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地方に行くほど高い壁。誰もが心地よい社会にする「LGBT就労支援」の意義

LGBTQなど性的少数者の方の中には、周囲の無理解や偏見により、苦しみや生きづらさを抱えさせられてしまう個人も少なくありません。そんな方々への就労支援の輪を全国に広げる試みに乗り出したのが、認定NPO法人「ReBit」。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、著者で要支援者への学びの場を提供する「みんなの大学校」の運営にあたる引地達也さんは、同団体の新たな取組を高く評価するとともに、地方からも新しい声が上がることへの期待を記しています。

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NPO法人が乗り出すLGBTへの就労支援に向かう中で

認定NPO法人「ReBit」(リビット、東京)がLGBTQなど性的少数者の就労サポートを全国に広げる活動に乗り出した、と先日一斉に報じられた。

全国の自治体への啓もうや福祉サービス事業を使っての支援活動を行う予定という。

障がい者への支援の枠組みにある就労系のサービスの中で、一般就労に向けた最前線である就労移行支援は企業とのコミュニケーションを密にしながら、就労させた上で定着に向けた活動も行われているが、障害特性を理解してもらう取組みの中で、性的少数者に関する支援は難しい。

私自身も、「多様性を認める社会」とは各地で連呼される中で、仕事の現場やそれぞれの感性はまだ保守的なのが現実で、そのギャップに当事者はうつ病等の「二次障害」に陥る事実も目の当たりにしてきた。

今回の取組が起爆剤となって、当事者の現実に接した社会に「ケア」の感覚広がっていき、やがてそれが「普通」になることを期待したい。

LGBTQの問題は個々人で事情が異なるので、「理解」は一様ではない。

だから、私も「分かった気」にならないように注意しているが、第三者から相談を受けると、どうしても一般化されたイメージを伝えてしまうから、いけないと思っている。

さらに「ゲイの友達がいるからよくわかる」等の知っていることを自認する人の言動にも社会は振り回されてしまう。

ここで問題になっているのは、声にならない声であり、その声をどう拾っていくかも大きな課題である。

ReBitの取組は、就労支援のサービスを使って公的なサービスに位置づけ、世の中にこのカテゴリーを顕在化させ、その声が世の中に出ていくこと、出していくことも期待される。

福祉サービスは障がい者支援として位置づけられているが、発達障がいや引きこもりなどこれまでの「障がい者」とは違う方々への支援が広がる中で、その領域に性的少数者への対応も促すことにつながるだろう。

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しかしながら日本社会の偏見は根強い。LGBTQが精神疾患と結び付けられてきたこと、今もその考え方が岩盤のように存在していることを考えると、まだまだハードな取組かもしれない。

これは近代国家になった日本が長く精神疾患者を「座敷牢」で家庭が「保護」という名で管理し外に出さない政策を是としてきた文化の延長線上にあると思う。

理解できないものを議論によって解決するのではなく、管理によって社会の表面から「見えなくする」ことで、社会の平安を取り繕う手法である。

今でもこの思想性は社会に根付いているから、まだまだ議論が必要だ。この中にあって、ReBitによる人材育成は必須である。

周囲の無理解から二次障害になるケースをいかに防げるのか、という点も重要ではあるが、そもそも「無理解」がなくなれば、何ら問題が生じず、むしろ多様な考え方や視点が自然に身に付いている社会はきっと誰もが居心地がよいはずなのである。

2014年の障害者権利条約の批准から考えても、差別解消法の制定や障害者雇用率の引き上げや合理的配慮に対する企業の取組の加速化は確実に支援が必要な人がこの社会に存在し、それらの当事者と共存していくマインドは形成されてきた。

このマインドの醸成に向けての相談も増えてきた。これまでは「うちにはLGBTがいないから大丈夫」という意見が出ていたが、「いないのではなく、声が上げられないだけ」であること、それは社内だけではなく社会全体の取組であることを認識しなければならない。

さらに、オンラインでどこでもつながれる環境が整いながらも、これら性的少数者等の新しい枠組みに関する対応は都市と地方との間での情報格差も存在する。

それは「直接に対面していない」のが大きい。地方の支援態勢も手薄と言われる中で、今回の取組に呼応する地方でまた新しい声が上がってくることを期待したいとも思う。

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image by: 認定NPO法人 ReBit

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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【著者】 引地達也 【月額】 ¥110/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

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