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ゼロコロナ終了で暗雲漂う日中関係。国益を顧みない岸田首相の愚策

ゼロコロナ政策を転換した中国での感染爆発を受け、岸田首相は水際対策の強化を表明。対して中国大使館は日本人へのビザ発給を停止する報復的な措置を発表し、年明け早々から日中関係に暗雲が漂っています。ゼロコロナが日本を守ってもいると主張しこの事態を予見していたのは、メルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』著者で、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さん。ネット世論やアメリカに動かされるように対策を決めた岸田政権に嘆息。国内の感染状況やアメリカでの新たな変異は棚に上げ、国益を顧みていない状況は安倍政権以下と呆れています。

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早速暗雲漂う日本と中国の関係から、岸田政権は何を得ようとしているのか

中国のゼロコロナ政策は単に中国の国内だけではなく、日本にとっても防波堤だ。このメルマガでは何度もそう書いてきた。そして不人気のゼロコロナ政策は、西側メディアが国内の不満を訴える抗議者の声を後押ししたことも手伝い、厳しい封鎖措置の緩和へと大きく舵を切ったのである。

するとたちまち感染爆発が起き、あとは「弱毒化を信じる」という一種の「神頼み」のような状態に陥った。感染爆発がおきることは、本稿で何度も「こうなるからゼロコロナ一択なんだよ」と説明してきた。感染拡大の初期にこれを放置していたら次々に変異した株が続々と日本に渡ってきたことだろう。それが日本にとっても防波堤と言った理由だ。

さて、この事態に日本の岸田政権は早速「中国からの渡航者にコロナ検査を義務付ける」と水際対策の強化を発表した。

思えば3年前、当時の安倍政権は中国に対して厳しい姿勢を打ち出しながらも、自国経済にとってインバウンドと中国人観光客がどれほど大切かを自覚していた。だからこそネットを中心に「中国人を入れるな」、「中国への忖度か」と批判されても、安易な人気取りに走ることはなく国益に忠実だった。

それを考えると現政権は底が一つ抜けてしまったようだ。そもそもウィズコロナで勝ち誇ったようにゼロコロナ批判をしていたのはどの国だったのか。しかも、日本では12月27日、1日当たりの死者が初めて400人を超え、大晦日の31日には、新規感染者が全国で10万6412人だった。とても褒められた状況ではないのだ。

明らかに人気取り──といってもネット世論に対するものだが──とアメリカへの忖度が目的なのだろう。真っ先に中国人への対策を強化したのはアメリカであり、台湾も続いた。要するに嫌がらせだが、それを主導するアメリカの感染状況も決して楽観が許されるほど良くはない。

中国の感染拡大はオミクロン株の「BA・5」が主流だが、アメリカでは、すでにワクチンの効果が未知数だとして恐れられる「XBB・1・5」が広がり、40%が置き換わったという報道──NBCがCDCの情報として伝えた──もある。「XBB・1・5」は昨年11月ごろから広がり始め、警戒されてきた。つまり侵入を防ぐというのならば、よほど「XBB・1・5」に注目すべきではないかと思うのだが……。

一方の中国は、もう腹をくくったということなのか、観光を解禁する方向をはっきりと打ち出した。中国国家移民管理局は1月8日から移民管理政策措置を最適化するとウェブサイトを通じて発表(昨年12月27日)している。これに敏感に反応したのは、観光地として世界で高い名声を獲得している国々だ。

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ウェブ版『人民網 日本語版』によれば、〈フランス、タイ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、デンマーク、ノルウェー、オランダ、スペイン、ポルトガルなどの大使館・観光当局が相次いで微博(ウェイボー)に「中国人観光客を歓迎する」という投稿を行った〉という。彼らの素早さには脱帽するしかない。

観光客を取り込み厳しい競争を勝ち抜こうとするフランスやタイと比べて、対照的な岸田政権の狙いは何なのだろうか。

日本が経済成長を続けるためにはインバウンドと、その中心にいる中国人観光客が死活的に重要だという事情は、安倍政権の時代から大きく変わっていない。

このメルマガでも何度も書いてきたが、現在の中国の対日政策はかつてないほど日本に宥和的になっている。

米中対立で日本経済の重要度が相対的に高まったという事情もある。一方、中国の国民のなかにあった、日本に対する厳しい感情が薄まったことも見逃せない。

いずにせよ、かつてならば烈火のこどく怒った問題にも、中国共産党の反応は概して抑制的である。

しかし、これも繰り返し指摘してきたことだが、中国の融和的態度にも限界はある。また一度「反目」する関係に陥れば、坂を転がり落ちるように悪化するという問題も日中は抱えている。

事実中国は、昨年末の日本の動きに、かなり神経質になったことがうかがえる。

象徴的な記事がある。『人民網 日本語版』(2022年12月30日)の〈米国に「追随」し、チャンスと試練を取り違えた日本外交〉であるーー

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年1月8日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: 首相官邸

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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【著者】 富坂聰 【月額】 ¥990/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

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