世の中は新型コロナウイルス蔓延の渦中にありますが、病気はコロナだけではありません。人間ドックなどの定期的な検診でわかることは多いですが、病院嫌いの方はあまり行きたがらないまま病気が進行してしまうことも…。そこで、今回のメルマガ『久米信行ゼミ「オトナのための学び道楽」』の著者でiU情報経営イノベーション専門職大学教授を務める久米信行さんが、 病院嫌いの妻を持つ夫のお悩みに回答しています。
オトナの放課後相談室:病院嫌いの妻の説得方法
Question
私の妻は、病院嫌いで体調不良でも、滅多なことでは病院に行きません。基本的に健康かつ、体調不良に強いのだと思いますが、心配ごとがあるとすぐに病院に行く私とは大違いです。妻に言わせると「病は気からなんだから、病院に行くと気持ちが病人になっちゃう」とのこと。なので、体調不良でも、市販薬と睡眠で回復をはかっているのですが、40歳越え、回復のスピードが落ちつつあるところをみると、夫としては、心配なので病院に行って欲しいと思っています。
考え方の違いなのでなかなか難しい面はありますが、何か心変わりを促せるアプローチはないでしょうか?
(千葉県/48歳/男性)
久米さんからの回答
ご夫婦で人間ドックとジム通い。良い気で明るい病院と主治医探し。
実は、 私も本当は病院嫌い です。しかも、 祖父も父も病院嫌いでしたから、親子三代、筋金入りの病院嫌い と言っても良いでしょう。
ですから 「病院に行くと気持ちが病人になっちゃう」 という奥様のお気持ちもよくわかります。今は亡き私の父は、晩年、東大病院への通院や入院を繰り返し、その送り迎えやお見舞いをしておりましたが、 たしかに「病院内の気」は、体に良くないと感じました。 こう見えて、私は「 パワースポット」ハンター? なので、 その逆の悪い気にも敏感 なのです。
そんな 病院嫌いの私 でしたが、今では、 ちゃんと行くべき時に、行くべき病院に通う ようになりました。
それは、 病院嫌いで検査嫌いだった父が、前立腺がんという早期発見すれば治療可能だった病気を見過ごして命を無駄にしてしまった からです。 見つかった時には既に末期がんだったという悲劇 を目の当たりにしてしまったのす。
正確に言うなら、 ペースメーカーの電池交換手術を行う前の予備検査で、予期せぬ前立腺がんが見つかった のです。
実は 祖父も同じ でした。健康で病院嫌いだった祖父が、ある日、 大学病院の精密検査に出かけて帰ってくると生気がない別人になっていて、それから寝込んでしまいました。 そして、 数か月後に、そのまま天に召されました 。明治生まれの元近衛騎兵だった祖父は、 最後まで病名を口にしませんでしたが、おそらく、がんだった のでしょう。
つまり、 病院嫌いの祖父も父も、人間ドックなどの定期検査を怠ったため、自覚症状らしい自覚症状がないまま、気が付けば末期がんだった というわけです。
それでも、 私が人間ドックに行こうと重い腰を上げるには時間がかかりました。
毎月、心のうちをさらけ出す 先輩経営者との勉強会で「人間ドックに行ったことがない」と打ち明けた時、みんなから叱咤された のが、直接のきっかけです。
どのように叱られたかというと、「経営者たるもの、毎年人間ドックを受けるのは当たり前。定期検査を受けていないのは無責任極まりない。万が一のことがあってからでは遅い。会社にも社員にも取引先にも家族にも迷惑がかかる」。
渋々、受診した人間ドックの検便で、いきなり異常が見つかり 、大腸の内視鏡検査をした結果、 ポリープがある とのこと。それも、 かなり大きなポリープで、幸いにして切除して検査した結果は良性でしたが、放置していたら大変だった と言われました。
そうです。 40歳を過ぎたら、自覚症状がなくとも、突如、命を奪うような病気に見舞われる可能性がある のです。たとえ企業経営者でなくとも、 奥様は、母であり、妻であり、家庭の経営者 なのです。 もし突然、重篤な病気にかかったら、その時点で、家庭も家族も存続が危うくなる のです。
ですから 、体調に関わらず、夫婦で人間ドックを毎年受ける習慣をつけた方が良い でしょう。おつとめの会社や団体で、人間ドックの受診が義務付けられている場合もあるかもしれません。しかしながら、できれば夫婦でそれぞれの健康について見つめ合い話し合う好機として、一緒に人間ドックを受けることをお勧め します。
我が家でも、 10年ほど前から、毎年、夫婦で人間ドックを受けることを習慣に してきました。 コロナ禍で2年空いて しまいましたが、今年から、職場近くのショッピングセンターにできたドクターランド錦糸町で、 CTスキャンまでついた人間ドックを割安な料金で受診 しています。こうした、 新しくて開放的なクリニックなら、あの病院特有の嫌な気を感じずに済む でしょう。
それとは別に、 胃と大腸の内視鏡検査を、個人的に尊敬し信頼できる哲学堂石井内科医院の石井太郎先生 にお願いしています。 元大学病院勤務のスペシャリスト でありながら、 地元密着のあたたかみを感じる町のお医者さんの雰囲気をたたえてリラックスできる のです。
良い雰囲気 と言えば、父が末期がんと宣告された際に、前述の経営者勉強会で教えていただいた 帯津良一先生の病院 のことを思い出します。
帯津先生は、もともと 東大病院で勤務し西洋医療を実践 しながら、ホメオパシー、漢方、気功法と言った 伝統的な民間医療の有用性 に気づき、それらを 統合した医療 を志向しているのです。
帯津先生の病院を、両親と訪ねましたが、末期がんの患者さんが大いにも関わらず、院内は明るい気に満ちて、先生も笑顔で対応してくれた ことを、今も思い出します。
奥様と、こうした 統合医療の病院 を探すのも、ひとつの手かもしれません。
同じようにお勧めしたいのは、 ご夫婦で健康増進のためのジムなどに通われること。それも、マシンやフリーウエイトで筋肉を鍛えるというより、ヨガ、ピラティス、気功法などの身心を整え免疫力を高める健康法 を一緒に続けて、習慣化するのです。
おそらく奥様に 「体調が悪ければ医者に行った方が良い」 と言っても、その通りにはしてもらえないでしょう。
ですから、もしも私が、病院嫌いの妻(我が家はそうではありませんが)に話すとしたら「病気にならないために何か健康法を一緒に始めようよ。
前から興味があったのだけれど、ヨガ、ピラティス、気功法、太極拳など、何かやってみない?」という感じでしょうか?
その上で、病院には 「治療のためでなく定期検査のためにでかけよう」 と誘ってみましょう。
奥様のことがどれだけ大切か お伝えした上で 「自覚症状がないような体の変調に気づき、がんなど死に至る病の早期発見をするために、定期的に人間ドックや内視鏡検査を受けよう」 と呼びかけるのです。
正直言えば、 今でも私は人間ドックに気乗りはしません。 でも 「子どもが全員巣立つまでは死ぬわけにはいかない」「早期発見できればラッキー」 と自分に言い聞かせて受診します。
同様に、もしも奥様が一番大切にしているのが、お子さんだとしたら、 「子どものために」とお願い するのも良いでしょう。
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