プーチン発言でメディアも気づいた。習近平は武力行使に「ノー」という事実

 

だが、中国をきちんとウォッチしていれば明らかなように、ロシアとの友好関係は重視しつつも、ウクライナ侵攻に中国が最初から「ノー」であったことは明々白々である。

そもそもウクライナ危機が勃発した直後の2月25日、習近平はプーチンと電話会談を行っている。そのなかで習近平は「中国はロシアが話し合いによって問題を解決することを支持する」と武力行使に対するネガティブな態度を示しているからだ。

厳しい言葉ではないが、明らかに軍事力の行使を歓迎してはいない。また「冷戦の考え方を捨てて、各国の合理的な安全保障上の懸念を尊重し、協議を通じてバランスのとれた効果的で持続可能な欧州の安全保障メカニズムを形成する必要がある」との提言も行っている。一方的にロシアの行為を否定する西側スタイルとは異なるので分かりにくいが、武力による解決には常に否定的だ。

中国外交部報道官もこれまで「侵攻が起きて以降最初に会談し平和解決を呼びかけたのが習近平だ」と繰り返し主張してきた。いずれにせよ会談に重要な意義があることに変わりない。では、何に注目し、どう評価すべきなのだろうか。日本経済新聞は、「中国・ロシア共同声明出さず 首脳会談、かりそめの結束」というタイトルで、中ロ間の実は冷めた関係に注目した。

記事を引用すれば、

中国共産党機関紙、人民日報の16日付の1面トップ記事は中国・ウズベキスタン首脳会談で、中ロ首脳会談はその下の位置だった。中ロ会談の記事は両首脳が握手していない写真を載せるなど、ロシア側の積極姿勢とは温度差がある。

ということだ。鋭い視点で、確かにそう感じさせる。

一方、中国が警戒しつつもロシアと会談する意味は小さくない。そのことは両者の以下のようなやりとりからうかがえる。
習近平:「外部勢力による『カラー革命』を導こうとする試みに警戒し、いかなる理由による他国への内政干渉にもともに反対しよう」
プーチン:「上海協力機構は世界最大の地域枠組みであり、国際的な問題解への役割が大きくなっている」

いうまでもなくアメリカを意識し、欧米への対抗軸として上海協力機構を拡大してゆく必要性だ。上海協力機構は最大領域、最大人口を擁する総合的地域組織だ。将来的には途上国を巻き込んでG7やG20以上の集まりとなる可能性を秘めていると、中国がみなしたとしても不思議ではないのだ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2022年9月18日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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