モチベーションを上げるために重要な給与や待遇。もちろん働く側としては高いことにこしたことはありませんが、必ずしもすべてがそうだとは限りません。実は、それよりも簡単に部下や同僚のモチベーションを上げられる方法があるといいます。そこで今回は、『石川和男の『今日、会社がなくなっても食えるビジネスパーソンになるためのメルマガ』』の著者で「5つの仕事を掛け持ちする時間管理の専門家」の石川和男さんがその方法を紹介しています。
この記事の著者・石川和男さんのメルマガ
給与を上げずにモチベーションを上げる方法とは?
みなさん、日ごろから使う言葉を戦略的に意識していますか?仕事ができるビジネスパーソンに共通しているのは、言葉を上手に使うことです。綺麗な日本語を使うのはもちろんですが、さまざまなビジネスシーンで言葉の選び方に優れている人が多いのです。
言葉の選び方がいいと、自分と相手との距離を一気に縮めることもできます。また、言いにくいことも角を立てずに伝えることもできます。仕事もスムーズに動きます。
ビジネスパーソン、とくにリーダー課題は、「部下や後輩のモチベーションをいかにして上げるか」です。処遇、待遇を良くすることで、モチベーションを上げさせようと必死になっていませんか。実は人のやる気は「環境」では変わらないのです。
今回は周りが率先して動いてくれる言葉がけについてお話していきます。
人の作業効率は何で上がるのか
精神科医のメイヨーと心理学者のレスリスバーガーが、アメリカのシカゴにあるホーソン工場でとある実験を行いました。工場の名前をとって「ホーソン実験」と名付けられたこの実験は、「環境を変えることで、人の作業能率はどのように変わるのか?」を分析する目的で行われました。
大勢の従業員のなかから、この実験のために選ばれたのは6名の女性従業員です。まずは、暗かった作業場の照明を明るい照明に変えました。その結果、彼女たちの作業能率は上がりました。さらに「休憩を多くする」、「賃金を上げる」、「軽食の差し入れをする」、「部屋の温度適温にする」などの実験を続け、これらの環境改善は、どれも彼女たちの作業能率を上げていったのです。
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結果だけ見れば、「環境を改善することにより、人の作業能率は上がる」と結論づけたくなります。しかし、この実験には続きがあるのです。
環境の改善ではなかった!作業効率が上がった本当の理由!
今度は、逆に「照明を暗くする」、「休憩を少なくする」、「賃金を下げる」、「軽食の差し入れをなくす」、「部屋の温度を適温以上にあげたり下げたりする」といった作業環境を悪くする変更を加えたのです。当然作業能率は低くなる!!と思う人が多いのではないでしょうか。しかし、なんとこの変化によって、彼女たちの作業能率は上がったのです。
一体なぜ、作業能率は向上したのでしょうか?
その答えは、彼女たちが実験に入る前にかけられた言葉に秘密がありました。彼女たちはこんな言葉を送られていたのです。「あなたたちは大勢の従業員から選ばれた方々です」、「この優秀な6名には期待しています」と。
彼女たちは作業環境が変わったから作業能率が上がったのではなく、「期待されている」、「見られている」という思いを抱きながら働いた結果、作業能率が上がったのです。つまり、「環境の変化」ではなく「内なる感情の変化」によって作業能率が上がったのでした。
言葉によって仕事の生産性は上がる
人間は承認欲求を満たされたいと思っています。期待しているという声掛け、いつもがんばっているねという労いの言葉、困っていることはないかという相手を思いやる言葉。
その言葉を受けた人は、「自分が認められた」、「自分は必要とされている」という承認欲求が満たされ、士気が上がります。さらに、誰かの役に立てたという高揚感もあふれます。
他人から好意的な振る舞いや行動をしてもらうとお返ししたくなる心理行動があります。これを心理学用語で「返報性の原理」と呼びます。
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部下やメンバーの仕事の効率を上げたいと思っている方は、彼らに対して「私はあなたに期待している」と言うサインを送るようにしてみてください。それだけでも彼らの意識は変わり、仕事の生産性が劇的に変わるはずです。
人はあなたの言葉で変わる
わたしは、たくさんの人と関わり、それぞれのプロジェクトを進めるにあたり、部下やチームメンバーに対しての声掛けにはとても意識をしています。そのなかで、ひとつ意識的に使っている言葉を紹介します。(※わたしがこのフレーズを言っていたら、このことは秘密でお願いします)
その言葉は、「頼りになる」、「頼りにしている」です。さまざまな企業がアンケートを行っている「仕事で言われたい言葉ランキング」のなかでも「頼りになる」という言葉は、常に上位にきます。
裏を返せば頼りになるという言葉を滅多にかけてもらえていないということです。自分ががんばっている過程、その先の結果。どの過程でも、頼りにしているという言葉をもらえたら嬉しいですよね。そして、その期待に応えるよう役に立とうとさらにがんばります。期待をかけられた人は、その通りの結果を出すことが多いです。
「頼りになる」、「頼りにしている」という言葉は、相手を成長させるための魔法のフレーズともいえるのです。
戦略的な言葉でさらに上のチーム作りを
給料を上げれば一時的には満足しても、すぐに満足できなくなります。
このように「作業能率を上げるためだけの作業環境の改善」は、一時的には士気が上がっても、その環境に慣れると元に戻ってしまいます。
もちろん、劣悪な環境でも良い声掛けだけして、やる気を持ってもらおうなんて、暴論を言いたいわけではありません。通常よいとされる条件はクリアしていることが前提です。
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そのうえで、「わたしはあなたを気にかけています」という行動をすれば、お金をかけなくても生産性は上がります。ぜひ、あなたも、これから発する言葉を意識的に変えてみてください。
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