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「プーチンはクレイジーだ」中国が露を見限り欧米との関係修復を図りはじめている

1月24日で開戦から11ヶ月となるウクライナ紛争。西側諸国はウクライナへのさらなる武器供与を表明していますが、ロシアはこの先どのような動きを見せるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、最新の戦局とロシア軍が「活路」を見出した戦術を紹介。さらにプーチン大統領が、何があっても敗戦だけは避けなければならない理由を解説しています。

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プーチンの逆襲。ロシア軍は「人海戦術」で優位に

バフムト・ソルダーの攻防戦で、ロ軍は、人海戦術でウ軍を押し切ったことで、ロ軍は人海戦術で戦うようである。今後を検討しよう。

ロ軍は、1ケ所に大量の歩兵を集めて、波状攻撃をする人海戦術で成果が出たことで、その戦術を実行し始めた。このため、ウ軍の弱い部分を見つけて、そこに歩兵での大量攻撃を実施している。

バフムト・ソルダー方面

ロ軍・ワグナー軍はソルダーを占領し、ウ軍は撤退している。ソルダーの西にあるシイル鉄道駅を中心としたエリアに陣地を作ったが、ワグナー軍はそこに攻め込み、ウ軍はT1503号主要道の西側まで後退して、今、シイルを越して、バフムトカ川の付近までロ軍・ワグナー軍はきている。

大規模な人的損害を出しても、波状攻撃でウ軍を攻めているので、どうしても人的損害を出したくないウ軍は押され気味である。

ブラホタデやクラスノ・ホラなどのバフムトの北側にもワグナー軍は人海戦術で攻撃してきている。損害も大きく、1日800人程度の戦死者を出している。負傷兵は戦死者の3倍とすると3,200人前後が戦線離脱していることになる。1ヶ月で10万人もの戦線離脱者が出ることになる。このため、ロ軍は、第2次動員が必要になる。

ロ軍兵の戦死者は5月までに22万人を超える可能性があり、戦死者数を隠すために移動式火葬場を発注したともいう。戦死者数は1ヶ月で2万5,000人であり、5ヶ月12万人であり、今までの戦死者数の10万人であることから頷けることになる。何人死なすのであろうか?

バフムトの南側のクリシチウカ、アンドリウカへもワグナー軍が攻撃し占領したようであり、イワビフスクにワグナー軍が攻めてきたという。このまま行くと、バフムトが包囲される状況であり、そろそろ、バフムトからウ軍を撤退させる可能性が出てきた。

この地域に、ロ軍とワグナー軍が兵力を集めて、人的被害を無視した攻撃で戦局を開くようであり、他のドネツク方面の攻撃がなくなっている。

ロ軍の勝てる方法は、損害無視の人海戦術しかないようである。それを見つけたという段階であり、砲弾も一部地域に優先的に補給しているようである。砲弾の枯渇しているので、攻撃地を絞っているようだ。

このため、ワグナー軍の経費は非常に高く、人海戦術での攻撃では、ロシア人の動員で安い人員をかき集めるしかなく、プーチンもロ軍の立場をとるしかない。ワグナー軍のフリゴジン氏の立場でロ軍全体を貶すことにプーチンも付いていけなくなっている。

このため、プーチンはプリゴジンン氏と対立関係のペトロフスク州のベグロフ知事と会い、プリゴジン氏の意見で解任したラビン大将を陸軍参謀長に任命している。

このため、プリゴジン氏を支持する強硬派は、クーデターなどをする可能性もあり、逆にプリゴジン氏を暗殺になる可能性も出てきた。

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スバトボ・クレミンナ攻防戦

一歩一歩と前進しているが、ロ軍も大量の人員と装備を集めているので、ウ軍も前進するスピードが遅くなっている。ロ軍を押しているが、攻撃時の損害を少なくするために、無理をしていない。

ソノフイの高地を制圧して、スバトボ市街地を見通せるポイントを押さえるべく、攻撃をしているが、ロ軍も分かっているので、防備を固めている。塹壕を作り防衛しているが、精密砲撃で、損害が大きくなっている。

クレミンナ包囲網も徐々に狭まってきているが、ロ軍は防御に集中して、攻撃をしなくなっている。停滞状況である。

ロシアとウクライナの状況

ウ軍は大規模攻勢ができずに、停滞している。一方、ロ軍は200万人動員計画もあり、ウクライナより多い人的資源を使い人海戦術で、押しきる戦術を見出した。現在、戦争の主導権は、ロシアに傾いたようである。

このため、プーチンは、ゲラシモフ総司令官に、「3月中に東部ドンバス地方を占領して、戦争を止める」とした。中国の習近平主席からの手紙で、「いつまで戦争をしているのか。戦争終結までのスケジュールを明確にしてほしい」ときた。

このため、メドベーシェフを送り、対話を促進するとしたが、それもできずに、No..2のパトリシェフも中国に送り釈明している。

しかし、直近のロシアのラブロフ外相と中国の秦外相の電話会談では、「中露関係の成り立つ基礎」として、「同盟しない、対抗しない、第3国をターゲットとしない」という「3つのしない」方針を提示したという。

これは、中国はロシアと同盟関係にならないし、敵対もしないし、中露で米国を敵対視しないということであり、明確に中国は、ロシア離れになってきた。中国は、ロシアのプーチンをクレイジーだと言っているようであり、明確に欧米との関係修復方向になった。

このため、ロシアは、同盟国通貨と思い、貯め込んだ手持ちの人民元を売り、ルーブルに変えた。しかし、生活必需品の供給を中国に依存するロシアは、それ以上の対抗処置は取れない。

このような中国の動きを見て、セルビアのヴチッチ大統領は、「私たちにとって、クリミアはウクライナであり、ドンバスはウクライナだ。今後もそのままだ」と発言。ロシアに近いセルビアも、明確にロシア離れになっている。セルビアは、ウクライナに電源修理の機器を援助したことでウクライナ側と明確にした。

同盟国と思い、ワグナーはセルビアで、要員募集をしていたが、セルビア人が国外の紛争に参加するのは違法だ。このため、セルビアのヴチッチ大統領は、憤慨して「なぜワグナーは、私たちの規則に違反すると知りながら、セルビア人に呼びかけるのか」とした。

イラン外相も「イランとロシアの関係は良好だが、ロシアによるクリミア半島・ルハンスク州・ドネツク州等のウクライナ占領地の併合を我々は認めない。我々は国際法の下で各国の主権と領土保全を認めている」とした。しかし、ドローンとSu-35の交換は行うようである。政治的にはロシアの味方ではないが、ビジネス上での関係はあるということであろう。

このような状態になり、国際的孤立が深まるロシアも戦争を終結させないといけない状態になってきた。

このため、150万の軍隊を作り、人海戦術でウ軍を圧倒することであり、今、ロシアのできることは、国民を戦場で大量に殺しても、戦局を有利にして停戦に持ち込むしかない。

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これに対して、ウクライナは、ロ軍の人海戦術で停滞した戦況を転換するために、レオパルト2戦車と装輪装甲車、F-16戦闘機、アパッチヘリやATACMSなどの長射程爆弾などの迅速な攻撃ができる兵器・弾薬やロ軍のインフラ攻撃防止の防空システムの供与を欧米諸国に要請している。

この要請に対して、「前線を突破する必要がある。詳細は言えないが、現下の状況では、われわれはそうした必要性を認めている」と、コリン・カール米国防次官(政策担当)は、記者団に語った。「この挑戦をウクライナがどう克服するか、われわれは熟慮しなければならない」と。

このような欧米攻撃兵器がウクライナに提供されると、ロシアは負ける可能性が出る。このため、「通常戦争での核保有国の敗北は、核戦争の引き金になり得る」とロシアのメドベージェフは、けん制の発言をしている。

ウ軍は、ポーランドから提供された200両のPT-91などの攻撃兵器を温存してきたので、戦局転換の攻撃をしようとしたが、カール米国防次官から、米国による新たな兵器供給と訓練が完了するまで、ロ軍に対し大規模な攻撃を展開することを控えるよう提言された。

人的損害を少なくして、効果的に戦局を転換した方が良いということである。このため、ウ軍は攻撃に必要な兵器や弾薬のリストを作り、武器供与の第8回支援国会合が20日、ドイツ西部ラムシュタイン米空軍基地で開かれたが、その会合前にリストを提出した。

この会合で、オースティン米国防長官は会議の冒頭で、ウクライナ紛争に転換点が訪れていることを宣言した。防御から攻撃への転換という意味だ。

しかし、ドイツは、米国がM1エイブラムス戦車を供与しない限り、レオパルド2戦車の提供を承認しないという。ドイツのボリス・ピストリウス新国防相も、この件はショルツ首相次第だと指摘した。

政治資金援助をロシアから受けていたので、ショルツ首相はロシアからの非難を受けたくないので、ドイツの認可を取らずに、ウ軍に提供してほしいようである。

このため、ポーランド政府は、ドイツの許可なしにレオパルド2戦車をウ軍に供与するとした。

そして、ホーランドの他に、フィンランド、デンマーク、ポルトガルは既に供与を表明しているが、チェコとスロバキアも供与すると表明した。これらにより、レズニコフ国防相が要請した300両のレオパルド2戦車が、手に入る目算は立っている。

後は、ドイツの承認かドイツの承認なしの提供かのどちらかでの実行が必要なだけになっている。

フランスは「ルクレール」戦車の提供を表明、スウェーデンはCV90装甲車、アーチャー自走砲の供与、英国は精密誘導弾ブリムストーン600発を提供するとした。デンマークはカエサル自走榴弾砲19台の提供、オランダはF-16戦闘機の供与を検討し、多数の国から大量の攻撃兵器の供与をウ軍は受けることになる。

特に、射程150kmのGLSDBが供与されると、ロシア国境地域まで届き、軍物資集積所を破壊できることになる。また、ロ軍は、物資集積所をこのロケット弾の届かない場所に移すことが必要になる。

このように、大量の攻撃兵器がウ軍に渡ると、ロ軍の勝ち目がなくなるので、最新鋭のT14アルマータ戦車の戦場投入した大規模攻勢を近く始めるようである。キーウへの再攻撃もあるかもしれない。

そして、このような攻撃兵器がウ軍に渡っても、ミリー米統合参謀本部議長は、「今年中に、ウクライナの隅から隅まで軍事的にロ軍を駆逐することは極めて難しいだろう」とした。2024年まで戦争は続く可能性がある。

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それでも、ロシアの戦争犯罪を裁く国際特別法廷を設置することをEU会議で決議し、EUの特別検察官からも、国際的な特別刑事検察官を設けるべきとの意見が出ている。しかし、国際的な法廷設置には、国連の決議が必要であり、まだ道のりは長い。しかし、ロシアが敗戦になると、プーチンを始め、今のロシアの指導者は、すべて死刑になることが確定している。

このため、トルコのエルドアン大統領は、ゼレンスキー大統領との電話会談で、ロシアとウクライナの仲裁を行うという申し出を改めて伝えた。ロシアとしては、ドンバスとクリミアを確保することで、停戦したいようである。戦争を止めるには、クリミアとドンバス確保で諦めるしかない。その他の地域からの撤退でも、戦争には負けていないとするようだ。それと、停戦で国際法廷を阻止するしか、ロシア指導者の生きる道はない。

そして、キッシンジャー元米国務長官も、停戦の条件として「ロシアが侵攻前の境界線に達したとき」というので、ロシアも戦争を終結させるために、その辺りを目指すしかないようである。

もう1つが、ベラルーシのプリビトキ空軍基地にS300が設置されていて、このS300から発射されたミサイルは、キーウまで2分しかかからない。防空ミサイルでは撃ち落せない。

このため、ウ軍は、このS300を破壊する必要になる。しかし、ロ軍の早期警戒機やMIG31などの戦闘機、ka-52戦闘ヘリなどがいる。ウ軍ミサイルが空軍基地に着弾すると、ベラルーシも参戦するしかなくなる。そして、キーウへの大規模攻勢になる可能性もあり、このS300は、要注意である。

もう1つ、戦争の推移では、ウクライナの航続距離1,000kmの無人機「キジバト」やTu-141などがあり、これらから守るために、モスクワのプーチン大統領官邸から10キロの地点に防空システムを設置した。

徐々にロシア国内を攻撃する手段がウ軍も独自で持ち始めたことで、「目には目を、歯には歯を」ということになる。インフラ攻撃には、インフラ攻撃。キーウ攻撃にはモスクワ攻撃になる。

余談であるが、現在、10人弱の日本人義勇兵がウ軍で戦っている。多くは元自衛官であり、米英の義勇兵よりも信頼厚い。まじめな戦いぶりと生活態度が高く評価されているようだ。

この義勇兵で、日本の評価も高いことになっている。ガンバレ日本人義勇兵たちよ。

世界の状況

米国は、傭兵企業「ワグナー」を「国際犯罪組織」に指定した。

もう1つ、心配なのが、イスラエルとサウジが連合して、イランとの中東戦争である。イランは、Su-35戦闘機を手に入れて、シリアでの戦争と同じような通常戦争でも負けないと見たら、イスラエルやサウジに攻撃を仕掛けることになる。

イスラエルは、在イスラエル米軍の30万発の弾薬をウクライナに送ることを了承した。イランのドローン対応策にもイスラエルは積極的に機器の提供を開始した。

米国は、イランのドローン工場の破壊を依頼した可能性もあり、この2ヶ国の戦争になると厄介である。

(『国際戦略コラム有料版』2023年1月23日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: 279photo Studio / Shutterstock.com

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