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習近平が掘る墓穴。香港で進む愛国教育が中国を滅ぼす事になる訳

中国当局による激しい弾圧により自由と民主主義を失った香港で進む、中国式愛国教育。しかしこの子供たちへの洗脳は、後々中国に大きな災いをもたらす危険性を孕んでいるようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、香港における愛国教育の実態を詳しく紹介。さらにかような政策と領土拡大の試みが、中国の崩壊につながる理由を解説しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年10月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。 

香港で進む中国式愛国教育がポスト習近平後の中国を崩壊させる

香港中學生升旗未起立 遭斥責渉違「國安法」罰停課3天(国旗掲揚に起立しなかった香港の中学生が、「国家安全維持法」違反で3日間の停学処分に)

香港のツェンワンにある中学校で、生徒たちが国旗掲揚時に起立しなかったことが国家安全維持法違反にあたるとして、3日間の停学処分になったそうです。台湾の自由時報が報じました。

これは10月5日の朝会で国旗掲揚式を行っている際、14人の互いに面識のない学生が購買部で購入した朝食を校庭で食べていると、突然、副校長から「立て」と怒鳴られ、その後、国家安全維持法に違反している可能性があるとして、3日間の停学が申し渡されたとのことです。

生徒たちは、副校長から言われて国旗掲揚と国歌斉唱が行われていることを知り、教室に戻ると、校長や教師から国家安全維持法違反と国旗への非礼で避難され、即刻の下校と3日間の停学を申し渡されました。

香港14名中学生升旗未起立遭停課 国旗法后首例

日本でもかつて学校教育の場での国旗・国歌が問題になったことがありました。ただし、そのときは君が代・日の丸を嫌う日教組や教師たちが、起立や国歌斉唱をしないことについて、これを処分するかどうかということが問題でした。

私は、子どもたちに国旗・国歌の意義や、これを尊重する態度を養うことは重要だと考えています。国によっては、国旗掲揚や国歌斉唱時に起立しなければ、罰せられる国もあります。これに対して、日本は甘いくらいです。

ただし香港の場合は、返還時に中国がイギリスとの間で約束した、香港人の自治を50年間は維持するという「一国二制度」を中国側が一方的に破り、2020年に国家安全維持法を香港に押し付けたという経緯があります。まったく香港の民意に基づかず、中国人意識もない香港人に中国の国旗・国歌を押し付けているわけです。

国家安全維持法の施行後、中国に批判的だったりんご日報が廃刊に追い込まれ、多くの民主活動家らが逮捕されていることはご承知のとおりですが、中国政府は、教育現場でも中国(共産党)への「愛国教育」を強めています。

とくに今年からは、全学校で、授業日と香港返還記念日(7月1日)、中国の建国記念日である国慶節(10月1日)に中国の国旗掲揚と国歌斉唱が義務付けられるようになりました。

また、昨年9月には、香港立法議会で国旗国章条例の改正案が可決され、現実世界か仮想世界かを問わず、公然と故意に国旗または国章を侮辱することを犯罪とし、違反者には最高5万香港ドルの罰金と3年の禁固刑に処することが決定されました。そのようななかで、今回の事件が起こったというわけです。

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とはいえ、処分された中学生たちには中国の国旗・国歌を拒否する意図はなく、単なるうっかりミス、あるいはちょっとしたサボリだったようですが、それでも中国への愛国心を示す機会に立ち会わなかったことで、厳しい罰が下されることになってしまいました。

こうした国民に対する愛国の強制は、「鉄は熱いうちに打て」ということで、大人たちよりむしろ学生たちに対してますます進められていくことになるはずです。

加えて、香港の教育現場では、反日教育も急速に進んでいます。2021年からは中国共産党の歴史観を教えることが義務化され、たとえば12月13日は「日本軍により南京大虐殺が行われた日」という嘘が教えられることになったのです。

中国式教育で子供を洗脳せよ

さらに香港では、「北京語(マンダリン)教育」も進められています。香港はもともと広東語ですが、それを無理やり北京語に置き換えようとしているのです。こうしたことは、チベットやウイグル、モンゴルなどでも行われており、少数民族の言語と民族意識消滅の危機となっています。

香港も中国人の入植が進み、これまでの「香港人」としての言語やアイデンティティはどんどん消滅していくことになるでしょう。

このような姿を見ると、私は国民党が台湾に進駐してきた当時を思い出します。日本の敗終戦直後、GHQの日本進駐と同様に、台湾にもマッカーサー極東連合の第一号命令が出て、中国の国府軍が台湾に進駐しました。

国民党は20万の日本軍と40万人の日本の民間人を台湾から追放し、50年間蓄えてきた個人資産までをも、国民党は戦利品として接収しました。その一方で、200万人の中国人が台湾に流入してきたのです。

国民党が台湾を継続支配するためには、台湾は中国の絶対不可分の固有領土であることを唱えねばなりません。そのために、50年間にわたる日本時代は暗黒の時代であり、植民地的搾取、略奪、虐殺の歴史を捏造して、国民党による台湾支配を正当化しました。そして、「台湾史」の研究や書物の閲読は禁止され、語ることさえタブーとなり、捏造された独善的歴史観が日本人にまで押し付けられたのです。

当時は、小学校も中学校も「私も中国人、君も中国人、彼も中国人、皆中国人」と教わっていました。いきなり中国人にさせられた台湾人は困惑しました。そして大陸からやってきた中国人の横柄かつ腐敗に満ちた態度を目にした台湾人は、規律にうるさいけれど律儀な日本人と対比して、「犬が去って豚が来た」と囁きあいました。

こうした中国人と台湾人の文化摩擦が、後に台湾人による大規模デモと国民党による大弾圧「226事件」や「白色テロ」へとつながっていったのです。

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とはいえ、台湾の場合には、李登輝総統時代の完全民主化と、その後の選挙による民進党への政権交代で、中国人・国民党による独裁支配は終焉、いまだ国民党の影響力は残っているものの、かつてほどではなくなりました。

しかし香港は、イギリスの民主的統治から中国の独裁統治へと逆戻りしてしまいました。

もちろん、中国は台湾統一を加速させようとしています。もしも中国に統一されることがあれば、香港と同じ道を辿ることになり、苛烈な言論統制と思想統一、反日教育が行われることになるでしょう。国民党が台湾に進駐してきたときの悲劇が繰り返されるのです。

とはいえ、台湾人もそう簡単に支配されるはずもありません。先日、ロシアが支配するクリミアとの間にかけた橋が爆破されたという事件がありましたが、先日のメルマガでも取り上げた、中国が台湾統一後に現実化させようとしている北京~台湾間の京台高速鉄道のことを思い出してしまいました。

【関連】台北まで46分。中国が勝手に進める「京台高速鉄道」狙いは台湾侵攻

中国が台湾を支配することは、非常に多くの犠牲とコストを支払うことになると思います。かつての漢の武帝は多くの外征を行ったことで、漢の人口は半減し、国庫が空になってしまいました。そのため、領土を拡張したもののやがて保てなくなって前漢が衰退する原因となってしまったのです。

台湾だけではありません。無理やり中華民族にさせられたチベット人、ウイグル人、南モンゴル人と、無理やり「漢族」にさせられた非漢族である上海の呉人、香港の越人は、中国からの独立を目指す「五独」と呼ばれ、中国政府に対する反政府運動は、かつて五胡(匈奴・鮮卑・羯・氐・羌)の反乱を「五胡乱華」と呼んだのにならって「五独乱華」と呼ばれています。

武帝は漢のなかでもっとも長い在位を誇り、領土を拡張しましたが、それが前漢衰退の原因となり、やがて王莽に国を簒奪されることへと繋がりました。習近平総書記は3期どころか終身の最高権力者の座を狙っていると言われていますが、そこまで独裁政権を続ければ、体制の硬直化や国際社会からの孤立化を招き、その後の中国が衰退に向かうことは歴史的な必然でしょう。

武帝の死後80年で前漢は王莽に簒奪されることになりました。習近平は現在69歳です。それを考えれば、この100年のうちに「五独乱華」が中国を崩壊させる可能性も少なくないのです。

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