北朝鮮の元外相が昨年末に処刑されたものとみられる、というニュースが4日に報じられました。他にも5人程度が相次いで処刑された可能性があるそうです。暴君ともいえる金正恩に北朝鮮のエリートたちはついていけないのではないかと語る脱北した元北朝鮮外交官の話を、韓国在住歴30年で韓国の大学に勤務する日本人教育関係者が発行のメルマガ『 キムチパワー 』で紹介しています。
北エリート層、これ以上金正恩について行けないか
元北朝鮮外交官で脱北した太永浩(テ・ヨンホ)国民の力議員は4日、読売新聞が北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)元外相が昨年処刑されたものとみられると報じたことについて、「事実なら、北朝鮮エリート層はこれ以上金正恩(キム・ジョンウン)について行くことはできないだろう」と述べた。
読売新聞はこの日、複数の消息筋の話として「李容浩元外相と北朝鮮外務省関係者4~5人が相次いで処刑されたものとみられる」と報じた。李元外相らが処刑された時点は、昨年夏から秋の間と推定される。処刑の理由は明らかではない。
太永浩議員はこの日フェイスブックを通じて「この10年間の金正恩政権を振り返ってみれば、任期前半期の2012年~2017年には無慈悲な処刑が多かった。しかし、その後からは黄炳瑞(ファン・ビョンソ)元人民軍総政治局長解任など左遷あるいは回転式人事交代がほとんどで、高位幹部に対する処刑はあまりなかった」とし、「2019年の米朝ハノイ会談が『ノーディール』で終わった後、米朝交渉に関与した多くの外交官が消えたが、大部分は『農村革命化』で田舎に送られたりはしたが処刑まではいかなかった」と話した。
太永浩議員は「もし李容浩を本当に処刑したなら、北朝鮮外交官に大きな心理的動揺を起こすだろう」とし「李容浩は北朝鮮外交官の間で金正恩政権に忠実で合理的な交渉派、実力派と評価されていた。金正恩の父親である金正日の外交策士でもあった。1994年ジュネーブ米朝高官級会談から2018年ハノイ会談まで、北朝鮮と米国のすべての交渉で李容浩はブレーンの役割を果たした」と述べた。
続いて「李容浩の父親は3階書記室の室長だった。3階の書記室長といえば、韓国で言えば大統領の総務秘書官のポストであり、金正日家庭の執事のポストだ。李容浩の父親である李明帝(リ・ミョンジェ)3階書記室長は、金正恩の実母、高英姫(コ・ヨンヒ)氏とも縁故が深く、金正恩を幼い頃から面倒を見ていた」とし、「ところで、そんな李容浩までもが処刑された?何の罪なのかは分からないが、本当に処刑されたとすれば多くの北朝鮮エリート層がこれ以上金正恩と共に行くことはできないと心の中で決意するだろう」と述べた。
太永浩議員は「ただ李容浩処刑説に対する事実確認を最優先にしなければならない」とし「李容浩とその同僚が処刑されたなら、金正恩政権内で交渉派の立場はさらに狭くなったという意味だ。それに見合う韓国の対北朝鮮戦略も綿密に立てなければならない」と述べた。
ちなみに太永浩議員と李容浩元北朝鮮外相は04年から07年まで、英ロンドンで一緒に勤務した縁がある。太永浩議員は「李容浩処刑説が個人的には事実でないことを願う」と言っている。
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