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KUALA LUMPUR, MALAYSIA - 24 OCTOBER, 2021 : Guard from Squid Game at the roadshow for the promotion of new Netflix show. Squid Game is a South Korean survival drama television series

なぜ、韓国コンテンツには「人種差別表現」があまりにも多いのか?

エミー賞6冠を獲得し、大人気となった韓国ドラマ『イカゲーム』、その栄冠の影に隠された大きな批判をご存知でしょうか。その理由と、韓国が持つ特有の差別的問題について、韓国在住歴30年を超える日本人著者が発行するメルマガ『 キムチパワー 』の中で紹介しています。 

韓半島純血主義

米国放送界で最高権威を誇るエミー賞6冠王となった韓国ドラマ『イカゲーム』(ネットフリックス)に対して人々がよく知らない事実が一つある。このドラマがパキスタンでは大きな批判を受けたという点だ。

キャラクターの中にパキスタン出身ムスリム移住労働者アリがいるが、役割を引き受けた俳優アヌファム・トリパーティーがインド人出身ヒンドゥー教徒というのが論難の理由だった。もちろんパキスタン人だけがその配役ができるわけではないが、問題は両国の関係だ。長い間カシミール地域をめぐる領土紛争と宗教葛藤を経験しているだけに、キャスティングにもっと慎重でなければならなかったということだ。他国の歴史と文化を細心に考慮しなかったためのことだった。

米国アカデミー授賞式の『パラサイト半地下の家族』、カンヌ映画祭の『別れる決心』、そして『イカゲーム』までKコンテンツがまさに世界舞台を揺るがしている。

過去、国内と海外マニアの一部に止まっていた韓流ファン層は、オンライン動画プラットフォーム(OTT)の成長、COVID-19パンデミックとあいまって、ここ数年間で急速に厚くなった。さらに、国際授賞式でも認められ、韓国作品への関心はますます高まっている。

だが『イカゲーム』のアリのように韓国ドラマ、映画の中で他国に対する理解が足りない配役や場面は絶えず問題として指摘される。文化的多様性を考慮せずに特定国家や人種に対する偏見を再生産する不慣れな作品もある。韓国コンテンツが全世界で脚光を浴びている中、いざ国内では人種差別的、後進的認識から抜け出せない状況だ。

9月9日ネットフリックスを通じて公開された『スリナム』は外交危機まで呼び起こすところだった。南米国家スリナムで実際にあった韓国人麻薬商の話を扱ったフィクションだが、国名をシリーズタイトルとして使ったことで、「スリナムは麻薬国家」という認識を強化・定着させるということだ。アルベルト・ラムディン=スリナム外交部長官が「長い間国家イメージ向上のために努力してきたけれど、ドラマが再び悪くしている」と強く抗議し、韓国外交部は現地の韓国人らに対し安全告知(身の安全を第一にせよ)を発令した。

 

外交問題までではないが、特定国家や国民に対して誤った認識を植えつける場面も相次ぐ。最近終映したMBCドラマ『ビッグマウス』では、主人公が相手を見下す時、タイ料理のヤムクンを例に挙げる台詞が出てきて、現地視聴者が反発した。TvNドラマ『流れ星』ではアフリカにボランティアに行く場面で立ち遅れた地域を助けるという偏見がそのまま明らかになり、昨年SBSドラマ『ラケット少年団』ではバドミントン競技をしにインドネシアを訪れた韓国コーチが現地に対して侮辱的な発言をする場面が議論の的となった。

忘れた頃に似たような議論が繰り返されるのは、基本的に国内業界内に他文化と人種に対する理解が足りないためだという分析が出ている。メディアの中の差別と嫌悪表現を盛り込んだ本『この場面、私だけが居心地が悪いんですか?』を書いたテ・ジウォン作家はこれを悠久な「単一民族主義」の影響と説明する。彼は「韓国は単一民族、『純血主義』に対するアイデンティティが強い国」とし「ここに対する自負心があったために他民族や文化に排他的な特性、抵抗感が続いてきた」と話した。

その中でも米国、欧州の白人は(韓国人にとって)憧れの対象で、アジア、アフリカの有色人種は同情の対象と見る二重的な視線が強い。韓国と遠く離れた国、韓国との交流が少ない不慣れな人種ほど、コンテンツで描かれる偏見も激しくなる。昨年SBS『ペントハウス3』では主人公ローガン・リーの実兄アレックスがドレッドロック(レゲエ頭)に入れ墨をした姿で登場したが、「黒人特性を誇張した、黒人文化を戯画化し侮辱した」という批判を受け、このキャラクターを演じた俳優パク・ウンソクが謝罪した。ドレッドラックが生まれつき髪の毛が縮む黒人の専有物であり、黒人差別の歴史まで盛り込んでいるという事実を知らずに起きた事件だ。

SBSドラマ本部長出身の製作会社タイガースタジオのキム・ヨンソプ代表は「基本的に企画、製作段階でこのような論難に対してゲートキーピングがまともにできないのが問題」と話した。彼は「地上波放送会社には自主審議機構があるが、台本が急に移ってきて製作日程が差し迫った場合、これをまともに把握しにくい」として「過去に比べて市場が非常に広くなっただけに演出に細心の注意が必要だということを認知している」と語った。

人種差別的描写が法的攻防につながった場合もある。2017年に公開された映画「犯罪都市」と「青年警察」は、ソウル九老区加里峰洞(クログ・カリボンドン)と永登浦区大林洞(ヨンドゥンポク・デリムドン)に居住する中国同胞(朝鮮族)を犯罪集団のように描き、大きな議論を呼んだ。当時、中国同胞60人余りが「青年警察」製作会社に対して損害賠償請求訴訟を提起し、控訴審で公式謝罪と再発防止約束を内容とする和解勧告決定が下された。

 

海外ではすでに数年前から多文化と多様性を作品製作とキャスティングで最も重要な要素の一つに挙げている。ディズニーは最近、実写映画『人魚姫』と『白雪姫』にそれぞれ黒人歌手兼俳優ハリー・ベイリー、ヒスパニック俳優レイチェル・ジグラーなどをキャスティングし話題になった。

100年近く子どもたちのためのアニメーションを作りながらも、黒人姫は『プリンセスとカエル』のキャラクターティアナ1人だけだったディズニーの前向きな決定だ。ディズニーは『人魚姫』の主人公アリエルについて、「人魚は誰でもなれる。アニメーションと違うという理由でこの選択を受け入れることができなければ、それはあなたの問題」と明らかにした。国内の一部で「ディズニーの『PC主義』(政治的正しい)のために童心が破壊された」といった人種差別的な反応が出たのとは相反する。

マーブルスタジオも典型的な白人ヒーローの代わりに人種も外見も多様なキャラクターを相次いで披露している。昨年俳優マ・ドンソクが出演して話題になった『エターナルズ』はジェンマ・チャン、クマイル・ナンジアニなどアジア系俳優をはじめ黒人俳優ブライアン・タイリー・ヘンリーなどが劇をリードした。これに対してテ作家は「海外では人種差別と関連した法規が多く用意されており、製作者もこれを守るために努力する」として「既存文法とは異なりキャラクターや人種を転覆させ新しい面白さと新鮮さを与えるのは結局コンテンツの長所になる」と話した。

梨花女子大学コミュニケーションメディア研究所のイ・ジェウォン研究委員は「韓国コンテンツは今や企画段階から『輸出用商品』という観点を持たなければならないが、まだ外国消費者を念頭に置く視線が不足している」として「OTTプラットフォームを通じてコンテンツが全世界どこにでも到達してしまうのだという考えを持たなければならない」と指摘した。続けて「他の文化圏で見た時、問題になりうるイシューに対してはあらかじめ点検し、必要ならば先制的に該当国家と疎通することも良いだろう」とし「内部的には問題発生時に対処できるマニュアルを構築しなければならない」と助言した。

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年9月27日号)

image by:Faiz Zaki / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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