日本をはじめ豪州やカナダ、シンガポールなど環太平洋の国々が参加するCPTPP。そんな協定が今、大きな課題に直面しています。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、CPTPPの何たるかを解説するとともに、直面しているという課題を紹介。その上で、この協定で求められている役割を果たせない日本に対して苦言を呈しています。
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)が直面している大きな課題
先日の岸田首相・バイデン会談で話合われた一つがCPTPPです。
CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)とは、日本がリーダー的な役割を担っている多国間の貿易協定です。
加盟国はオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムです。
もともとアメリカを含む12カ国で締結する予定(TPP12)だったのが、トランプ大統領が離脱を決定。その余波で全てが白紙に戻りそうだったのを安倍首相当時の日本が主導的にしてまとめた経緯があります。
このCPTPPは、経済成長が高い国々が多い事もあって注目を浴びています。
2021年には英国も加入を申請しました。また昨年には中国と台湾も加入申請しました。
これについて香港のサウスチャイナモーニングポスト紙が2023年1月18日記事で論じていますので抜粋、紹介しましょう。
「日本はアメリカのCPTPP参加を望んでいる。しかし『政治的に弱い』バイデンは興味を示さない」
岸田首相はワシントンでバイデン氏と会談した。会談後の共同記者会見で岸田氏は環太平洋パートナーシップ包括的・発展的協定(CPTPP)への参加を米国に改めて促した。
岸田氏は、米国にCPTPPへの参加を再考するよう繰り返し要求している。藁をもつかむ思いであるように見えると、あるアナリストは語った。
英国が加盟を申請し、台湾も中国も加盟希望している。なぜ米国が加盟しないのか、という思いがあるのだ。
中国は2021年9月に正式な加盟申請書を提出しており、台湾の申請書をわずか6日先取りしている。どちらの申請書についてもまだ決定していない。
もし台湾がグループに迎え入れられれば、台湾にとっては大きな後押しとなるが、中国にとっては挑発行為と映るのは間違いない。
解説
日本はCPTPP発足の経緯および加盟国の中での経済的大きさからリーダー的な立場にあります。
そのCPTPPに中国と台湾から同時に加盟の申請があったのです。どちらかを認めるのか、どちらも認めるのか、非常に重い決断です。日本の安全保障の問題もあり、米国の関与が欲しいのでしょう。
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しかしCPTPPに対して米国は冷淡です。記事を続けましょう。
しかし、ホワイトハウスのカリーヌ・ジャンピエール報道官はその後、米国は独自のインド太平洋経済枠組み(IPEF)に注力しているため、CPTPPは選択肢ではないと記者団に語った。
しかし、たとえバイデンがCPTTP貿易協定への参加に関心があったとしても、バイデン大統領は「政治的に弱く」CPTPPを押し通せる可能性は極めて低い。
安全保障と政治に関しては日米の意見は一致しているが、経済と貿易に関しては、必ずしも一致しているわけではないのである。
焦点は中国本土や台湾の加盟が認められるかどうかに移っている。
東京大学先端科学技術研究センターの山口亮特任助教はいう。「もし中国がCPTPPに参加するために改革を約束し続けるなら、中国を排除するのは難しいかもしれない。特に他の加盟国の過半数が納得するのなら」。
解説
米国の参加が見込めない現在、日本がリーダーシップをとらなければなりません。
中国は多くのCPTPP締約国とはまったく異なる経済体制を採用しています。しかもGDP世界2位、軍事大国でもあります。その受け入れはCPTPP加盟国でも賛否があるでしょう。
問題は国際的な枠組みのリーダーシップをとる事に日本が慣れていない事です。No.2とNo.1では全く違う能力が必要となるからです。
これを機会にこういった問題に対する社会的な議論があってもよいかと思います。
PS
中学、高校、大学でこのような議論をする授業があれば日本の教育も変わっていくかもしれません。
執筆後記
日本は全員一致で集団で動くことが得意です。
強固に反対する人やグループがいると、その人をなだめて全員が一致できる妥協点を見出します。ところが、現在は意見が完全に割れる問題が多いです。コロナもそうです。
「多数決に従う」のが民主主義ですが、日本はまだ感覚的に慣れていない気がします。
結局、「全員が消極的に一致できる点」でしか行動できまません。「当面様子を見ましょう」といった決定になりがちです。
このあたりも日本社会の変わっていってほしい点です。 (この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』1月22日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
社会の分断化を推し進める「バランスを欠いた報道」を見極めるために
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