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Beijing China-January 21, 2013: China's National People's Congress and CPPCC "two sessions" in the Chinese Political Consultative Conference symbol.

中国最大の宗教は「中国共産党」だ。幼少期から刷り込まれる“思想”

日本では、安倍元首相の銃殺事件以来、カルト宗教に関するニュースが続いていますが、お隣の中国ではどうなのでしょうか。今回の無料メルマガ『出たっきり邦人【アジア編】』では、中国・深セン在住のMochiさんが中国の宗教と「共産主義」について紹介しています。

『華南の風』中国・深セン【18】中国と宗教

皆さんこんにちは!とうとう本格的な夏到来で気温は36~37℃、高い湿度の関係で体感温度は45℃という日々が続いている深センです。コロナのせいで顧客訪問の頻度が激減している関係で、ほぼ一日中オフィスにいるところが救いです。

まずは安倍元総理のご冥福をお祈り致します。一般的には治安が良い日本でゆでガエルとなっているSPと警察には再発防止に取り組んで欲しいです。当初は時折発生する「自殺する勇気が無いから死刑になって国に殺してもらう」系の殺人犯かと思いましたが、カルト宗教に人生を狂わされた犯人が(その宗教を支援していたと思われる)安倍元総理への復讐という思わぬ方向へ進み、カルト宗教と自民党との癒着ぶりが連日のニュースになっています。ひどい話です…。新渡戸稲造の『武士道』には、宗教が社会システムや生活の中心となっていない(ように見える)日本は、宗教無しでどのように道徳教育を行っているのかと当時の外国人に不思議がられた話があります。お盆には墓参り、クリスマスを祝い、元旦に神社へ初詣する日本人は確かに宗教に執着していないように見えます。それだけに宗教が政治家とコネを持ち、国政に入り込んでいるという異常事態に鈍感になっているのかもしれません。それかK明党で慣れっこになっているのか。

中国にも仏教のお寺はありますが、存在感が希薄です。文化大革命で徹底的に破壊されてしまいました。ちょっと前は法輪功というスピリチュアル団体が弾圧されました。悪の宗教という政府の報道と、法輪功信者が受けた酷い弾圧の告発が大きく食い違い、真相はわかりません。

では中国で最大の宗教は何か?

ユヴァル・ノア・ハラリは『サピエンス』の中でいわゆるイデオロギーも宗教とみなしています。資本主義、共産主義、自由主義、ファシズム等々は「実体のないもの、概念、思想を多くの人が信じ、共有する」という点で宗教なのだと。つまり中国の最大の宗教は中国共産党が考える共産主義と言えます。15億人が幼少から教育され、無条件にそれを信じるようになってしまう。まさに信者です。信者は宗教的指導者(中国共産党)の言うことを疑わないので指導者はどんどんマインドコントロールをやり易くなります。欧米、日本などの民主・自由・個人主義は「サタン」であり、地獄に落ちるべき存在で、中国共産党だけが正しいのです。そんな中国人に我々の正論を言っても頭の中に入って行かない点はカルト宗教の信者が脱退というマインドセットになりにくいのと同じです。そして同様に私自身も逆の体制に入信しているので、共産主義がサタンに見えてくるのでしょう。

先日のペロシ氏訪台は一大事件です。中国共産党教の土地だと信じているところにサタンの使者が舞い降りたわけですから。中国政府の反応は想像以上に過激で、案の定ミサイルも打ちました。私が初めての海外旅行で台湾に行った1996年は、国民投票によって総統を選ぶ初めての選挙が控えており、この時もミサイルを打ってきました。今回はミサイルの数が多いだけでなく公海とは言え台湾を囲む形で軍事演習を行うという露骨な威嚇行為だけでなく、台湾から中国への輸出品にはMade in Taiwan等の記載が入っているものは認めず、Taiwan, CHINAや「中国台湾省」の英語表記などにしないと中国の税関で受け入れを拒否するとの通達を出しました。食品から工業製品まであらゆる商品が対象となっています。中国が大口の貿易相手国であることを逆手にとった嫌がらせです。台湾政府はもちろんそんな記載をしている貨物の輸出通関を受け付けませんから、事実上中国との貿易は途絶え、多くの企業が困ることになります。

どこのメディアで見たのか忘れましたが、共産党は国民の不満が政府に向かわないように(ハッタリであっても)強硬な姿勢を見せないわけにはいかないのだという記事がありました。この視点にはとても納得できます。20代の若者を中心とする熱狂的な愛国者達は「小粉紅」と呼ばれます。粉紅はピンクの意味です。中国国旗の紅に準ずる集団を暗示した愛称で、年齢が年齢だけにSNSでの発言が多く、ネチズンとして一大勢力になっています。既述の安倍氏の事件直後にあふれた「祝辞」の多いこと多いこと。この辺も20年近く国を挙げて反日キャンペーンをやって出来上がった「筋金入りの信者」だからでしょうか。人の死をあそこまで喜べる神経って何だろうと悲しくなりました。教祖としての共産党指導部はそんな狂信的な信者の怒りが政府に向かうことだけは避けなければならない。かつて同じように大衆を味方につけることで国民党を台湾へ追い出し、革命を成功させた共産党は大衆の怖さをよく知っています。ほとぼりが冷めたころに徐々に元に戻していくだろうと期待していますが、プーチンのウクライナ侵攻というありがたくない既成事実がありますから軍事衝突が無いとは言い切れません。早くこの緊張が緩和されることを願って止みません。

(『出たっきり邦人【アジア編】』8月6日号)

著者/Mochi(「『華南の風』中国・深セン」連載)

image by: humphery / Shutterstock.com

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【著者】 アジア6カ国の在留邦人メンバー 【発行周期】 週刊

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