MAG2 NEWS MENU

ゼレンスキーの謝罪遅れが命取り。世界がウクライナに向けた反発

勃発からまもなく9ヶ月を迎える、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。欧米諸国内からの停戦を求める声に対して首を縦に振らないゼレンスキー大統領ですが、ロシア国内でも強硬派が主導権を握ったため、戦争の長期化は免れない状況となってしまったようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ウクライナ紛争の最新の戦況を詳しく解説。さらにロシアを始めイランや北朝鮮といった、国際社会の協調を乱すばかりの「ならず者の国家群」に対して、より強度の経済制裁を科すべしとしています。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月無料で読む

 

ウ軍の次の攻撃場所は?

ヘルソン州ドニエプル川西岸からロ軍は撤退し、ウ軍はこの地域の機甲部隊を次にどこに回すかである。ロ軍は撤退部隊をドンバス方面に回している。ウ軍の攻勢に出る場所がまだ、分からない。そして、冬の地面凍結が北から徐々に始まり、機甲部隊が動ける状態になる。

巡航ミサイル攻撃

ロ軍は、地上攻撃が期待通りではないので、巡航ミサイルとUAVによるウクライナ全土のインフラ攻撃をし始めた。11月15日は90発以上の巡航ミサイルの内73発を撃墜、自爆型無人機10機の内10機を撃墜したが、S300の迎撃ミサイルが、ポーランドに落下して、2名が死亡した。

17日、さらに新たな大規模ミサイル攻撃を行った。

当初、ロシアのミサイルがポーランドに落ち、2名死亡と報道されて、これは第3次世界大戦になるかと世界は心配した。しかし、NATOのAWACS監視で、ウ軍の迎撃ミサイルと分かり、ホッとした。

このポーランドの事故に対して、ゼレンスキー大統領が自国ミサイルではないとの見解を示したことで、世界から反発が出ている。特にポーランド世論が激昂してしまう可能性があり、ゼレンスキー大統領は、なるべく早く謝罪した方が良い。

しかし、ミサイル攻撃での迎撃率が、格段に向上した。10月10日の巡航ミサイル84発中43発迎撃、UAV24機中13機で、迎撃率は50%程度であったが、15日は80%になっている。

対空防御のNASAMSの撃墜率は100%であり、この兵器の有効性が証明されたようである。このため、多数のNASAMSの供与が必要である。

一方、ロ軍のミサイルは、ほとんど使い切ったようであり、攻撃の中にKh-55核弾頭巡航ミサイルがあり、弾頭部分を外して普通弾頭にしたものであり、Kh-505巡航ミサイルが不足して、核ミサイルを転用した物と思われる。今後はイラン製のミサイルになるのであろう。

それと、11日以前の攻撃で電力設備などのインフラが破壊されて、1,000万人以上が停電に見舞われたが、17日に、ほぼ全土の電力が回復したようであるが、消費電力量の確保はできていないので、計画停電は依然として続いている。

しかし、このミサイル攻撃で分かることは、ロシア内での強硬派プリゴジンの影響力が大きく、政権内停戦派の思惑を木っ端みじんに、粉砕したことである。

プーチンは、強硬派の意見を取り、停戦派の意見を破棄した。このため、この冬の間、戦争は続くことになる。ワグナー戦闘員を撃破して、強硬派プリゴジンでも渋々、停戦に向かわせないと、停戦にならないことを示した。

ということで、このミサイル攻撃は、ロシア国内の強硬派対停戦派の権力闘争の結果でもあることがわかる。プーチンは強硬派の意見を取ることも分かった。

このため、どうしても、強硬派スロビキン総司令官は、ドンバスで勝たないといけないことになった。このドンバスの中心戦闘員はワグナー部隊でもある。

米ミリー統合参謀本部議長もロシア停戦派のロシア内での闘争に負けたことが悔しいのか、ウ軍は冬でも大きな成果は得られないと言っている。また、ウクライナは明確な目標と時期を明示する必要があると述べた。しかし、当分、戦闘が続くことになる。停戦はない。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月無料で読む

 

南部ヘルソン州

ウ軍は、ドニエプル川西岸を奪還して、ヘルソン市に居る私服のロ軍兵(便衣兵)を探し、まだ、撤退できないロ軍兵の掃討作戦を実施しているが、国内治安部隊が中心で、機甲化部隊は、他地域に転戦している。

ロ軍兵は、「残存してウ軍の場所を見つけて報告して砲撃してもらう」というので、ロ軍便衣兵をすべて見つける必要があるようだ。ウ軍がこの一部ロ軍便衣兵を処刑しているとロシアは、クレームしたが、降伏したのにロ軍兵が発砲したから殺されたようである。

しかし、ロ軍の撤退は成功した。橋や船が絶え間なく攻撃を受ける中で、大きな川を渡らなければならないという、きわめて困難な軍事的状況下で、ロ軍兵力と装備の大部分を撤退させたようである。

撤退完了後、ドニエプル川東岸にもウ軍特殊部隊が渡河したようであり、ロ軍は東岸から15km以上離れた場所まで撤退している。

もう1つ、東岸のキンバーン半島にウ軍が攻撃したようであるが、陽動用作戦であり、これも特殊部隊で、すぐに引き上げている。

バクムット・ドンバス方面

ロ軍の砲撃数が、200件以上をキープして、ものすごい量の砲撃が行われている。全盛期に近い感じの勢いである。ヘルソンから撤退した精鋭部隊を投入している。機甲部隊も投入して、この地域を占領したいのである。しかし、マヨルスクへの機甲部隊攻撃では、大きな侵害を出したようである。

ロ軍としては、ヘルソンの穴埋めするために、ドンバス方面は、ウ軍を負かす必要もあるからで、ロ軍のスロビキン総司令官も意地になっているような気がする。

しかし、ロ軍は前進できていない。HIMARSなどの砲撃が効果を上げているようであり、ロ軍もTOS-1でのサーモバリックや焼夷弾などの攻撃で対抗しているが、激戦が続いている。

ゼレンスキー大統領も18日、同国東部ドネツク州で「激戦が続いている」とし、17日中だけで約100回のロシア軍の攻撃を撃退したと明らかにしている。

スバトボ・クレミンナ攻防戦

ウ軍は、クピャンスクからP07を南下してスバトボに向け進軍して、ノヴォセリヴスキでP07の争奪戦になっている。もう1つ、クピャンスク方面にロ軍が威力偵察をかけてきている。ロシア国境に近いので、補給の心配がないことで、ここに新たな戦線を作りたいようで
ある。

ウ軍は、クレミンナにも攻撃しているが、ロ軍の防御も堅い。

ベラルーシ国境

ベラルーシは、ロ軍と合同部隊を作り、国境付近で活発に行動していることで、再侵攻の可能性が出てきている。

これに対して、国境付近に頑丈な塹壕と壁を作り、ベラルーシからの攻撃を防御する方向で、ベラルーシ国境の橋はすべて破壊した。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月無料で読む

 

ロ軍や世界の状況

ロシア国内では、強硬派が益々勢力を拡大している。政権内の穏健派や停戦派は、事態を見守るしかない状態である。

雪の中でもテントなしなど、冬装備が劣っている動員ロ軍兵は、凍傷や傷病などで大きな支障をきたすような気がする。これを停戦派は心配して、停戦に舵を切りたいが、強硬派は、ロ軍が冬にウ軍を負かすというので、プーチンは強硬派の意見を取った。しかし、実情はロ軍の冬装備は貧弱である。

これを予知して、12月に次の動員令を発出する準備をロシア当局はし始めているようであり、劣勢を大量の人海戦術で押し切ろうとしているようだ。冬の消耗を新しい動員兵で補充するようである。

一方、東部戦線全域で氷点下になり地面が凍結して、自由に動けるので、ウ軍機甲部隊は、次の目標をどこに置くのかということになる。

このため、ウ軍特殊部隊がいろいろな地域に出没しているが、次の目標選定のためであるようだ。

もう1つ、ウ国防次官が「ウクライナはクリミアを年内に取り戻せる」と述べたということは、ドニエプル川東岸かザポリージャ州の攻撃になるが、ロ軍の守備が弱いとも見えない。もう1つ、陽動作戦をウクライナは多用しているので、そのように見せかける可能性もある。

現在の進軍中のスバトボとクレミンナ方面の可能性があるが、ここの守備も動員兵を入れて、徐々に固くなっている。

ということで、ロ軍の意表を突いた地域への進軍になるような気がする。

ウクライナの心配は、ゼレンスキー大統領がポーランド人2名の死亡に対して、謝罪しないことで世界のウクライナに対する見方が冷ややかになることだ。

勿論、この事故調査にウクライナ側人員も参加しているので、近々に謝罪するとは思うが、徐々に支援疲れもあり、遅いことで冷ややかさは残るような気がする。

このような情勢になり、米下院を制した共和党の下院マージョリー・テイラー・グリーン議員率いる極右議員らは、「ゼレンスキーは第3次大戦を始めようとした」と非難して、ウクライナ支援に反対する意向を明言した。米国でウクライナ支援が削減される可能性がある。

もう1つ、支援でウクライナに送ったPzH2000自走榴弾砲で、支援要請したが、支援されずに整備部品不足になり、とうとう1両を共食い整備用に部品取りしたようである。徐々に世界的な支援が先細りしそうな感じになっている。

しかし、フィンランドやスェーデン、バルト3国などは、支援に積極的であり、支援の中心が米国から北東欧・英国にシフトする可能性もある。ロシアに対面する諸国は、ウクライナ戦争は、自国の代わりに行ってくれているという意識が強い。

大多数のロシア資産を凍結する英国は、核ミサイルの攻撃場所と思われているからで、ウクライナを応援するしかないようだ。

ロシアが使用するイラン製ドローンに西側諸国の技術が使われているが、ほとんどが汎用品で規制のしようがないものばかりであり、もし制裁を掛けるなら、イランとの全面的貿易禁止などの制裁をする必要がある。

もう1つのロシア同盟国である北朝鮮は、米全土を攻撃可能な大陸間弾道ミサイルICBMの開発を進めているが、18日の発射で技術的な進展があった新型ICBM「火星17」を高角度で試射したようだ。この1ケ月で50発以上のミサイルを発射している。

ロシア、ベラルーシ、イラン、北朝鮮、シリアなどのならず者の国家群が、大暴れであり、この国家群全体に強度の経済制裁を課す必要がある。これら諸国との経済完全分離が必要になっている。第3国経由も阻止することが必要である。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年11月21日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月無料で読む

 

image by: Володимир Зеленський - Home | Facebook

津田慶治この著者の記事一覧

国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国際戦略コラム有料版 』

【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け