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日本に辛口のNYタイムズも。世界が賞賛する日本人のW杯ゴミ拾い

数大会前から始められ、今ではワールドカップの風物詩になったと言っても過言ではない日本人サポーターによる試合後のスタンド清掃。国内では賛否両論かまびすしいですが、海外ではどのように受け取られているのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、日本に対して辛口な姿勢で知られるNYタイムズと、道徳的な報道をする機関ではないというサウスチャイナモーニングポストそれぞれに掲載された記事を翻訳・要約し紹介しています。

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ワールドカップの日本人清掃についての海外報道

ワールドカップサッカーで日本人が客席を清掃する姿が世界中で称賛されています。

その一方で、元東京都知事の舛添要一氏は「清掃を業とする人の仕事を奪うものだ。日本文明だけが世界ではない」と批判。

また大王製紙元会長の井川意高氏は「奴隷根性だ」とも揶揄しています。

米国のNYタイムズ11月27日は、そのような日本国内の批判も含めて報道しています。抜粋、紹介しましょう。

日本のファンは、試合後にスタンドのゴミを拾うことで高い評価を得ている。

 

しかし、この習慣は新しいものでもなければ、彼らにとっても珍しいことでもない。

 

試合終了のホイッスルが吹かれ、日本のファンたちは、コスタリカに1-0で敗れた悔しさに浸る時間を持った。

 

しかし、その瞬間はすぐに過ぎ去り、青いゴミ袋が登場した。

 

今年のワールドカップで驚きをもって迎えられた試合後の儀式の再来である。

 

ついさっきまで歓喜の歌声をあげていた日本の観客たちが、アハマド・ビン・アリ・スタジアムのスタンドを念入りに掃除し始め、周りの座席に散らばっているゴミを拾い始めたのだ。

 

中身のないペットボトル、オレンジの皮、汚れたナプキン…誰が置いたかわからないようなものばかりだ。

 

ファンたちは通路を横切り、ゴミを袋に入れては、笑顔で(明らかに喜んで)スタジアムの従業員に手渡して去っていった。

 

「東京から来たという服部さん(32歳)は、瓶やチケットの半券などスタジアムのゴミを袋に詰めて持っていた。

 

「この場所は私たちのものではないので、使うならきれいにしなければなりません。そして、たとえ私たちのゴミでなくても、汚れていることには変わりないのだから、きれいにするべきだ」

 

ワールドカップ期間中、観客が冷静に清掃活動を行う姿は、アメリカなど他国の観戦者を魅了した。

 

アメリカでは、ベタベタのソーダがこぼれ、ポップコーンの袋が倒れ、ピーナツの殻の小山があっても、通常のスポーツ競技場の体験の一部として受け入れられることが多い。

 

しかし、日本では、特に公共の場での整理整頓は美徳として広く受け入れられている。

 

試合会場にいた日本人は、そのような習慣は家庭で教えられ、学校でも強化されてきたと述べている。

 

スタジアムのような共有スペースの清掃は、個人の責任となり、そのために雇われた労働者がいるわけではないことが多いのです。

 

「日本人にとって、これはごく普通のことだ」と日本チームの監督である森保は言った。「場所を去るときは、前よりもきれいにして去らなければなりません」

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日本の掃除の様子を撮影した動画や写真はSNSで拡散されました。しかし、それらを共有しているのはファンだけではない。

 

先週、FIFAがドイツに大逆転勝利を収めた日本チームのロッカールームの写真を掲載した。そのロッカールームは、ご存知の通り、ピカピカだった。

 

日本人に触発された他チームのファンも、試合後に掃除をするようになった。

 

東京のファンで、現在ドーハを拠点に客室乗務員として働いている岸川さんは、「私たちは、これを伝染させることができると信じています」と語った。

 

「誰かに掃除を押し付ける必要はありません。でも、もし始めたら、尊敬の念を示す良い見本になれるかもしれません」と。

 

日本のファンにとって、突然の世界的なスポットライトと賞賛の声は、誇らしさと面白さと恥ずかしさが混在している。

 

日本の文化が肯定的に描かれていることに、多くの人が喜びを感じている。

 

しかし、この騒動に戸惑う人もいる。また、ある特定の行動が日本国民全体を代表しているのではないかと、不快感を抱く人もいる。

 

ほとんどの日本人は自分のゴミは自分で捨てるが、今回のワールドカップで他人のゴミを拾って歩いたのは、ごく一部のファンだけだったのだ。

 

日本サッカー協会は日曜日、英語、日本語、アラビア語で「ありがとう」と書かれた数百個の青いビニール袋を配ったが、数千人のファンのうち、この幅広い活動に参加したのはわずか数十人だった。

 

横浜から来たというファンの天野さんは、「実は清掃に誘われたのですが、やりたくなかったんです」と語った。「私たちはただ試合を楽しみたかっただけなのです」

 

彼女は、ファンが目立つようにきれいにすることは、海外での日本のイメージアップにつながるだろうが、その動機が完全に純粋なものであるかどうか疑問に思うと述べた。

 

「スポットライトを浴びることを楽しむために、あの集団に加わって清掃している人もいると聞いています」と彼女は言った。

 

元東京都知事の舛添要一氏は日本人旅行者は現地の文化や習慣をもっと認識し、すでにスタジアムの清掃のために雇われている人がいることを尊重する必要があると提言している。

 

「日本の文明だけが世界ではない」とも書いている。

 

ところが、この掃除はカタールでは評価されているようだ。

 

日本がドイツに勝った後、スタジアムのスタッフはボランティアのグループを率いてスタンドを片付けているファンのところに行き雄たけびをあげて感謝した。

 

レバノンのベイルート出身のボランティア、ジャジバ・ザグルールさんはモロッコやサウジアラビアのファンも日本のファンに倣って試合後の清掃をしていることに気づいたという。

 

「それは雪だるま式に増えていくんです」

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解説

日本国内の反応も含めて、全体的にはやはり肯定的に日本人サポーターの清掃活動を報道しています。日本に対して辛口であるNYタイムズにしては珍しい事です。

次はアジアの代表的な英字新聞、香港のサウスチャイナモーニングポストです。

日本人の試合後に清掃する姿を紹介した後で次のように記事をまとめています。

日本のスポーツファンの良い習慣は、他では真似できない

 

日本のファンは、その清潔さだけでなく、社会意識、市民としての誇り、そして故郷や国から遠く離れていても、身近な環境への配慮を示すことで、私たちにインスピレーションを与えてくれています。

 

私たちは習慣として、子供たちに自分の汚物は自分で片付けなさいと教えていますが、その原則が他人が作った汚物の片付けにまで及んでいるとしたらどうでしょう?

 

これこそ、究極の「無私」の姿ではないでしょうか。なぜなら、環境に関して言えば、何が「私たちのもの」で何が「彼らのもの」なのか、境界線はないはずだからです。

 

多くの香港人は、日本人と同様、靴を玄関に置く習慣があります。しかし、香港では、この「清潔」という概念は、個人的な空間のみに適用され、それ以外の空間には適用されないようです。

 

香港を愛し、自分の家のように手入れをすること以上に、香港が観光客を温かく迎え入れ、健全な場所であることを世界に示す方法があるでしょうか。

 

今度、サッカーの試合やコンサート、あるいは先月のラグビーセブンスのような国際トーナメントを開催するときは、参加する香港人全員がビニール袋をいくつか持参して、イベント終了後に自分のゴミや他の人が残したゴミを片付けるのに協力すべきです。

 

政府は、この作業のために公共施設にビニール袋を提供することができるかもしれません。

 

また、学校では「清潔」を教科化し、幼少期から習慣づけることが必要です。

 

自分の街を自分の家のように大切にすることは、誇りを示すだけでなく、私たちの生活そのものに貢献することでしょう。そうなれば、香港人が無作法で利己的であることを非難する人はいなくなるはずです。

 

そして、香港は観光に向かない街だと敬遠されることもないでしょう。

 

スポーツと同じように、人生においても、私たちは皆、自分たちの街と国を代表する誇り高い存在にならなければならないのです。

 

すべての香港人にとって、最も優れたパフォーマンスとは、たとえ世界が見ていなくても、自分がどれほどこの街を大切にしているかを世界に示すことでしょう。

解説

この香港、サウスチャイナモーニングポスト紙は、中国共産党から一定の距離を置いています。とくに道徳的な報道をする機関ではありません。

それがこのような報道をするのは、純粋に日本人サポーターの清掃する姿が貴いものと映ったのでしょう。 (この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』12月11日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)

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image by: Fauzan Fitria / Shutterstock.com

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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