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京大教授が「消費税減税を検討しない」岸田首相を徹底批判する理由

エネルギー価格や原材料費の高騰に30年ぶりの円安が拍車をかけ、賃金上昇を伴わない物価上昇が一般の国民を苦しめています。この状況下において「消費税減税を検討しない」と言明した岸田首相に対し“愚か者”か“邪悪な人間”との烙印を押すのは、京都大学大学院教授の藤井聡さんです。今回のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』で藤井さんは、今ほど「消費税減税」が効果を発揮するタイミングはなく、しかも日本は消費税減税のデメリットを気にする必要のない世界で唯一の国であると、“愚者”にもわかりやすく解説しています。

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物価高なのに賃金下落の今ほど「消費税減税」が求められる状況はない。これで減税を考えないのは愚者か悪人かのいずれか

岸田氏は「消費税減税を検討しない」と言明しましたが、これほど驚くべき事態はありません。今ほど消費税減税が求められる経済状況等滅多になく、したがって普通の国の普通のリーダーなら消費減税を行うにきまっているからです。というか実際、アメリカをはじめとした実に多くの国々が消費税(というか、付加価値税)やガソリン税の減税・凍結を行っています。

したがって、その言葉が本気なのだとしたら、我が国総理はホントに何も分かっていない愚か者か、もしもそうでないとするなら国民の利益の事等なにも考えない相当邪悪なワルイ人物だ、という事になってしまいます。

我が国リーダーですからもちろん、そうでないことを祈念していますが……なぜそこまで言えるのかについて、ここでは解説したいと思います。

まず、物価高対策において消費税減税ほど効果的なことはありません。今、消費税を凍結すれば、その瞬間に全ての商品の価格が10%の消費税分引き下がる事になるからです(厳密に言えば、理論的には11分の10の水準に、9.1%引き下がります)。

しかし、そうなれば、中長期的には、人々の消費が活性化されると同時に賃金が引き上がり、それらを通して、かえって物価高(つまりインフレ)の状況となってしまいます。つまり消費税減税は、短期的には物価を引き下げるものの、中長期的には物価を引き上げる方向に作用するのです。

で、もしも日本経済の基調がインフレであり、その上で輸入価格の高騰を受けてさらにインフレになっている、という(現状のアメリカやヨーロッパのような国々の)状況であるなら、消費税を引き下げることは、かえって、元々存在していたインフレ基調を「構造的に加速する」ことになり……下げたくても下げられない、という事になってしまいます。

つまり、そんな元々インフレ基調の国にとっては、消費税減税は、短期的にはメリットはあっても、中長期的にはより深刻なインフレをもたらすリスクがあるのであり、したがって、そういう国々では軽々に消費税減税を行うことができないし、やってしまっては、結果的にトータル、状況が悪くなってしまう(=インフレがさらに加速してします)……ということにもなりかねません。

だから例えばアメリカでは、(ガソリン税の凍結は行ったものの)消費税等の間接税の減税については必ずしも積極的ではないのです。

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ところが日本は……輸入価格の高騰が始まる前の経済は、構造的なデフレ状況に陥っていた「世界でたった一つの国」だったのです。これはつまり、消費税減税の帰結として考えられる「中長期的なインフレ圧力」という、消費税減税の唯一のデメリットについて、全く考えなくてもよい「世界でたった一つの国」であることを意味しています。

というよりむしろ、構造的なデフレ=物価と賃金下落に悩まされ続けている日本において求められているのは「構造的なインフレ圧力」だったのです。だから、消費税減税の諸外国にとっての「中長期的なインフレ圧力」というデメリットが、我が国日本においてのみ「有り難いメリット」として作用するのです。

すなわち、構造的なデフレに苛まれ続けている今の日本は、消費税減税を何のデメリットも受けないままに、メリットだけを享受する形で進めることができる状況にあるのです。

それはまるで、普通なら「背脂たっぷりラーメン」なんて、短期的には美味いから皆食べたいけれども、そんなの食べてばっかりいたら肥満になっちゃうから食べちゃダメ……だけど、ガリガリに痩せ細ってたくさんの脂肪を身に付けなきゃいけない、という特殊な状況にある人にとっては、美味いし、脂肪もつくし、一石二鳥だ!ってくらいに素晴らしい食事になる、という話と同じ。

今の日本は、デフレでガリガリに痩せ細ってるんだから、「背脂たっぷりラーメン」くらい食えばそれでいいわけです!(もちろん、おなかを壊さない程度に、というのは大切ですがw)

それにも関わらず、岸田氏は、「またそんなの食べたら肥満になるから、凄く食べたいけど、食べちゃだめだよなぁ」なんて言ってる、脂肪分が少なすぎてガリガリになって死にそうになってる愚者と全く同じなわけです。
(『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』2022年10月21日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

※この議論をさらにガッツリ考えてみたい方は是非、藤井先生の新著『消費減税ニッポン復活論』をご一読下さい。

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image by:DRN Studio/Shutterstock.com

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京都大学大学院・工学研究科・都市社会工学専攻教授、京都大学レジリエンス実践ユニット長。1968年生。京都大学卒業後、スウェーデンイエテボリ大学心理学科客員研究員,東京工業大学教授等を経て現職。2012年から2018年まで内閣官房参与。専門は、国土計画・経済政策等の公共政策論.文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。著書「プライマリーバランス亡国論」「国土学」「凡庸という悪魔」「大衆社会の処方箋」等多数。テレビ、新聞、雑誌等で言論・執筆活動を展開。MXテレビ「東京ホンマもん教室」、朝日放送「正義のミカタ」、関西テレビ「報道ランナー」、KBS京都「藤井聡のあるがままラジオ」等のレギュラー解説者。2018年より表現者クライテリオン編集長。

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【著者】 藤井聡 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 土曜日

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