日本に迫る危機。中国共産党の新人事が示す習近平の“恫喝外交”回帰

 

台湾の聯合報にはドイツ国際放送「ドイツの声」(Deutsche Welle)の分析として、この人事に込められた4つのポイントを紹介しています。

1.なによりも忠誠心

中国共産党では「七上八下」といわれるように、67歳以下は留任、68歳以上は退任というのが長年のルールでしたが、今回の党大会では、前述したように67歳の李克強と汪洋が中央政治局常務委員会のみならず、中央委員会のメンバーにも残れず、引退に追い込まれました。習近平に忠誠心を誓うイエスマンばかりが集められたといえます。

2.権力の頂点に立ち続ける危険性

かつて独裁権力を手にした毛沢東がそうだったように、誰も習近平に対して逆らえず、またさまざまな情報を上げない、チェックやバランスを保つような政治を行わないことで、独善的な政策が行われる可能性があるとしています。

また、習近平が権力の座から降りたときに生じる権力の空白は、ナショナリズムの高まりの下で激烈な権力闘争となり、それが他国との関係やアジア地域の安定に非常に悪い結果をもたらす可能性があるとしています。

3.安全保障と外交が経済より優先される

上海市党委員会書紀の李強が序列2位になり、来年3月の全人代において国務院総理に選出されることがほぼ確定しました。国務院総理といえば、経済政策を担うポストでもあります。李克強や温家宝、朱鎔基など、歴代の総理が経済政策を指揮してきました。

しかし李強は、汪洋や胡春華のように、経済・社会統治でこれといった実績がありません。むしろ新型コロナで上海をロックダウンした当局者として、非常に評判が悪い人物です。

一方、69歳の王毅と72歳の張又侠が政治局員に残りました。王毅は「戦狼外交」の代表的人物で、非常に好戦的な外交を行ってきました。その彼が、楊潔篪から外交部長を引き継いだわけです。

また、張又侠は軍事委員会副主席に留まりました。これは、経済面よりも安全保障や外交に重きを置いており、しかもかなり好戦的に他国と渡り合うつもりであることが読み取れます。

4.台湾に対してより強硬姿勢となる

軍事委員会副主席に、中越戦争を戦った経験のある張又侠将軍を残留させたことに加えて、前東部戦区司令官で台湾に精通する何衛東を新たに軍事委員会副主席に任命したことで、台湾に対する軍事的な圧力が高まると見られています。

また、国務院台湾事務弁公室の劉継儀主任(64歳)が任期満了を迎えていないにもかかわらず、新しい中央委員会の名簿に載っていませんでした。国務院の比較的穏健な台湾政策について習近平は「失敗した」と明言したとも言われています。

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