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まるで日本の学徒出陣。プーチンが少年兵投入まで検討し始めたロシアの惨状

ウクライナ東部と南部の制圧に焦点を絞ったロシア軍でしたが、東部戦線では押し返され、防御体制へのシフトを余儀なくされているようです。同盟国にも派兵を拒否され兵力不足に陥っているロシア軍は、愛国少年集団「コナルミア」の少年たちを前線に投入する可能性すらあるのだとか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ロシアの苦戦の状況を詳しく伝え、年内早めの停戦と2回目の「ソ連崩壊」が起こると分析。さらに、アメリカが北欧2カ国のNATO加盟に反対するトルコの除名をNATOに提案する可能性を示唆しています。

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ウクライナ戦争の転換点

ウクライナ東部での戦争は、ウ軍が反転攻勢に出て、イジュームへの補給ラインの国境の街ボルチャンスクに向けて進軍している。ロシア軍は、撤退で橋を壊しドネツ川に防御線を引いたが、ウ軍はそのドネツ川のルビージュネで渡河に成功して橋頭を築いている。徐々にボルチャンスクに迫っている。

ハルキウから進軍するウ軍のもう1つの目標が、鉄道の要衝であるバラクイヤであり、次にクビャンスクであり、イジュームとボルチャンスクの中間の街である。ここにも確実に進軍している。ここを取るとイジュームへの補給路が完全に途絶えることになる。

この攻略にウ軍のM777榴弾砲とドローンの攻撃が効果を上げている。米国の供与したM777榴弾砲は90門で、そのうち79門が戦場に投入されたという。米国はレンドリース法で迅速にウクライナへ兵器の供与を行えることになり、EU諸国も無制限に軍装備の提供を行うとした。

M777榴弾砲に対して、ロシア軍もZALA特攻ドローンで攻撃しているが、大砲に損傷を与えるというより、砲兵を殺傷することが目的である。しかし、この攻撃は効果を上げているようだ。これしかM777榴弾砲への対抗処置がないようである。ロシアの榴弾砲の射程が短く、届かないからと、精密誘導ミサイルも欠乏して攻撃に使えないようである。

もう1つが、着地点観測のドローン対策として、次世代レーザー兵器を前線に投入して、ウ軍ドローンを迎撃するという。ロシア軍も対応策を模索している。

そして、イジュームに広く展開する21BTG(大隊戦術群)のロシア軍は、攻撃から防御に体制をシフトして、損害を小さくする方向になっている。しかし、イジュームの突出部の部隊は、回り込むウ軍に補給路が絶たれる心配があるが、それでも撤退しない。21BTGの内、今までに7BTGが戦闘能力を失ったようであり、今後も損害が増えることになる。

ウクライナ国内に投入されたのは105BTGであり、東部には60BTGで、その内21BIGがイジュームに投入された。全体の約5分の1、東部の3分の1の兵力であるが、ウ軍の攻撃で動きを止めた。他に東部では、ドネツ川渡河作戦失敗で5BTGが現に全滅している。

ロシア軍は、広域に展開したことで部隊間隔が広すぎて相互に協力ができないために、見捨てるしかない。ロシア軍の失敗は15万の少ない戦力を広範な地域に展開したことだ。手薄な所から徐々に崩されている。

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今は、ドネツ川東部のセベロドネツクやリマンなどで、ロシア軍は攻撃しているが、小規模で、目標も限定的となり、中隊規模の作戦にシフトしてきた。ドネツ川東岸をロシア軍は押さえたいようである。この攻撃のために、主力のウ軍をイジューム方面にとどめておく必要もある。イジュームのロシア軍は、ウ軍のマリウポリ守備隊と同じような役割なのであろう。

このように東部でもロシア軍は劣勢になり、徐々に攻撃範囲を狭めて、ルガンスク州のドネツ川東岸を取る方向に攻撃目標をシフトさせたようである。第2段階の目標は、ルガンスク州とトネツク州全体の支配と南部でしたが、今の時点では、トネツク州全体の支配を諦めたようである。

反対に、ウ軍が攻撃に転じて、ロシア軍を引き止める必要がなくなり、任務終了とマリウポリの製鉄所からアゾフ連隊を含めてウ軍兵士1908人が投降した。ロシアが完全に勝利し、ここにいたロシア軍を転戦させた。

もう1つ、東部でのロシア軍VKSの戦闘機の活動が鈍くなってきた。この原因の1つに、NATOのAWACS早期警戒機が戦闘機を伴って、ウクライナ上空での監視をして、東部のロシア軍の動き、特に航空機の動きをウ軍に情報提供して、防空活動をしているので、低空飛行でも確認され攻撃されているからのようである。もう1つが、エンジンの消耗で交換部品が欠乏してきたからのようだ。

ロシア軍東部部隊は航空支援をほとんど期待できない状態になってきた。逆にウ軍は8月にはF-16Vの訓練が終わり、実戦投入になるので、航空戦力でもウ軍の方が優位になる。

ハルキウの近郊では、高速105号線をロシア国境に向けて、ウ軍が前進して、ロシア領の東部補給基地であるベルゴルドへM777榴弾砲やP2000自走砲で攻撃できる距離までロシア軍を追い出した。

これに比べて、南部はロシア優位でロシア編入を進めている。この地域はクリミア半島の後背地で水などの供給などで、必要な地域であるからだ。ここでの戦いは、ウ軍は特殊部隊が中心で鉄道橋の破壊や武装列車などの爆破など、パルチザン活動である。

ウ軍主力は、今は東部地域であるが、ウ軍のレズニコフ国防相は、ヘルソンの奪還に向けた戦いを開始すると述べて、この方面でも攻撃を強化するようである。

そして、ロシア軍の損害は、当初戦力の30%を失ったという。戦死者が3万人に迫り、3倍の負傷者がいるとすると、既に12万人規模の戦闘不能者がいることになる。このため、兵員不足になり、志願兵の年齢制限40歳を撤廃して、兵員を募集し始めている。

その上、5月16日の集団安全保障条約機構(CSTO)会議でも、CSTO諸国(ベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン)のロシアへの協力を取り付けられなかった。どこもウクライナ派兵をしないとした。

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このため、愛国少年集団「コナルミア」の少年たちを前線に投入する可能性が出てきた。まるで日本の学徒出陣を見る思いである。ロシアも負け戦で、少年たちは勉強を放棄して戦地に行くことになる。

それと、NATOに加盟申請するフィンランドに対する発言も変わり、プーチンは「何も問題がない」とした。フィンランド国境に兵員を割けないからである。しかし、ショイグ国防相はフィンランドと国境を接する部隊を年末までに増強するとした。そのころにはウクライナ戦争も終わっているからでしょうかね。

また、精密誘導ミサイルはなくなり、弾薬も欠乏してきて、攻撃範囲を狭めて、使用量を抑えているようである。戦車も6000両を稼働させているが、ウラルブギンザウォードの戦車工場は部品不足と工作機械の不具合で操業を停止した。今までは、使われていない戦車から部品を取り、壊れた戦車に取り付けて戦車を稼働させたが、それもできなくなったようである。

戦車支援戦闘車BMPT「ターミネーター」をウクライナ東部に投入したが、戦車がなくなり草原では戦車より効果がないBMPTを投入するしかないようだ。

この状態で、中国空挺軍仕様のZ-20Kヘリをロシア軍がウクライナで使用し、とうとう、中国がロシアに武器を提供し始めたようだ。中国がロシア敗戦を避ける行動に出たようである。これは、欧米日の中国への制裁開始になる。

そして、ロシア軍の失敗から、プーチンは軍幹部への信頼感を失くし、自分が現場を指揮し始めたようである。リマンに展開する中隊に指令を出しているようである。中隊司令官(大佐以下)もびっくりであろう。

それと同時に複数のロシア軍上級司令官を更迭したようである。ハルキウの制圧失敗の責任でセルヒー・キセリ中将は解任され、巡洋艦「モスクワ」沈没の責任でイゴール・オスピポフ中将も解任されているが、ほかにも多数の将校が解任されているようである。

このようなロシア軍の状況から、ウ軍のレズニコフ国防相は、ロシア軍は守勢になり、ザポリージャ、ヘルソン両州で要塞構築に着手していると指摘。「ロシアは軍事作戦の長期化に備えている」とも語った。ロシアの目的は、軍事占領を維持するために要塞が必要なのであろう。

そして、ロシア国内でも山火事の消火ができずに、被害範囲が拡大しているとか、モスクワ郊外のTsAGI(中央航空流体力学研究所)などの軍施設やミサイル関連施設の火災が多発している。ウ軍特殊部隊がロシア国内でも活動している可能性がある。

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このようなことで、ロシア国内報道でも変化が出てきた。軍事アナリストのミハイル・キョーダリョノクが、国営テレビ「ロシア1」で「事実上、全世界が我々に反対している」と、ロシアが国際社会で孤立していると主張。さらに、ロシア軍は士気の高いウ軍を相手に、厳しい戦いに直面していると述べた。

国営テレビ局が、ロシア軍への批判を放送するのは、ロシア軍が勝っているわけではないという事実を報じ、国民の期待値を下げる必要があるからだという。敗戦の準備をし始めたとも見える。

しかし、2日後、キョーダリョノクは、米国製兵器がロシアが「最も優先している標的」だと述べ、「近い将来、これらのM777榴弾砲は残骸と化すと考えられる」と語り、榴弾砲への攻撃は「達成されるだろう」と予言した。どうも、上層部からやりすぎと怒られたようである。

そして、チェチェン共和国のカディロフ首長もロシア軍の侵攻作戦には問題があったと述べた。

そして、プーチンは病気が進行して、近々手術を受けることになっている。この治療期間、大統領権限をパトルシェフ安保会議議長に移譲する。しかし、対独戦勝記念日のパレードではドミトリー・コバリョフ氏を伴い歩いたことで、後継者ではないかと注目された。パトルシェフ氏はプーチン以上の強硬派であり、戦争を止めることができない。

プーチンの良きアドバイザーであるセーチン氏は、FSB第6局長であるが、6月12日ロシアの日に、コバリョフ氏を大統領代行にする方向で、プーチンに提案したようである。プーチンは、治療に専念し、院政を引くようである。そして、9月の大統領選挙には、コバリョフを立てるようだ。

どちらにしても、ロシアは7月までには継戦が不可能になり、ソ連崩壊の2回目を経験することになる。8月から年末には停戦するしかない。9月大統領選挙後かその前には停戦するしかないことになる。

一方、ゲラシモフ参謀総長は対独戦勝記念日のパレードに参加しなかったが、米ミリー統合参謀本部議長との電話会議に出てきたので、解任を免れたようである。軍トップの会談でお互いの譲れない条件を話したようである。

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ゼレンスキー大統領は当初「クリミアを奪還する」と発言していたが、ウ軍の人員と兵器も消耗が大きいので、最近は「2月24日の線まで速やかに奪還する」と発言を変えた。ウ軍では現在70万の兵士が戦っているが、ウ軍兵士の命を守るためにも、より強力な武器の提供を米国に要請している。

要請の内、M142高機動ロケット砲(HIMARS)とパトリオットミサイルは供与の方向であり、HIMARSは射程距離最大300キロ程度であり、M777榴弾砲より射程は長いが問題はないと見たし、パトリオットは防御用であり。問題がない。この結果は防空システム全体も欧米型に変更が必要になっているようだ

しかし、M270多連装ロケット(MLRS)はより長距離攻撃できるので、ウクライナのミコラーイフ近郊から、直接クリミア半島を攻撃できるし、ハリキウからだとロシア領内のクルスクまで攻撃できるので、このため米国も提供を躊躇っている。

ロシアはウ軍がロシアに侵略したら、戦術核兵器を使用する可能性があると表明している。このため、米国はロシアと直接会話して、提供をするかどうかを決めたいようだ。

また、ゼレンスキー大統領の発言変更も米国からの要請であろう。核戦争の危険を取り除く必要もあり、ロシアの負け過ぎも米国は心配する必要がある。そこが米国のジレンマでもある。

この代わりに、米国は首都キーウに大使館を移動させた。これは、裏で米ロの密約がある。米国は、ロシアがキーウをミサイル攻撃しないという確約を取り付けたとみる。

ということで、米国とウクライナの勝利は近いことになる。米国のヌーランド国務次官などの米国務省は、2009年に「NATO加盟」をウクライナ憲法の条項に入れ、2014年からは米退役軍人を入れて、ウ軍を現地部隊が自主的に判断する欧米型軍に教育し、携帯型武器を与えて、ロシア軍侵攻を待ち受け、2022年にロシアに対して、NATO軍は介入しないと声明して、プーチンに勝てると思わせた。

しかし、結果は、米国の長期計画でのウクライナ軍指導でロシア型上意下達型軍隊を見事に打ち破ったようである。

もう1つ、北欧フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請で、バイデン大統領は早期に加盟させるとしたが、トルコは反対である。

しかし、この機会でもあり、米国は反対するトルコのNATO除名を提案する可能性がある。NATO標準兵器を使わずに、ロシア製S400を購入して、NATO基準のレーダーに繋ごうとして、NATO規則に違反しているからである。さあ、どうなりますか?

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image by:Damian Lugowski/Shutterstock.com

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