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人民の選択に口を出すな。中国が米国に発したイラ立ちメッセージ

人権問題や台湾の安全保障を巡り、過去例にないほど緊張が高まっている米中関係。しかしこれまで強気一辺倒だった中国サイドに若干の変化もあるようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、著者で多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さんが、ニューヨークを訪問した王毅外相の発言を紹介するとともに内容を詳細に解説。その上で「米中関係を改善へと向かわせたいという意図が見える」との分析結果を記しています。

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それでも米中が首脳会談に向けて調整に入る理由

今週は久しぶりにコロナ関連のトピックにたくさん触れた。

まず出演したテレビ朝日の『ビートたけしのTVタックル』で、「2ch.sc」の開設者のひろゆき氏の疑問に答えて中国のワクチンについて話した。中国ワクチンが効き目がないという指摘に対して「中国はコバックス・ファシリティーに加盟して途上国を中心にたくさんワクチンを提供しているので、問題があれば……」と解説した。付け加えれば、世界で死亡率の高い国や地域のワクチンがまず問題にされるべきで、例えば、台湾だ。台湾はむしろ中国がワクチンを提供すると言っても拒んだ地域だ。これこそ回答だろう。

続いて9月25日にはロイター通信が、「ファイザーCEOがPCR検査で二度目の陽性になった」と報じたことだ。うかつなことに一度目の「陽性」のことを知らなかったために、心から驚かされた。

そして9月23日。やはりロイター通信が、WHO高級顧問の話として「もしいま世界の先進国が新型コロナウイロスへの対策を怠れば、両手は血にまみれるだろう」と発言したことを伝えた記事だ。

先進国を中心に、もはやコロナは終わったという雰囲気が広がり、ジョー・バイデン大統領もCBSの「60ミニッツ」に出演し「(コロナは)もう終わったようだ」と述べるなど先進国はすでに本格的な対策から離れつつある。そうした雰囲気にくぎを刺す目的だ。

冬にはインフルエンザの大流行も予告されていて、残念ながら世界が感染症に一息付けるのは、まだ先の話かもしれない。

前置きが長くなったが、今週のタイトルに掲げた米中首脳会談の話題を始めたい。

メインは何といってもアントニー・ブリンケン米国務長官と王毅国務委員兼外相の会談(9月23日)だ。これは、11月15日からインドネシアで行われるG20サミットにおいてバイデン大統領と習近平国家主席が初の対面の首脳会談を行うか否かを占う会談とされたからだ。

外相会談で王毅は、ブリンケンに対し「最近のアメリカの誤った台湾政策に対して中国側の厳正な立場を伝えた」という。台湾は中国の一部で内政問題であることや、アメリカが「3つのコミュニケの内容を厳守することを」求めたという。

中国側のいら立ちがより鮮明に表れていたのは、これより1日前の外交部報道官の定例会見である。

王毅に代わって解説した汪文斌報道官は、「われわれはアメリカ国民の選択した発展の道を尊重し、アメリカが自信を持ち、発展し進歩することを楽しみにしている。だからアメリカも中国人民の選択した発展の道を尊重してほしい。これこそ中国の特色ある社会主義なのだから。(中略)中米関係の最もベースとなるのは平和共存への期待である。(中略)アメリカの一部の人々の間には、かつてのソ連封じ込めと同じやり方で中国に圧力をかけるべき、とする声もある。(中略)だがそういう試みは徒労に終わるだろう。(中略)協力ウィンウィンは可能であるというだけでなく必須である」と語った。

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またニューヨーク入りしたばかりの王毅は19日、米中関係全国委員会(NCUSCR)、米中ビジネス協議会(USCBC)、米国商工会議所(USCC)の代表的メンバーと懇談会を行い、「5つ確定」にも言及している。

懇談では王毅自身、現在の米中関係を「国交樹立以来の冷え込み」であり、「『新冷戦』に突入することを懸念する声が少なくない」と認めている。その上で、以下のように5つの点を挙げて対米関係が将来に亘り変わらないことを強調した。

  1. 中国自身の発展という見通しの確定
  2. 中国の改革開放への決意の確定
  3. 中国の対米政策の確定
  4. 中米間の経済・貿易協力の強化の確定
  5. 米側との多国間協調の確定

あらためて解説など必要のない内容だが、3.と4.については補足がある。

まず3.では、「中米両国の制度は異なるが、これは両国の国民が選択するものだ。中米はどちらも相手に取って代わることはできず、どちらも相手を打倒することはできない。習近平国家主席は中米間の『相互尊重、平和共存、協力・ウィンウィン』という三原則を打ち出し、バイデン大統領は『四不一無意』(「米国は新冷戦を求めず、中国の体制転換を求めず、同盟関係を強化して中国に対抗することを求めず、台湾独立を支持せず、中国と衝突を起こす意図を有しない」)を繰り返し強調した」点が強調されたことだ。

そして4.は、「中米が協力すれば、両国及び世界に寄与する重要な事を多く成し遂げることができるということは、歴史がすでに証明しているし、今後も証明していく。このためには、中米関係の政治的な基礎をしっかりと維持すること、特に『一つの中国』原則をしっかりと厳守することが必須だ」との呼びかけだ。

少なからず中国が米中関係を改善へと向かわせたいという意図が見えてくる。

だが、一方で中国のバイデン政権への不信感は、そう簡単には拭えない――

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2022年9月27日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Twitter(@Secretary Antony Blinken

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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【著者】 富坂聰 【月額】 ¥990/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

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