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プーチン蛮行が引き金に。終わる「米国覇権」と進む「新世界秩序」形成

誰もが予想しなかったプーチン大統領の暴走は、これまで国際社会が築き上げてきた世界の秩序を大きく変えてしまうことになるようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ウクライナ紛争がきっかけとなり、ドル基軸通貨制度と米国の覇権が危機に直面している理由について解説。さらに中国の台湾侵攻開始までに、世界の民主主義国家がアメリカ一国に頼らない合同軍を結成すべき必要性を訴えています。

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ウクライナ軍の反撃に対応し始めたロシア軍

ロシアはウクライナ侵略戦争継続のためにラブロフ外相が、中国などを訪問して、世界秩序変更を述べている。しかし、ロシアの思惑とも違う新世界秩序の方向に動き始めた。その検討。

ウクライナ軍のMi-24が、ロシア領内ベルゴロドの石油貯蔵所を爆撃炎上させたが、ロシア軍は撃墜しなかった。その理由は、自国機と間違たのと、低空飛行して、レーダー網にひっかからないようにしたためだとした。

しかし、ウクライナ軍は、ロシア内攻撃を否定している。この日にマリウポリへの人道回廊設置が、仏マクロン大統領と露プーチン大統領の間で決まったが、軍部は人道回廊を作ると、マリウポリのウ軍に補給ができることで、反対した。

しかし、プーチンからの絶対命令であり、これを回避するためにベルゴロドの石油貯蔵所を爆撃されたことにして、プーチンを説得したようである。

その証拠にロシア発表の映像では、どこか河原でガソリンを燃やした映像に似ている。

ロシア軍は、キエフ近郊や南西部ミコライフから撤退して、南東部に軍を集中させるようである。東部とクリミア半島の回廊を支配して、ウクライナを分断国家化する方向に、戦争目標をシフトしたようである。

当分、一進一退の展開になり、ウ軍の新兵が訓練を終えてから戦場に出てくるまでは、この展開が続くことになる。それまでは、今までの戦力で維持する必要があり、ウ軍は厳しくなる。

このため、長距離砲、中距離ミサイルなどの提供を欧米は検討しているし、ミグ戦闘機の提供も検討している。とうとう、ウ軍にも本格的な攻撃兵器が必要になっている。しかし、この訓練が必要で、時間が必要になる。

一方、ロシア軍も戦車中心の機動部隊単独で攻めるのはなく、歩兵を伴い攻撃する方向に変化するので、戦車が簡単に餌食にならなくなる。

また、NATO軍早期警戒空域での制空権確保を諦めて、東部の空域での活動で、制空権を確保して有利に陸戦部隊をサポートする体制にシフトしたようである。このため、ロシア軍の劣勢はなくなる。

ウ軍に必要なのは、戦車や装甲車、長距離砲、高高度対空ミサイルとレーダーであり、ジャベリンやスティンガーでは戦況の改善ができなくなってきたようである。

ロシア軍の戦術改善が効果を発揮することになる。このため、ウ軍も戦術変更をしないと勝てない。当分、膠着化した状態が続くことになる。この間、両方に多くの戦死者が出ることになる。

このため、ロシアは、17万人を徴兵する。シリア人など海外雇用兵部隊は、日当のためであり、前線では尻込みして使えない。オセット人兵士ら300人は、戦場から離脱して、南オセチアに逃げ戻ったようである。

補給部隊には、中国製機器メンテや供給のために、元中国軍人の雇用兵が来ているが、これも前線には出ていかない。

このため、プーチンの命令で動く、ロシア人が必要になっている。

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「戦争の時代」が新世界秩序を誘導する

露ラブロフ外相は中国とインドを訪問した。ロシア経済維持のために、ガスと石油を売り込んでいる。石油1バーレルが35ドルという魅力ある価格で提供するために、インドも中国も大量買いに走っている。それも決済は、ルーブルや、ルピー、人民元建てという。

また、プーチン大統領は、非友好諸国に対して天然ガスの代金をルーブルで払えと宣言した。

そして、ロシアの売り込みに、危機を感じたサウジは、原油を人民元建てで売ると中国に提案している。

今まで、ドルが基軸通貨である理由は、原油売買が基本的にドル決済であることだが、このドルと原油のつながりがなくなることを意味している。

もう1つが、ドルの基軸通貨としては、米国国債の保持で外貨準備をした方が、流動性が高く、売りやすいこともあったが、米国のドル決済禁止との制裁をGDP11位のロシアに行ったことで、今後、中国でも米国債を買う動機がなくなる。ドルでの外貨準備が意味を持たないことになる。

そして、ロシアへの制裁を行う国は、欧米日韓台など西側諸国だけであり、世界の多くの国は制裁に加わらない。このため、世界的にドル建ての外貨準備をする国は減る方向で、特に世界に多い専制国では、人民元での外貨準備などになる。

特に中東では、今まで米友好国と思われたサウジやイスラエルが、ロシアに配慮している。米国は自国の石油と天然ガスで自給できるので、中東から米軍を撤退させたことが大きい。

このため、サウジとイスラエルはイランとの対決で、ロシアを頼るしかなく、脱米国になっている。米国の誤算であり、対中シフトしたことで、中東諸国の支持を失った。このため、原油とドルの結びつきもなくなり、ドル基軸通貨制度も危機になっている。

しかし、今後、原油から再生可能エネルギーにシフトするが、端境期には、混乱が生じる。その1つが、ロシアの危機感であり、それでウクライナに侵略したが、ドル基軸通貨制度も危機に直面している。

米国の覇権は、ドル基軸通貨制度によるので、この崩壊は米国の覇権の危機でもある。

もう1つが、米国や日本、欧州などの金融緩和で、通貨価値が著しく低下して、それが原因でインフレになっている。このため、ドルなどの通貨全体の信任も落ちてきた。

この原因は、国内経済の活性化で自国通貨を大量に国民にバラまいたことであり、世界基軸通貨は、どこかの国の通貨ではなく、価値が減少しない通貨にして、そのために政治家の人気取りができない必要がある。

しかし、このような世界的に信任される通貨が現在ない。一時、仮想通貨であると言われたが、価値の変動が大きく、信任を得ることはできなかった。

残すは、商品バスケットに連動した通貨しかない。金に連動した仮想通貨などが出ているが、それでも小麦や原油の物価変動に弱いので、このため、複数の商品の平均値に連動した通貨が次の通貨制度の形になるのではないかと思う。

これを米欧日など民主国家の国際組織が今のIMFのような組織を作り、世界基軸通貨として規定することである。ということで、世界基軸通貨制度になる。IMFと同様に各国が資金を出し合い、設立するしかない。

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もう1つ、世界の安定に寄与するのは軍事力であるが、NATO軍のような複数民主主義国の軍隊の複合体で、専制主義国の侵略を防ぐ必要になっている。

民主主義国は、企業の他国進出で経済的合理性を追求するので、軍事力による他国領土を取る理由がない。侵略国と侵略される国両方の経済力を奪うので、経済合理性からできない。

国民の豊かさを犠牲にできないからである。しかし、専制国は経済合理性より、自国民のプライドを重視して、他国への侵略を行うので、民主主義国も専制主義国の侵略を防ぐ必要がある。

逆に、専制国同士は協力ができない。ロシアのプライドと中国のプライドは違い、反米という弱いまとまりはできるが、それの結合は弱い。

ソ連時代は、共産主義というイデオロギーがあり、世界をまとめる原動力があり、強敵であったが、そのイデオロギーがなくなり、専制主義国はナショナリズムをベースにするしかなく、世界的な結合力をなくしている。

このため、世界の民主主義国が合同軍の組織を作り、その会議が国連を代替することになる。今のように米軍が中心では、米国民の福祉レベルが犠牲になっているので、米国民の不満が増大して、この仕組みも永続性がない。

というように、世界の覇権は、世界の組織で担保する新世界秩序になり、これに向けて、西側諸国はロシアの侵略戦争をトリガーに結束した行動をとる必要になっている。その時、日本だけが憲法9条を盾に加わらないことはできない。

そして、次の中国が台湾侵攻を行う前に、この世界的な枠組みを完成してほしいと思う。そうすれば、中国の侵攻作戦ができないことになる。

どちらにしても、新しい世界が見えてきている。

さあ、どうなりますか?

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image by: Michele Ursi / Shutterstock.com

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