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最悪、うつ病や突然死も。今年のGWはただひたすらに休んだ方がいい訳

3年ぶりにコロナによる規制のない大型連休を迎える日本列島。しかし今年は過密日程を避け、心身ともにゆっくりと休めるのが得策と言えるのかもしれません。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では著者で健康社会学者の河合薫さんが、日本人の間に「連続休暇=遊ばなきゃ幻想」が蔓延した理由と、大型連休を休養に当てないことで起こりうる心身の不調について解説。さらに「うつ」のないアフリカの狩猟民族の人たちの生活に学ぶ、今年のゴールデンウィークの理想的な過ごし方を紹介しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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日本人が休み下手になったワケ

今週末からゴールデンウィークです。ゴールデンウィーク中は通常どおり働き、好きな時期に休むことができる「GW選択制」を導入する企業もあるようですが、みなさんはどのように過ごされますか?

日本人は世界にも類を見ない「休み下手」と揶揄されることもしばしば。欧州のように長期休暇が「働く人の権利」として根付いていないこともその理由の一つです。

欧州にはすでに19世紀に産業界の幹部や商店主が、夏の休暇を取る習慣がありましたし、20世紀には、給与の減額なしの休暇、すなわち有給休暇を取る権利が、企業の中堅幹部、一部百貨店の従業員、公務員にも与えられていたのです。

例えば、イタリアでは1925年に「自由時間を活用して、労働者を肉体的に、知的に道徳的に鍛錬する」との目的から、鉄道旅行やアドリア海への団体旅行を割安料金で実施し、ドイツでも同様の取り組みが行われていました。

しかしながら、労働者には「連続して休む権利」は与えられていなかった。産業革命以降、労働者の間で、過労が原因と思われる心身の不調が多発していたにも関わらず、です。そこでスウェーデンが先陣をきり、1926年「精神的かつ知的な休息は労働者の健康のために不可欠である」と、労働者に「有給休暇制度」を導入。

1935年にはほとんどの欧州諸国の企業が、労働者に有給休暇を与えていたとされています。こういった流れを鑑み、ILOは1936年、「1年以上継続して働く全ての労働者は、連続した最低6労働日の有給休暇を享受する」とした条約(第52号条約)を定め、「この最低基準を超えるものに関してのみ、特別に有給休暇の分割を認める」としたのです。

一方、戦後復興にあえぐ日本では、連続休暇など夢のまた夢。詳しくは日経ビジネスのこちらのコラム(「ロシアは悪か? 東大祝辞騒動と「労働者の幸福」願った先人の希望」)に書いた通りです。

「やむにやまれぬ事情の下、有給休暇では『1日単位の分割取得』というおかしな制度を、あえて導入した」(コラム参照)ことが、「休暇とは仕事の合間にあるもの」という価値観を育み、長期休暇をまるごと旅行にあててしまったり、日替わり弁当のように予定を立てて、「連続休暇=遊ばなきゃ幻想」に囚われる人を量産したのです。

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…が、今年は、今年くらいは、ただただひたすら休むことをお勧めします。

コロナ感染拡大により、日常が激変したことは改めて言うまでもありませんがその中で増えているのが「みえないうつ」です。コロナ前ほど働いてないのにストレスを感じる人が増え、逆に在宅勤務でコロナ前より労働時間が増え、心身が疲弊している人も。

そもそも、知的な疲れほどややこしいものはありません。精神緊張や心的負担を伴う仕事は、本人が知覚する以上に心的な疲れをもたらします。心的な疲れを癒すには、適度な運動、精神的ゆとり、遊び、お喋り、笑い、など、心的疲労を癒す“資源”が必要不可欠です。とりわけ、「何もしないでぼーっと過ごす」「動きたくなったら動く」という休みの自由化を意識的に作ることは極めて重要です。

過度な遊びや、スケジュールづめの旅行は、精神的な興奮につながるストレスでもある。おまけに現代の過剰な情報化社会では、“SNSを見るだけ”でもストレスになります。休み明けに「余計疲れた」「やる気が出ない」とぼやく人が多いのも、そういった行動が心的ストレスとして、蓄積されることに起因しています。

疲労は、いわば“借金”と同じです。私たちは、私たちが認識している以上に疲れていて、疲れの借金だらけになっている。結果、頭痛、肩こり、イライラ、やる気がでない、眠れない、疲れやすいなどの症状に代表される“蓄積疲労”に陥り、最悪の場合、うつや突然死につながってしまうのです。

情報社会に翻弄される「今」の働く人たちは、「一億総国民が24時間365日開店状態」といっても過言ではありません。「何も縛られない自由時間」を連続的に取る優先度を、もっともっと高めなきゃいけないのです。うつ病は現代病とも言われていますが、うつのないアフリカの狩猟民族の人たちは今でも太陽とともに起き、太陽とともに寝て、日中は体を適度に動かし、食事はみんなで平等に分け合い、仲間とのコミュニケーションを常時とっている。

太陽とともに起き、太陽とともに寝て、日中は体を適度に動かす──。

そんなゴールデンウィークを、ぜひともお過ごしください。

みなさまのご意見も、ぜひお聞かせください。

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image by: Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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