デパートといえば地下に食品、1階に化粧品や雑貨、その上にハイブランドのフロア、紳士服のフロア…などフロアごとにきっちりと分かれているイメージがありますよね。その既成概念をとっぱらって話題となっているデパートがあります。今回のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』では、MBAホルダーの理央 周さんが、 あべのハルカスにある近鉄百貨店本店の取り組みを紹介しています。
この記事の著者・理央 周さんのメルマガ
なぜ、あべのハルカス近鉄本店は婦人服売り場で食品や雑貨を売るのか?~売り伸ばしにつながる発想のヒント
大阪のあべのハルカスにある近鉄百貨店の本店が、婦人服フロアを大幅に変えることで、ブランディングを刷新しようとしています。
百貨店としては珍しいのですが、本館の4階に116平方メートルの、「ファーレ・アナザークローゼット」、ウイング館5階に237平方メートルの、「いろどりマルシェ」の三つの新売り場を、婦人服フロアに開設したのです。
● 【記者の目】百貨店衣料品フロアの活性化策 新プレイヤー、新カテゴリーで(繊研新聞より)
衣料品だけでなく、生活雑貨や食品を扱うフロアを2箇所作ったのです。
考えてみれば、デパートでのフロアは、高級ブランドのフロア、その上にキャリア系の婦人服、その上にはまたカジュアルな婦人服といった感じで、1フロアに婦人服、紳士服、子供服といった、大きなカテゴリーごとにフロアが分かれてますよね。
私もよくデパートに行くのですが、最近では食品を買う時はデパ地下で、食事に行くときは上のほうの階にいく、という感じで、食品も洋服も階を跨いで、同じ日にわざわざどちらも買いにいく、ということはそれほど多くはありません。
でもこの近鉄のように、1つのフロアに婦人服、食品や雑貨が売っていると、婦人服を買いに来た人が雑貨の場所に行ったり、食品目当ての人が婦人服を買いに立ち寄ったりと、フロアを回遊することも増えて、売り伸ばしにつながりますよね。
お客様の立場で考えてみると、あちこち見て回る楽しさも感じることだと思います。
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ファストファッションのブランドが台頭したり、イオンやららぽーとなどの、大規模ショッピングモールができてきたりと、ここのところ百貨店という業態だけで、他の商業施設と差別化をすることが難しくなっています。
それに、若い顧客層を取り入れたい、という戦略もあいまってこのように、旧来の婦人服フロアで雑貨や食品も販売しよう、という取り組みになったのでしょう。
小売業では、お客様のその店への訪問頻度が、多ければ多いほど売り上げにつながりますし、その店での滞在時間が長ければ長いほど、よく売れます。
これはネットもリアルも同じです。
百貨店で売っているもので、一番頻度多く買いに来るものはやはり食品ですし、食品を買いに来た人が、1フロアに雑貨や服が置いてあれば、回遊性も上がるし、滞在時間も増えますよね。
お客様の立場からしても、色々な種類の商品を見る楽しさと便利さがあります。顧客視点からしても、興味のある取り組みです。
この取り組みにより、外商顧客からの売り上げ増や、ブランディングのアップなどに貢献できるとのこと。
この事例から学べることは、「既成の考え方にとらわれてはいけない」ということです。
デパートの婦人服売り場には、婦人服だけを売る場所に決まっている、と思い込んでいたら、この発想は出てきません。
また、「婦人服売り場で何を売ろうか?」という思考回路からだと、顧客の本当に欲しい、「買う楽しさ」を提供できなくなります。
顧客が本当に欲しいものは何か?そのために何ができるか?という発想のステップが、このような新しいアイディアにつながるのです。
やはり人は楽しいところに集まります。その意味でも楽しみな近鉄百貨店の取り組みです。
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