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きわめて姑息。内閣府が選択的夫婦別姓の世論調査で使った“禁じ手”

希望する夫婦が結婚後もそれぞれの姓を名乗ることを可能とする、選択的夫婦別姓制度。その導入の賛否を問う世論調査を巡り、各所から疑問の声が上がっています。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、賛成者の割合が過去最低となった最新の調査で、内閣府が使った「禁じ手」を紹介。その上で、政府の同制度に対する「思惑」を推測しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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世論は操作されている?

今回は「数字のマジック」について、取り上げます。

内閣府が25日に公表した「選択的夫婦別姓に関する世論調査」で、「賛成」とする人の割合が、過去最低の28.9%だったことがわかりました。

えっ、なんで??ずっと増え続けていたのでは?と疑問に思った人も多いことでしょう。私自身、驚きました。なにせ、前回の調査では42.3%が「賛成」。1996年の調査開始以降、最も高い数字でしたし、その他の調査でも「賛成派」が増えている傾向は認められていました。

では、なぜ、今回の調査で「選択的夫婦別姓」肯定派が、こんなにも激減してしまったのか?

…「質問文を変えたことに加え、選択肢の順番も、調査方法も変えた」という、パネル調査の禁じ手をしたことが原因です。

研究者の端くれとして意見しますが、今回のような量的な調査は、政策の方向性を決めるのに極めて有効な手段です。

しかし、「数字」を意味あるものにするためには、インタビューなどの質的な調査を同時並行で行ったり、質問票を作る段階から当事者に参加してもらって「届く文言」を検討したり、

などなど、詳細につめ、サンプルもバイアスがなるべくない方法で選び、

と、綿密に制度設計した上で、調査をスタートします。

調査の妥当性と信頼性を高めない限り、「使えない」からです。

なのに…、国はいとも簡単に変えてしまったのです。

報道によれば、

コロナ禍で調査方法を郵送に変えざるを得なかったことは、理解できます。ランダムサンプリングをすると、60歳以上が多くなってしまうのも超高齢社会では仕方がないでしょう。

しかし、なぜ、選択肢の順番も、文言も変えたのか?

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内閣府は「国会議員などからわかりづらいという意見があったため」「現行の制度から差異の小さい順に並べた」と説明したそうですが、なぜ、今回から変えたのでしょうか?

これまでも政府の調査方法には「まじ?一体、何のための調査なの?」と突っ込みを入れたくなることが繰り返されてましたが。呆れてものが言えません。

仮に、どうしても変更しなければならない理由があるとしたなら、それを事前に公表して、当然でしょう。

そもそも今回の禁じ手は野田聖子男女共同参画担当相が、問題視したことで明らかになりました。

野田大臣は選択肢の一つに挙げられた「夫婦同姓制度を維持した上で旧姓の通称使用の法制度を設けた方がよい」について、法務省がこれまで正式な議論の俎上に載せたことがない方策だとして、設問に関わった法務省に事前に「これではきちんとした統計が取れない」と提起したそうです。

しかし、受け入れられなかった。聞く耳を持たなかったのです。

「選択的夫婦別姓制度」の記述が、「男女共同参画基本計画」から削除されたり、調査の文言を変えたり…。

まさか、世論を操作したかった?などと穿った見方をしたくなります。

「世論の変化」という観点から捉えるなら、前回までの調査結果に基づき、「選択的夫婦別姓の支持派は増加傾向にある」と解釈すべきです。結果の数字だけを用いて、「選択的夫婦別姓を支持する人は減少した」とするのは間違いです。

今回の調査結果は「変化」を知るためのものではないし、過去と比較するものでもありません。

みなさまのご意見、お聞かせください。

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image by: Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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