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日豪安保“条約”をいつの間に結んだというのか。信頼できぬ日本メディア

10月22日に日豪両首脳が署名した、安全保障協力に関する共同宣言。しかしその報じられ方は、日本と海外とでは著しい差があるようです。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、日本の新聞と香港有力英字紙の記事を比較しつつ、両者の視点が大きく異なっている事実を紹介。さらに海外紙には「安保条約」と書かれているにも関わらず、日本の新聞が「安保宣言」という言葉を翻訳に選んでいる不可思議さを指摘しています。

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ファイブ・アイズ(5つの目)というアングロサクソンの同盟に日本だけが加わる事の意味

10月22日、岸田首相がオーストラリアの首相と会談して共同宣言を出しました。

日本の新聞だと最大公約数的に以下のような記述になります。

岸田文雄首相は22日、訪問先のオーストラリア西部パースで同国のアルバニージー首相と会談し、新たな安全保障協力に関する共同宣言に署名した。

宣言は中国の台頭を念頭に「日豪の安全保障上の利益に影響を及ぼし得る緊急事態に関し対応措置を検討する」と明記した。

今回の宣言は、2007年に日豪両国が署名した安保協力に関する共同宣言に代わるものである。

「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、自衛隊と豪軍による共同訓練・活動、情報収集・警戒監視、サプライチェーン(供給網)の維持を含む経済安全保障、サイバー防御の強化──などで幅広く協力する方針を明示した。

解説

特に面白味のない、よくある報道です。

ところが、同じ内容が香港のサウスチャイナモーニングポストによると以下のような記事になります。抜粋します。

日本とオーストラリア、中国の軍事的台頭に対抗するため画期的な安全保障条約に調印

 

オーストラリアと日本は中国の軍事的台頭に対抗することを目的とした安全保障条約に調印した。

 

これにより日豪両国の軍隊がオーストラリア北部で共同訓練を行うことが可能になった。

 

専門家は、この協定は日本が米国主導のファイブアイズ情報共有同盟に参加するための新たな一歩であると見ている。

 

日本大学情報史の専門家である小谷賢氏は、「日本が米国以外の外国とシギント情報を共有できるようになったのは画期的な出来事だ」と語る。

 

これはクアッド(豪州、インド、日本、米国)の枠組みを強化し、日本がファイブアイズに加盟するための第一歩となる」とも述べている。

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解説

ファイブアイズとは米英などアングロサクソン系の英語圏5カ国による機密情報共有の枠組みです。

米英が立ち上げカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わりました。「エシュロン」と呼ぶ通信傍受網で電話やメールなどの情報を収集しています。

参加国の情報機関は相互に傍受施設を共同で活用します。長らく公式に存在を認めていませんでしたが2010年の関連文書の公開で活動が明らかになりました。

またシギント(SIGINT、英語:signals intelligence)とは、通信、電磁波、信号等の、主として傍受を利用した諜報・諜報活動のことです。

この岸田首相が調印したオーストラリアとの安全保障条約は、この機密情報共有のファイブアイズに日本が加盟する布石となるのではないかというのです。

しかしながらファイブアイズに日本が加盟するためにはハードルもあります。さらに記事を抜粋しましょう。

しかし、日本の同盟国との安全保障協力の緊密化には、まだハードルが残っている。

 

米国や他のパートナーとの情報共有は、日本が機密情報を扱う能力に関する長年の懸念によって妨げられてきた。

 

日本の情報政策に関する本の著者で香港城市大学教授のブラッド・ウィリアムズ氏は、「率直に言って、日本は伝統的に情報漏洩をしてきた」と語った。

 

オーストラリアも日本も、世界的な諜報活動で活躍するために必要な海外情報工作員や外国人情報提供者の軍隊を持っていない。

 

日本には、アメリカのCIA、イギリスのMI6、ロシアのFSBはおろかオーストラリアの小さなASIOに相当する海外スパイ機関も存在しない。

 

たしかに日本にもスパイをより厳しく罰する法律が導入された。

 

しかしまだ日本の機密保持能力は不十分である。オーストラリアは、日本に渡す情報にはファイブアイズ・ネットワークから得た情報を精査することを余儀なくされそうだ。

解説

ファイブアイズというアングロサクソンの同盟に日本だけが加わる事の意味。

そのプラス、マイナスは何か?シビリアンコントロール(文民統制)が効く形で日本が諜報機関を持てるのか?

本当に考えさせられる視点です。

しかし、残念ながら日本の新聞を読んでいるだけでは、その発想、視点は浮かびません。

もう一つ、気になることがあります。

日本の新聞では「新安保宣言に署名」という書き方ですが、このサウスチャイナモーニングポストではsigning a security pact「安全保障条約に調印」と書いています。

宣言と条約ではまったく語感が違います。

日本の新聞かサウスチャイナモーニングポストのどちらかが間違っているのか?

または意図的に日本の新聞が「条約」ではなく「宣言」という言葉を翻訳に選んでいるのか?

ちなみに私が見た海外の新聞はほぼ全部Security Pact(一部Agreement)という言葉を使っています。

一般的には「安全保障条約」と訳されます。 (この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』10月23日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)

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image by: 首相官邸

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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【著者】 大澤 裕 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

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