国会議員や各界著名人に届き始めた安倍元首相国葬の案内状。しかしその実施を巡っては多くの国民から反対の声が上がっており、各地で反対デモも行われています。そもそも安倍氏は国葬で送るにふさわしい人物なのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、安倍元首相に相応しいのはせいぜい内閣葬か自民党葬であるとして、そう判断せざるを得ない理由を解説。さらに五輪汚職や統一教会問題を取り上げるとともに、岸田首相にはそれらの解決に必要なリーダーシップが感じられないとの率直な意見を記しています。
この記事の著者・内田誠さんのメルマガ
国を分断して勢力を伸ばした安倍晋三氏を「国葬」するマズさ:「デモくらジオ」(9月9日)から
冒頭でお話申し上げたいと思うのは、明日の新聞とか…新聞に必ず定番コラムがあるじゃないですか。朝日でいうと天声人語、読売でいうと編集手帳みたいなね。ベテランの論説委員レベルの記者さんが書いていたりするわけですが、おそらく、国葬についてのテーマが4紙5紙あるなかで、2紙3紙くらいあるのではないですかね。森喜朗さんがオリンピックの問題で追及されそうになって、今日はたまたまどこかの地方議会の視察かなにかで傍聴されていたようですが、記者の質問に一切答えずに行ってしまったということをテーマにする人もいるかもしれませんが、どちらかというと国葬…でしょうね。
各紙にはおそらくエリザベス女王について取材歴がある記者もいるでしょうし、そういう意味では96歳、本当の大往生ですけど、70年間女王の座にあった人ということで、なんというのでしょうね、ずっとにこやかに、基本的にはにこやかにイギリスを代表し続けたという。
政治家がやるような努力のようなことをしたわけではないですから、「君臨すれども統治せず」の国ですし、そういう意味で、例えばタフな交渉をした人というわけでもないのですが、生身の人間が数千万人の国民、イギリスの場合は英連邦という存在もありますから、ものすごい数の人を代表する立場で存在し続けるというのは、一言で言えば、滅茶苦茶疲れるのではないかと思うのですが、そのようなところで正気を保ちながら生き続けた、存在し続けた希有な人物であったことは間違いないと思います。
それと、どうしても国葬ということになると…エリザベス女王の国葬は19日だそうですけれど、今月の27日には安倍元総理の日本での国葬が行われるんでしょう。どうしてもその2つを比較するような話が出てくるだろうと思います。
これは致し方ないですね。8日の閉会中審査での岸田さんの説明は最低で、その問題も当然ありますが、エリザベス2世と比較する意味はあまりないのですが、少なくとも、演説しながら「こんな人たちに負けるわけにはいかない」などということを口にした元総理大臣、国会で100回以上も事実に反することを発言した人、ということからいうと、国葬?という感じがしてきますね。とくに最初に言った方でいうと、分断をした人なわけですよ。分断をあえて行って、国内に敵を作ることによって勢力を伸ばした人ですよね。その人を、国葬にしちゃうのはまずいだろうと私などは思います。
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まあ、嘘っぽいという理解もあるでしょうが、アメリカの大統領が就任するとだいたい、「私はアメリカ国民の大統領になる」と、バイデンさんもそのように言いましたよね。民主党を支持し、自分を支持してくれた人の大統領ではなくて、支持しなかった人を含めたアメリカ国民の大統領になるのだと、いう言い方をする。
あるいはオバマさんの演説の時には、あれは大変巧みなレトリックで。オバマさんて、演説の中身は美しい。実際にやったことは別だと思うのですが、演説は素晴らしくて、色んな人が、あ、自分のことをオバマさんは今言ってくれているのだと思えるような論理的な仕掛けというか…。つまりアメリカに苦難して渡ってきてそこで生活をして自分たちの文化を創り上げた、みたいなことですよね。ですから、ピルグリム・ファーザースの話から始まって、あるいは奴隷として連れてこられた黒人の人たちにも響く、あるいはその後、アジアから移ってきた人たち。移民の国アメリカと言われる、その移民の精神性というか、そういう理解の仕方。色々な人がいるのだけれど、白人も黒人もアジア系も、もちろん先住民も。色んな人がいるけれども、皆等しくアメリカ人なんだぞという、ユナイト、統合の契機を絶対に外さないのですよ。
それをガンガン外した人ですからね、安倍さんという人は。だから彼に相応しいのは、せいぜい内閣および自民党葬。そんなことをどうしても考えざるを得ない本日でございますね。
それから、G7の中で安倍さんの国葬に参列すると言っているのはカナダのトルドー首相だけなんですよね。今のところ。まあ、トルドーさん、秋の京都でも見物して帰るのだと思っていました。当然19日にウェストミンスター寺院で行われるエリザベス女王の葬儀には、行くわけですよ。英連邦ですからね。そうでなくたって行くわけですが。その日程との関係でどうなのかということですが、間に9日もあるので、いったんカナダに帰っても良いのかなという気がしますが、そのあたり、何か他に調整する人が出てくるのか出てこないのか、ということがちょっと話題になるのではないかと思います。
日本国内のことだけで言うと、安倍さんの国葬、それはやるのでしょう。もう準備が始まっていますし、16億6,000万円…。掛かるねえ。誰だ、2億5,000万と言ったのは。もちろんね、外国要人の接遇と警備費を計上していなかったので、それを入れて16億6,000万円ということなのですが、もっと多くなるのではないかと思いますね。官房長官も正直な人で、「(費用については)分からないので終わってから言う」ってそういう話でしょ。困ったものだね。予備費と言っても国の予算ですからね。そんなことに予備費を使ってしまって良いのかという反論だってあり得るわけで。勘弁してほしいなと思いますけど。強行した後に何が起こるのかということについては、今のところまだ分かりませんね。どうなるんでしょうか。
それから、さっき、森さんのことを言いましたが、オリンピックを巡る汚い金の動き。私は「オリンピック」に言及するときには必ず「汚い」という言葉を合わせて語るようにしているのですが、五輪を巡る汚い金の動きについて、例の高橋さんという元理事、電通の専務だった人という方が重要かなと思うような人ですけど。その方にリベートというか、その方の収賄容疑。贈賄側はアオキさんというね、紳士服の量販店。量販店と言っていいのかね。家電の量販店のイメージが強いけれど。青木の名前が出て、KADOKAWAの名前が出て。で、広告会社「大広」の名が出て。次にどこの名前が出てくるのだろうかというところを是非楽しみにしたいなと思っています。
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だって、あれはオリンピックスポンサーのピラミッド構造の一番下の部分。オフィシャルサポーターでしたっけ。5億円でなれる奴。そのカネもよく分からないのだけれど、そこの話じゃないですか。しかも、高橋さんという方が理事であったにせよ、そのスポンサーの決定に際してどのような力をもっていたのか、よく分かっていないんですよ。
で、だから森さんの聴取があったんですね。当時、五輪組織委の会長さん。会長はその決定に際してどう絡んだの?という話なわけで。いやあ、「高橋君に任せたよ」という話なのかもしれませんが、全然違うかもしれない。場合によったら参考人で済まなくなる可能性があるわけですよね。そこのところ、どういうものが出てくるのか。これはデカイですよね。どういう方向まで行くのか分かりませんけど。
この二つの事件、国葬の問題、まあ、国葬と言うよりも、自民党と統一教会の問題と言い直しても良いのですが、一応違う問題だけれども、きっかけは明らかにあの銃撃事件から起こったので、自民党の議員が379人。いるねえ。その中で179人が関与していた。うち121人でしたかね、名前を公表したということですが、分かりやすく言えば、この人たち、危ないことを平気でやった人たちなので、次は議員をやめでもらいましょうということじゃないですかね。危ない人ですよ。
あの、自民党の政権を比較的擁護するようなジャーナリストや評論家が、「大勢来るから分からないのですよ」なんて言っている。つまり統一教会とその関連団体から来ている人だということは「分からないんですよ」なんて言いますよね。あれ嘘ですよ。嘘だと思う。そんな訳はないよ。国会議員に近づいてくる人がどういう人なのか、議員本人は調べきれないかもしれない、それこそたくさんいるから。でも、そのために秘書がいるんじゃないですか。しかも、何人も。公設だけではなくて私設の秘書も人によってはいるわけでしょ。それこそ大事な仕事ですよ。
実際、ジャーナリストとして行く場合だって、どういう記事を書き、どんな発言をしている人かというのは当然調べますよ。取材を受ける前に。だって、そうしなかったら危なくって仕方がないじゃないですか。議員からすれば。あの、統一教会系の「世界日報」の記者ですと言えば、それは統一教会から取材を受けるということが分かるので。そんなの時間掛かりませんよ。調べるのに。だとすると、自民党のこの問題についての汚染度は極めて高いということになりませんかね。
121人も名前を出さざるを得ない人がいたわけですよ。中でも萩生田公一さん。すごいよね。各部門に名前が出てくるんだよ。萩生田さん。祝辞とか講演とか挨拶とか。選挙の応援。もう満貫ですよ。週刊誌やワイドショーの取材ベースで出てきている話の中には、信者ではないのかと。周囲には少なくともそのように見ていた人たちが出てきているので、だとすると、ご本人にももう一回しゃべってもらいたいところですよね。まあ、そこはうまく政調会長に逃がしちゃったから。内閣ではないのでね。という感じですけど。
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この統一教会の問題と国葬の問題と五輪の問題と。ゾロゾロとあまりきれいでないものが出てきてしまったなあという感じ。となると、何が起こるのか。これで岸田さんにもしも総理大臣としてのリーダーシップをとる意欲があり、その力がある人だったら、自民党にとって上手い解決方法が見つかるのかなとも思うのですが、国会の答弁を聞いているとさ、この人何がしたい人なのかと思いましたね。それと、決して単なる善悪の問題ではないのですが、大物の政治家というのは、メディアを通して自分の話しぶりを伝えるだけで人々を喜ばしてしまう、籠絡してしまう、俗に言う「人たらし」?そのような力を持っている人が多いですよ。良くも悪くも。だけど岸田さんにはそれを感じない。彼に目の前で何かを説明されて感服するようなことがあるかなと考えたら、それはないですね。ですから、スッカラカンの総理大臣という感じがするんですよ。空っぽ。空洞みたいな。だから自民党は全体が宙に浮くね。どこに中心を求めたら良いのか。安倍さんは死んじゃいました。安倍さんは当時、ある意味で最高権力者だった人でしょ。岸田さんさえコントロールする力をある部分では持っていたのではないかと。統一教会の数万票を持っているし、何よりも自民党内最大派閥の長だった。これは岸田さんをも実際に凌ぐような最高権力者的な位置取りだった。その人を、警察庁長官は守れなかった。自分は安倍さんに近いTBSの元記者を守ったわけですが。安倍さん自身は守れなかったという。
岸田さんがこの状態じゃないですか。どこに中心を持っていたら良いのか。ざっと400人の議員が烏合の衆になってしまう。それはそれで恐ろしいことなので、ハッキリ姿を現してほしい。その方が自民党のためになるのかもしれませんよ。
(『uttiiジャーナル』2022年9月11日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)
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