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元国税調査官が暴く、宗教団体「税制優遇」の実態と“政治の結びつき”

安倍晋三元首相が命を落としたことにより、にわかに注目される政治と宗教の結びつきの問題。宗教団体が政治に大きく関与できるのは、強固な組織力ゆえですが、組織を成立させるための資金を簡単に生み出せるのはなぜなのでしょうか。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では、元国税調査官の大村さんが、高額なツボの売上も墓の土地代も巨大施設などの固定資産も非課税という一般企業ではあり得ないような税制優遇の実態を紹介。オウム事件後に問題視されたもののほとんど手がつけられていないのも政治との結びつきゆえと伝えています。

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宗教と政治の問題

筆者は、安倍元首相の死去については非常に心を痛めています。このメルマガにも書いたことがあるかと思いますが、筆者はアベノミクスついては評価できる部分もある思っています。

安倍元首相は、旧民主党が決めた消費税の増税を2回も引き延ばすなど、決して財務省の言いなりにはなりませんでした。財界に賃金アップを働きかけるなどもしており、これまでの政権とは明らかに違い、国民生活を本当に向上させようとした姿勢もありました。またアメリカ、中国、ロシアといずれも良好な関係を築くなどの外交手腕も評価されるべきだと思います。安倍元首相の国葬が行われることには、筆者はまったく批判はありません。

が、その一方で今回の安倍元首相銃撃事件において投げかけられた「宗教と政治の問題」「宗教と金の問題」についても、我々は直視しなくてはならないはずです。

「安倍元首相は旧統一教会とは無関係なのに逆恨みされた」という論調のメディアもありますが、これは正しくないと言えます。安倍元首相は、旧統一教会の総会にビデオメッセージを送っています。これは教団にとって何よりの宣伝材料となったはずです。「あの安倍元首相もメッセージを送ってくれるのだよ、この教団は素晴らしいんだよ」ということが言えますから。

また今回の参議院選挙でも旧統一教会に支持された安倍派の議員が当選しており「安倍元首相が旧統一教会とまったく無関係だった」とは絶対に言えないのです。もちろん、だから銃撃されていいというわけでは決してありません。しかし罪は罪として償ってもらうけれど、我々は犯人の言い分にも耳を傾ける必要があると思われるのです。

筆者は旧統一教会のことは詳しくは知りませんが、宗教団体というものが、政治的に非常に優遇されてきていることは嫌というほど知っています。今回はそのことをお話したいと思います。

宗教団体の巨額な資産

宗教法人というのは、驚くほど金を持っています。あまり名前の知られていない宗教法人が、巨大な施設を建てているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか?またオウム真理教が事件を起こした時、その莫大な資金力に驚いた人も多いはずです。

日本全体の宗教法人の総収入は2兆円を超えるとされており、金融資産は20兆円~30兆円と推定されています。これは不動産を含めない額であり、不動産を含めると、その資産力は計り知れないといえます。

なぜ宗教法人はこれほどお金を持っているのでしょうか?まず宗教団体というのは、非常に税金で優遇されています。宗教法人が「宗教活動」で得たお金というのは、原則として税金はかかりません。お布施や寄付には一切、税金がかからないのです。そのため、宗教法人は、ちょっと信者を集めるだけで、莫大な資金を持つことができます。

信者一人一人の寄付は少なくても、多大な金額になります。たとえば、1万人の信者が年間1万円ずつ寄付をしたとしても、それだけで1億円になるのです。しかもその1億円には、一般の企業のように「仕入れ経費」などはないので1億円が丸々、収益になるのです。

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高額ツボの販売も非課税

そして税制上の優遇が受けられる「宗教活動」の範囲が非常に広いのです。お布施や寄付ばかりではなく、神社などで売られているお守りやおみくじの販売も、宗教活動として非課税となっています。国税庁のホームページでは、税務上の宗教活動について次のように解説されています。

「お守り、お札、おみくじ等の販売のように、その売価と仕入原価との関係からみてその差額が通常の物品販売業における売買利潤ではなく、実質的な喜捨金と認められるような場合のその物品の頒布は、収益事業には該当しません」

つまりは、おみくじやお守りなどは、本来の原価は大したものではなく、神仏の「御利益」を売りにしている商品については、宗教活動と認めます、ということなのです。また墓地の販売も、非課税となっています。

国税庁のホームページでは、宗教団体の墓地事業について、次のように説明しています。

「宗教法人が行う墳墓地の貸付けは収益事業に該当しないこととされており、この墳墓地の貸付けには、その使用期間に応じて継続的に地代を徴収するもののほか、その貸付け当初に「永代使用料」として一定の金額を一括徴収するものも含まれます」

墓地の場合、「販売」とされていても、実は「永代の貸付」とされている場合が多いがそれも含めて非課税ということです。つまり、宗教法人が営む墓地販売業は、非課税ということです。

ところで旧統一教会は、信者に高額なツボなどを販売する、いわゆる「霊感商法」などで社会問題になったことがあります。この霊感商法には、実は税金がかからないのです。一般の商取引ではあり得ないような高額なツボなどは、通常の商取引ではなく「宗教的な寄付行為」とみなされるのです。つまり、高額過ぎるツボは、高額過ぎるがゆえに税金を免除されるというわけです。

なぜ宗教法人は巨大宗教施設を建てられるのか?

また宗教法人というと、巨大宗教施設がつきものであり、いろんな宗教法人が日本各地に宗教施設を持っています。全然名前の知れていない宗教が、人目を引くような建造物をつくっているというようなことも多々あります。

これも、実は税金が関係しているのです。宗教法人は、お布施や寄付などに税金がかからないので、それをそのまま建設費に充てることができます。しかも「宗教施設」には固定資産税がかからないのです。単なる信者の集会場であったり、オフィス的な機能を持った普通のビルであっても、宗教的な催しをする場所であれば、固定資産税はかかりません。そのため、少しお金が貯まった宗教法人は、たちまち巨大な宗教施設を建設することができるのです。

そしてそんな巨大な施設は、その宗教法人の宣伝材料にもなるのです。「こんな大きな建物をつくっているんだから立派な宗教に違いない」と信者たちに思わせるのです。

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一般の企業であれば、こういうことはなかなかできません。一般の企業は、利益を得ればそれに税金が課せられるので、利益をそのまま自社ビルの建設に充てることなどはできないのです。また不動産を購入しても、土地の購入費はまったく経費にはできません。建物も一括経費にはできず、耐用年数に按分して、経費化していかなければなりません。だから、一般の企業が、自社ビルを建てるには、相当に利益を蓄積してからじゃないと無理です。

しかし、宗教法人は、宗教活動から得たお金には税金がかからないので、経費や固定資産の心配などせず、お金が貯まれば貯まるだけ、不動産に投資できるのです。しかも購入した不動産には、固定資産税がかからないのです。そのため、ちょっと信者がいて、ちょっとした寄付があれば、たちまち大きな建築物が建てられるのです。

不透明な宗教法人の会計

社会からこれだけの巨額のお金を集め、税制でもこれだけ優遇されているのだから、宗教法人の会計などには、当然、「透明性」が求められます。それが社会的義務でもあるはずです。が、今の宗教法人は、会計などに「透明性」があるとは決して言えないのです。

宗教法人というのは、外部からはその収益状況が非常に把握しにくいのです。宗教法人の「収入の柱」であるお布施や寄付金というのは、普通、領収書のやり取りがありません。宗教施設にお布施や寄付をして、領収書をもらうというような経験をした人は、ほとんどいないはずです。

また、お布施や寄付というのは、宗教内部で信徒たちによって行われるものであり、商店での売買のようなオープンなものではありません。いわば、「密室の取引」です。領収書のやり取りもなく、密室で取引されている金品となると、税務当局にとってはもっとも把握しがたいのです。

普通の飲食店などならば、税務署員が客を装って店内を視察し、売り上げ状況を把握するというようなこともできます。が、宗教法人となると、なかなかそうもいかないのです。宗教法人の内部に入りこむには、税務署員にとってもかなり危険なことだからです。もし、税務調査のために、宗教内に入ったということがわかれば、「宗教弾圧」などということで、大々的に批判されたり、下手をすれば命に関わるようなことになりかねないのです。

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また宗教法人というのは、政治家とつながりを持っている場合も多いのです。小さな寺社でも地域の名士的な存在であったりするし、大きな宗教法人となると国政に影響を与えるほどの権力を持っています。その政治力を駆使することで、税務当局の監視を逃れるということもままあるのです。

だから、その宗教法人には一体どのくらいの資産があるのか、指導者や幹部たちが実質的にどの程度の収入、財産があるのか、ということは、税務当局にもなかなか把握できなくなっているのです。

そのため宗教法人というのは、小さな寺から大宗教団体に至るまで、脱税の温床と見られているのです。実際に、宗教法人は課税漏れ発覚率が非常に高い業種なのです。宗教法人は税務調査をすれば、だいたい課税漏れが発覚するというほどです。しかし大きな宗教法人は国税に圧力をかけてくるので、税務調査自体ができないことも多いのです。

なぜ宗教法人は優遇されるのか?

「宗教と政治の問題」「宗教と金の問題」は、これまでもたびたび社会問題となり、議論されてきたテーマです。特にオウム真理教の問題が起きたときには、宗教法人に対する優遇措置を改めるべきではないか、という議論が巻き起こりました。が、多少の修正はあったものの根本的な改善には至らずに現在まで来ています。

なぜ宗教団体は、これほど政治的に優遇されているのでしょうか?ざっくり言えば、政治家にとって票に結びつきやすいからです。宗教法人の場合、指導者が「●●党に投票しなさい」と信者に指示をすれば、信者たちのほとんどはその通りに投票します。

業界団体などでも、組織的な投票活動をしていますが、構成員はそこまで忠実に投票をしてくれるものではありません。構成員たちの中には、団体の意見に賛同しない人もいるし投票に行かない人もいます。

しかし宗教団体の場合、信者は必ず投票に行くだけではなく、自分の知り合いに電話をかけまくって支持を呼び掛けたりまでしてくれることもあります。なので、政治家にとって宗教票は「純度100%の組織票」なのです。宗教団体は「最強の組織票」といえるでしょう。宗教票を得るのと得ないのとでは大きな違いがあるのです。そのため「宗教団体の優遇制度」はなかなか是正されないのです。

ところで「宗教と政治の問題」「宗教と金の問題」というのは実は今に始まったものではありません。文明が始まって以来、ずっと人類はこの問題に悩まされてきたといってもいいのです。ヨーロッパでも日本でも、宗教は歴史的に様々な政治経済問題を引き起こしてきたのです。政治経済の歴史は宗教との戦いの歴史でもあるのです。次回は、そのことについてお話したいと思います。

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image by:Khhy, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

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