ウクライナを侵略しているロシアの傭兵部隊とウクライナ軍が戦っているのだとしたら、これは一体何なのかという気がしますよね。

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戦争の目的、これに関してプーチンさんが言っていることもドンドン変わっていると思うんですよ。最初は東部二州(の親露派支配地域)を独立国として承認し、それぞれとの間に条約を結び、集団的自衛権を行使するということでロシア兵を送った。その地でウクライナ政府によりロシア人が虐待されているので彼らを助けるのだと。こういうのが目的だったと思うのですが、いまや全然そんなことではないですよね。キエフを落とそうとしているのは全然違う目的があるからだということを端なくも表している。

どちらにしてもロシア兵がたくさん死んでいるということ、その前に経済的に厳しくなってきていること、こういう制裁の効果なりウクライナ軍との戦闘の結果なりで、新しい条件が生まれているということだと思います。先週ですか、元ウズベキスタン大使をされていた河東さんの話をご紹介しましたけれど、プーチンさんは広いかつての旧ソ連領をもう一度回復したいと思っているのかもしれません。ところが周辺諸国との関係もうまくいっていないですし、その最たるものがウクライナなわけですが。考えてみると、クリミア半島をロシアに編入するという話が、私は最初違う感じを持っていたのですが、あまりにもロシアにとってうまくいきすぎて、ウクライナ侵攻というのはプーチンさんが誘い出された結果だったという可能性があるのではないかと、思っています。根拠はないですが、河東さんのお話で2014年のクリミアの時にはウクライナの軍隊はほとんどないに等しい状態だった、だから簡単に進駐できて、(ロシアはクリミアを)我が物にしてしまった。それができた。しかしその後、2014年以降この8年間にウクライナ軍は米軍の軍事顧問団などの力によって鍛えられてきたと。40万人くらいの軍隊が出来ている。これとロシアは今戦っているということなので。しかもいろいろな武器も送られている。直接介入はしないけれども、かなり強力で最新鋭の対戦車ミサイルまで供与されているということになり、そこにプーチンさんは誘い出されて引きずり込まれたということかもしれない。なんとなればこの戦争の結果は、おそらくウクライナ自身もこれからキエフに対する総攻撃を受けることになれば、本当に悲惨なことになる。ウクライナも地獄ですけれど、ロシアも地獄。これで世界経済から切り離されてしまえば、ロシアの政権は維持できなくなる。

維持できなくなっても核兵器は持っている。

経済的に破綻した核武装国という、この存在を世界はどうやってこなしていったらいいのか。どうやって付き合っていけば良いのか。さっぱり分かりませんね。プーチンさんはどんなに残虐非道なことでも命令一下やらせている。その自信の源にあるのは、ロシアがソ連以来の核兵器保有国だからですよね。核武装の国だからですよね。そのまま、核武装したまま落ちぶれていく、廃れていく国になるということなので、何が起こるのか、心配があります。まあ、中には「プーチンさんがやっていることの良い悪いは別としてすごい政治家なのだ」と評価する向きも、本会議などを伺っているとあるのですが、(彼はいずれ)ロシアを崩壊させた張本人ということになるんじゃないですかね。そんな気がしています。

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これで、2週間たったわけですよね。で、キエフも落とせない状況。おそらく国債の償還が次に来るときにデフォルトになる可能性があるのではないでしょうかね。デフォルトになったからどうだとすぐに法的な結果が生じるわけではないそうですが、そんな国になってしまったという事実は様々な影響を与えるでしょう。それと、暖かくなると、ドイツのエネルギー需要が減りますよね。暖かい季節になると。冬のうちに決着を付けてしまえば、例えば2月中にとかね。

決着がついてしまえばヨーロッパ諸国にとってもどうすることもできない。何せ、何%でしたか、大変な高率で暖房をロシアの天然ガスに依存しているんですよね、ドイツは特に。その状況からするとロシアに逆らえないという話になってくる。でも、暖かくなったらどうですかね。「長引く」ことの意味はそこにもあるというふうに思います。まあ、どちらにしても、繰り返しになりますけれど、このような挙に出るに当たって、アメリカが仕組んだ話だという見方があるかもしれませんね。そうだったとしても、実際兵隊を動かして弾を撃っているのは誰かということは考えた方が良いですし、ロシアという国の、国としての意志決定機構はひどく歪んだものだということは世界中に知れ渡ってしまった。プーチンさんと閣僚との会議の様子。閣僚がうじうじ言えないでいると、「どちらかハッキリしろ」とプーチンさんに言われておどおどしながら「支持します」と言う。そのような状態。ならば、そのプーチンさんは理想に燃える政治家で、例えば「清貧」などという言葉がありますけれど、南米のコスタリカでしたか、貧しい生活をしている大統領がいましたよね。中米の国だと思うのですが(*違いました。ウルグアイのホセ・ムヒカさん!)、そのような、理想に燃えて私利私欲は一切捨てて神々しいまでに潔い人かというと、廷内に柔道の道場まで備えた巨大なお城のような建物を、確か政敵のナワリヌイ氏のスタッフが公開したのだと思いますが、ものすごい宮殿のようなものをお持ちですよね(通称「プーチン宮殿」)。仲良しのオリガルヒの一人が、あれはプーチンのものではなく私のものだと助け船を出したようですが、柔道のためのスペースがあるんですよ。それはプーチンさんのためのお城でしょう。そこに今いるのかどうかはわかりませんが、とてもではないが清貧な人という印象はないですよね。(そのプーチンさんが)「国家のため」ということで若い兵士を大勢死なせている。そしてウクライナで市民を殺害している。それを考えたら、プーチンさんは素晴らしい政治家だとは言えないと私は思います。

来週はどうなっているのか。いくらウクライナ軍が強くても、膨大なロシア軍や外人部隊と戦いきれるのだろうか。キエフを守れるのかどうか。

ロシアの戦車隊をウクライナ軍が攻撃している映像ですが、攻撃を受けてロシアの連隊長が死亡したという内容の通信が傍受されている。これ、フェイクではないのだとしたらですが、相当やばい話ですね。長い車列のどこに連隊長がいるのかについて多分ウクライナ軍は知ってしまったということでしょう。「ウクライナ軍の無人機が飛んでいる」ともロシア兵が言っている。ということは制空権も無人機に関しては奪われていない。ウクライナ軍の無人機は偵察機。攻撃型ではなくて。トルコ製の奴ですが。戦車隊の状況を把握して攻撃したことになる。そうなると、ロシアの戦車はすごい戦車なんでしょうが、一列に並んでくると、ほとんど宮本武蔵がなんとか道場(吉岡道場)の大勢の門弟たちを相手にして勝ったという逸話(吉川英治さんの創作で誇張された可能性がある?)。相手を田んぼに誘い出し、あぜ道を通って一人ずつやってくるのを順番に斬っていったというのに近い話になる。そんな状況をイメージしてしまうことになります。だとすればロシア軍にとっても、(キエフ包囲)は簡単ではないぞということです。(『uttiiジャーナル』2022年3月13日号より一部抜粋、続きはご登録の上、バックナンバーをお求めください)

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image by: Tverdokhlib / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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