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Stalker image: A man chasing a woman

助けを求める声、届かず。韓国警察が見殺しにしたストーカー被害者の悲惨

どの国でも起きている、悪質で深刻な「ストーキング犯罪」。日本ではストーカー規制法という法律が制定されていますが、お隣の韓国ではどのような法律で裁かれているのでしょうか。韓国在住歴30年を超える日本人著者が発行するメルマガ『 キムチパワー 』の中で、先日起きたばかりの痛ましい事件を紹介しています。

ストーキング犯罪に厳罰を

ソウルの新堂(シンダン)駅のトイレで、31歳の男がストーキングの末一人の女性を殺害する事件が起きた。駅員として同期入社の関係だった。事件が起きるまで数えきれないくらいのストーキングをやられていたため、女性は警察に訴えていたが警察のほうでは女性を保護するための確実な方法をとらなかったようだ。

女性の訴えもむなしく新堂駅の女子トイレで待ち伏せしていた31歳の犯人に殺害されてしまった。犯人は事件の直後、女性がアラームを鳴らしていたために捕まえられたが若い女性の命はかえってはこない。新堂駅の女子トイレの前には花やメッセージカードが色とりどりに飾られている。多くの人が女性の死を悼み悲しんでいる様子が毎日のように伝えられている。

京畿大学犯罪心理学科のイ・スジョン教授が「新堂駅駅員ストーキング殺人事件」と関連して「好きな人をいじめるのは求愛行為ではない」としてストーキング犯罪に対する社会的認識変化を促した。イ教授は19日、KBSラジオのインタビューで「ストーキングがどれほど危険な犯罪でありうるのか一般人はもちろん捜査機関さえ正確に把握できずにいる。認識の変化がなければならない」とし、このように明らかにした。イ教授(女性)は犯罪心理学における韓国での重鎮である。

 

イ教授は「『男女が付き合っていて別れようなんて言われたら、求愛行為をすることもありうるのではないか』という程度の認識では被害者の生命を保護することは基本的に難しい」とし「ここからすべての問題が出発しなければならない」と指摘した。

イ教授は「事件化する(ストーキング)犯罪が1年に1万5,000件程度発生しているが、そのうち10%程度が危険なストーキング事件と推定される」とし「今(まで)申告された事件内容について分析が必要だ」と指摘する。続けて「初期段階で危険なストーキング事件を判断できる根拠も提示できなければならない」とし、「そうすれば捜査機関でも拘束令状申請、臨時措置などの必要手続きを円滑にできるだろう」と助言した。

イ教授はストーキング処罰法に対する反意思不罰罪規定を廃止しなければならないと主張した。教授は「現在は被害者が合意してくれれば事件がそのままうやむやに蒸発するようになっている。反意思不罰罪、親告罪(※)であるため」とし「だから被害者が告訴をしてもこれを取り下げればいくらでも事件化にならないという考えでより一層被害者を脅迫し生きられないようにし、結局取り下げなければ恨みを抱いて殺害するに至る負のスパイラル」と説明した。

同氏は「今回は必ず反意思不罰罪を廃止しなければならない。そこからが始まり」とし「そうしてこそ捜査が進行され捜査機関で強制力を持って介入をし、臨時措置ももう少し明確にでき、裁判所でもその根拠として拘束令状を引用できる状況になるだろう」と強調した。

被害者の身辺保護制度と関連しては「被害者だけを監視し安全なところに移し、被害者だけが管理をきちんとすれば良いという考えでスマートウォッチを被害者に与えている。(ところが)なぜ監視の対象が被害者にならなければならないのか」として「人権侵害になっても加害者に電子監視と位置追跡ができる方式に変えなければならない。新型コロナウイルス感染症の時、位置追跡に遭ったのではないか」と主張した。

 

イ教授は、民主党所属のイ・サンフン市議会議員が「好きなのに受け入れてくれないので(加害者が)暴力的対応をした」という趣旨で言った発言も大いに問題があると批判した。教授は「それが問題の核心」とし「認識の変化がなければならない。好きな人をいじめるのは求愛行為ではない」と話した。

教授は「被害者の話を加害者、被疑者も聞かなければならないが、捜査機関も耳を傾けなければならない。被害者がどれほど恐怖を感じるかが捜査機関にきちんと伝えられなければならず、捜査機関でも積極的に証拠確保のために努力しなければならない」とし「問題意識を持たなければならない。国会議員たちがこの問題は人命被害が出るという点を必ず認知し立法することをお願いする」と訴えた。

一方、韓東勳(ハン・ドンフン)法務部長官は、ストーキング犯罪に対する反意思不罰罪規定の廃止を検討していると明らかにした。ハン長官はこの日、国会対政府質問で「法務部長官として責任感を感じ再発防止のためにできるすべてのことをする」とし、「多くのアイディアを集めて国家ができる範囲内で被害者を保護できるよう最大限努力する」とし、「被害者を保護することがまずは一番大切な点だ。被害者を保護できるよう最大限努力する。廃止法案発議を越えて加害者に対する位置追跡とか臨時措置をもう少し加えることで隙間を埋める方式を研究している」と語った。韓東勳ならば、なんらかの結果を出してくれるだろう。

※ ちなみに親告罪(しんこくざい、独語でAntragsdelikt)とは、告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪を指す。告訴を欠く公訴は、訴訟条件を欠くものとして判決で公訴棄却となる。事実が公になることで、被害者のプライバシーが侵害されるなどの不利益が生じるおそれがある犯罪被害、および、介入に抑制的であるべきとされる親族間の問題など、被害者による告訴がなければ公訴を提起(起訴)すること

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年9月21日号)

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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