ワールドカップのクロアチア戦でPK戦負けしまった日本代表。技術、実力だけでなく、運も関わるPK戦を勝ち抜くためには何が必要なのでしょうか? 心理学者・富田隆さんのメルマガ『富田隆のお気楽心理学』の中で、その「運」を引き寄せる方法について詳しく語っています。
この記事の著者・富田隆さんのメルマガ
エスパーPK戦。「運」を引き寄せる戦略について本気で考える必要がある
サッカーの試合は残念でしたね。ワールドカップのクロアチア戦は1対1で、延長戦でも勝負がつかず、最後の最後、ペナルティー・キック戦で負けてしまいました。
それでも、日本代表は強豪のドイツとスペインを下し、トーナメントに進んだのですから、今回は素晴らしい健闘ぶりでした。PK戦には「運」まかせの部分がありますから、クロアチア戦の戦いぶりも、前回の準優勝チームを相手に、ほぼ互角のものだったと言って良いでしょう。グループリーグ戦なら引き分けになる試合でした。
「PK戦は運まかせ」という意見は、私だけでなく、多くのサポーターの間からも聞こえて来ました。
もちろん、キーパーの「実力」も大切ですし、キッカーの「力量」も重要です。「運ではなく技術だ」という意見にも一理あります。
たとえば、もしベテランのキーパーが、敵のキッカーが無意識に発する微妙な身体のサインを見逃さないという実力を備えていたらどうでしょう。何処にボールが飛んでくるかを見破ることができるのですから、これを跳ね返し、ゴールを阻止することができるはずです。実際、キーパーの中には、ボールが左右のどちらに飛んでくるかを事前に知っていたとしか思えない余裕の対応をする人がいます。
しかし、キッカーの側も百戦錬磨の強者ですから、わざと逆のサインを出してキーパーを欺くこともできるのです。たとえば、左サイドを狙っているかのように見せかけて、実際には右サイドにボールを蹴るといった具合です。
こうなると、まさに、「キツネとタヌキの化かし合い」で、より「人の悪い」方が勝つのではないでしょうか。
ブラジルのネイマール選手は、見事にキーパーの裏をかいてPKを決めてみせた後、いかにも「どうだい、騙してやったぜ!」というような顔で悪戯っぽく舌を出していました。このように、PKで勝つには、技術プラス「人の悪さ」が重要なように思えます。
ところが、日本人の選手たちを見渡すと、いかにも人の良さそうな好青年ばかりです。とても、おっかない顔をした強豪チームのキーパーを騙せそうには見えません。技術の点では世界基準を満たしていても、「人の悪さ」となるとちょっと無理なのではないでしょうか。
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となると、「運」を引き寄せるという戦略について、本気で考える必要があります。
ひとつは「予知能力」を身に付けることです。キッカーになった時、敵のキーパーが左右のどちらに飛ぶか「予知」できれば、その逆サイドに蹴れば良いのです。あるいは立場替わって、キーパーがキッカーの蹴って来る方向を事前に「予知」できれば、その方向に飛ぶことで防御率は確実に高くなります。これなら、「キツネとタヌキの化かし合い」に巻き込まれて悩む必要もなく、楽にゴールを決めることができたり、逆にゴールを阻止することもできるのです。良いとは思いませんか?
まず、大前提として、私たち動物には誰にも「予知能力」があります。たとえばそれは、大型インコの「ヨウム」にもあるのです。
「那須動物王国」のヨウム「オリビア君」は、ワールドカップ日本戦の勝敗占いをしていました。彼の眼の前の芝生には、対戦国どうしの2本の旗と引き分けの旗、合計3本が立っています。オリビア君は旗をクチバシで引き抜き、そのうちの1本を飼育員の所へ持ってくるのです。これが勝ちチームの旗というわけです。
オリビア君はこれまで、カナダで2015年に行われたの女子ワールドカップ大会、2016年のリオデジャネイロオリンピックなどで、驚異的な的中率を発揮したのだそうです。かつては「神のクチバシ」と呼ばれたのだとか。
ところがオリビア君、今回のカタールワールドカップでは、日本が関わる4戦の全てで予測を外してしまいました。全部です。つまり、グループリーグ3戦では、最初にドイツの旗を次の試合では日本の旗を第三戦ではスペインの旗を持って来てしまったのです。
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「ひょっとしてオリビア君は敗ける方の旗を持ってくるんじゃないの?」と誰しもが不安になりました。そしてクロアチア戦では、両国の旗を引き抜き、さんざんに迷った挙句、最後には日本の旗を持って来てしまいました。MCのお姐さんは、立場上、「日本勝利の予想」にはしゃいでみせていましたが、これまでの経緯を知っている人たちは、明らかにドン引きでした。そして、結果はある意味で「大当たり」。
全て外したオリビア君に予知能力が無いのかと言えば、逆に「有る」のです。
仮に、オリビア君には能力が無くて「適当に」旗を選んでいるのであれば、当たり外れは半々(あるいは3分の1)というように「等確率」になるはずです。ところが、全てを外したということは、オリビア君が適当に選んでいたのではない、ということになります。むしろ、全てを当てたことと同じくらいに「希(まれ)な現象」が起きたわけです。「希現象」は、その背後に何らかの「力」が働いていたことの証拠になるのです。ですから、なぜか今回、オリビア君は「敗けチーム」を選んでいたという可能性を無視することができないのです。
というわけで、大型インコのヨウムにも「予知能力」がある?!ようですし、人間にも当然「予知能力」は備わっています。これを磨けば良いのです。
「磨けば良い」とは言うものの、「言うは易く、行うは難し」です。日本の大学で、本格的な「超心理学(parapsychology)」の研究をやっているところは少ない(明治大学情報コミュニケーション学部での研究がどのレベルまで進んでいるか存じません)ので、米国かロシアに援助を求める必要があるでしょう。あるいは、禅宗や修験道など、伝統的な宗教に教えを乞うのも一案です。
いずれにしても、そもそも、一見「荒唐無稽」に思われそうな「予知能力強化計画」に乗って来るサッカー関係者がどれくらいいるか疑問です。一笑に付されるのが関の山かもしれません。
とは言うものの、日本もいずれは、予知やテレパシーなどの「エスパー能力」の開発というものに本気で取り組まざるを得ないと思います。それは、スポーツに限らず、私たちが「逞しく」生きて行くために必要な能力だからです。こうした能力の存在は現実であり、アニメやSFだけの話ではないのです。
ただ、それを多くの人が理解するまでには、大分時間がかかりそうです。その間、「予知能力強化プログラム?!」が動き始めるまでの間、どうするか?
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実は「当座のリリーフ戦略」があります。それは、「乱数表(random number table)」を使うやり方です。能力に頼らず、「偶然」に頼るのです。
ご存知のように、「乱数表」は0から9までの数字が、完全にランダムに(無秩序でしかも等確率で数字が登場するように)並んでいる数列です。つまり、次にどの数字が来るか、まったく予測できない順番で並んでいる数字の列です。
予知能力に頼れない以上、そして、敵にはこちらの微妙なサインを見抜く「予測」能力と「キツネとタヌキの化かし合い」能力(かけ引きの能力)が備わっている以上(おそらくは幾ばくかの予知能力も備わっているでしょう)、私たちは「偶然」を味方にするしかないわけです。そこで「乱数表」が役に立ちます。たとえば、こちらがキッカーの場合、乱数表の数字が奇数なら左側に、偶数なら右側に蹴るのです。敵のキーパーにどんな癖があるかとか、こちらが蹴る方向をどのように予測しているかといったことは無視して、ひたすら偶然に従って、こちらが蹴る方向を変えるのです。
偶然に従っているわけですから、たまたま、キーパーの読みとキッカーの蹴る方向が一致してしまう確率は50%あります。しかし、キーパーの読みが外れて、キッカーのボールが見事にゴールする確率も50%あるのです。
これにアスリートの運動能力、たとえばキッカーのシュート能力やキーパーの瞬発力などがプラスされれば、勝てる確率はもう少し高くなるでしょう。つまり、公正なサイコロ(乱数表:偶然を生み出す仕組み)を導入すれば、ギャンブルの「いかさま」を排除することができるわけです。これなら、選手に実力さえあれば「お人悪」を揃えなくても、「キツネとタヌキの化かし合い」対策をしなくてもPK戦で勝てるはずです。
まあ、あくまで「つなぎ」の戦略ですし、あまり面白い作戦でもありませんね。
それよりは、アスリートの皆さんを修行僧や修験者のような一種の「エスパー(超能力者)」にしてしまう方が、はるかに面白いと思います。
それに、実際、ワールドカップで活躍している選手を見ていると、既に「この人、エスパーじゃないの?」と思うような「勘の良さ」や「強運」を感じることがあります。彼らは厳しい闘いの場を潜り抜けることで、自然とそのESPにも磨きがかかってしまったのでしょう。
と、まあ、サッカーを観ていても、ついついおバカなことばかり考えてしまう私です。
(メルマガ『富田隆のお気楽心理学』より一部抜粋)
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