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イランにミサイル攻撃か。中東に波及するウクライナ戦争の火の手

ようやく重い腰を上げ、主力戦車のウクライナへの供与決定を発表したドイツ。他の欧米諸国からの供与分も含め300両以上の戦車がウクライナへ送られるとの報道もありますが、今後戦局はどう変化してゆくのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、プーチン大統領が実現を狙う「ロシアにとって有利なシナリオ」を推測。さらに米中の今後の関係が、ウクライナ戦争の行く末を大きく左右する理由を解説しています。

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ロ軍の人海戦術に対抗し、ウ軍に戦車「レオパルト2」供与決定。今後の戦況を予測する

ロ軍が人海戦術でウ軍を押し、それに対抗するためにウ軍に欧米戦車が供与されることになった。今後の戦況を検討しよう。

ロ軍本体も、1ケ所に大量の歩兵を集めて、波状攻撃をする人海戦術を実行し始めた。ウ軍も対抗上、戦闘員を集めているが、人命重視のウ軍は押されている。ロ軍より優秀な兵器が必要であり、ゼレンスキー大統領は、欧米戦車、欧米戦闘機、長距離弾道弾などを切望していた。

この内、欧米戦車の供与が決まった。ロ軍はウ軍に戦車到着までに大規模攻勢を仕掛けて、ウ軍を攻撃する必要になっている。

バフムト方面

ロ軍・ワグナー軍はソルダーを占領し、ウ軍は撤退している。ソルダーの西にあるシイル鉄道駅を中心としたエリアに陣地を作ったが、ワグナー軍はそこに攻め込み、ウ軍はT1503号主要道の西側まで後退した。

その後、バフムトフカ川までロ軍は来たが、その渡河でロ軍は大損害を出して、補充が効かなくなり、そこで停滞している。渡河するために浅い場所を選んだが、そこがボトルネックになっていて、ウ軍砲撃隊に狙われたようだ。やっと、ウ軍の防衛体制の準備が整い、攻撃を止めることができたようだ。

ブラホダテやクラスノ・ホラなどのバフムトの北側にもロ軍は昼夜の攻撃を人海戦術で実施してくる。ウ軍は防戦しているが、疲労困憊状態であり、一層の増援が必要になっている。この少し西のパラスコビウカにもロ軍が前進してきた。しかし、ここでも人員の損害が大きく、人員補充ができなくなったのか、攻撃が鈍ってきた。

バフムトの南側のクリシチウカ、アンドリウカへもロ軍が攻撃・占領して、西にあるヴァフレダールにロ軍が攻めてきたが、ここはウ軍が防衛している。

ここで止めないとコンスタンティニフカを取られる。コンスタンティニフカは、バフムトへの補給路上であり、ここを取られるとバフムトへの補給が難しくなる。このため、執拗にロ軍は攻めてくる。そして、まだ南側のロ軍は、人員補充が効いているので、人海戦術攻撃を止めない。

もう1つ、ロ軍は、地上部隊に航空支援もしているが、多数のヘリや攻撃機が撃ち落されている。空軍も損害無視の航空支援になってきたようである。1日でロ軍は、1個大隊程度の兵員を失っているが、気にしないようで、どんどん部隊を投入している。

その結果、ワグナー軍の約5万人の戦闘員のうち、現在、前線で戦っているのは1万人だけになり、残りはすべて殺されるか、行方不明になるか、脱走するか、投降したという。それでも攻撃しているので、その内、ワグナー軍はロ軍に吸収されることになる。

その大きな損耗で、ロ軍とワグナー軍が攻撃の戦局を開いたようであるが、ドネツクのブレホダールにロ軍海軍機械化歩兵部隊が攻撃したが、ウ軍機甲部隊の反撃で大損害を出したようであり、撤退するロ軍を追撃して、パブリフカを奪還した。

ロ軍の勝てる方法は、損害無視の人海戦術しかないようであるが、逆に、それに対応したウ軍の人的被害の少ない防御体制が確立していない段階である。このため、ウ軍は苦しくなっている。

ゼレンスキー大統領も、前線の状況は依然として「極めて深刻」であり、東部ドネツク州で顕著だと述べた。

大量の人員が攻撃してくるので、重機関銃などを水平に打つなどの方法を取っているが、ウ軍の機関銃場所を確定されて、ロ軍の砲撃を受けて人的損害が出ている。

攻撃場所を自在に変えられるゲバルト対空戦車や歩兵戦闘車などの自走機関砲を使い人海攻撃をかわしながら、場所を変えられることが必要であろう。要するに、ロ軍砲撃の餌食にならないことである。

そして、ロ軍の攻撃が下火になるのは、人員の損害が大きくなり、人員補充が効かなくなる時である。そこまで、ロ軍は突撃をしてくる。

 

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スバトボ・クレミンナ攻防戦

一歩一歩と前進しているが、ロ軍も大量の人員と装備を集めているので、ウ軍も前進するスピードが遅くなっている。ロ軍を押しているが、ロ軍も反撃して、シーソーゲーム状態である。

クレミンア包囲網も徐々に狭まってきているが、ロ軍はクレミンナ南の森のウ軍特殊部隊を数倍の兵力で追い出したようである。クレミンナの市内からも追い出されたようであり、ロ軍の反撃が効果を出している。ここでも損害無視の攻撃である。

そして、ロ軍は、精鋭部隊である第76親衛空挺旅団をクレミンア南の森に配備し、守りを固めたようである。ウ軍も攻めづらくなってきた。

ザポリージャ州

カミヤンスケやチャリブネなどで、ロ軍の10人程度の分隊規模の攻撃チームによる地上攻撃が続けられている。ウ軍は撃退しているが、新しい行動をロ軍は開始したことになる。動員兵の訓練も終わり、攻撃行動ができるようになってきたようだ。

歩兵中心の攻撃であり、機甲部隊ではないので、対応方法はあるので機甲部隊を整備して、損害無視の歩兵攻撃を止めることである。

インフラ攻撃

1月26日には、ロ軍は55発のミサイルと、24機のシャヘードで攻撃したが、ウ軍はミサイル47発とドローン全機の撃墜に成功した。数発のミサイルが、ビニツィア州とオデーサ州の重要なインフラ、民間地区に着弾した。この攻撃で、11人が死亡、11人が負傷したと。迎撃率も向上して85%になっている。ドローンは100%の迎撃率である。

ロ軍も今までは、巡航ミサイルは70発程度の攻撃であったが、50発と少なくなっている。ミサイル枯渇の影響でしょうね。生産数は月10発程度であり。攻撃密度を縮小するしかない。もう1つ、2発の極超音速ミサイル「キンジャル」も含まれていた。

宇デジタル相ミハイロ・フェドロフ氏は、「ドローンハンター」が6機、すでにウクライナにあり、ロシアのドローンからエネルギー施設を守っているとした。このため、ドローンはすべて迎撃できたようだ。

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ロシアとウクライナの状況

ウ軍は、欧米兵器が到着するまでは、大規模攻勢をしないようである。一方、ロ軍は人的損害を覚悟の上、攻撃してきている。この背景には200万人の予備役がいることである。現在、戦争の主導権は、ロ軍に傾いている。

この状況を打破するためには、欧米の優秀な兵器が必要である。

プーチンは、欧米戦車などの兵器が揃う前に、ウ軍をドンバスから駆逐するしかないので、ゲラシモフ総司令官に、「3月中に東部ドンバス地方を占領して、戦争を止める」としたようである。

プーチンの命令により、ゲラシモフ総司令官は、主導権を取り戻すための新規攻勢の準備を進めており、その攻勢は早ければ2023年の2月か3月に始まる可能性があるとのこと。

ということで、ハルキウ州やルハンスク州で大規模攻撃をするようである。ヘルソン州から残存精鋭部隊と戦車などの装甲車両を集めて、ベラルーシで訓練していた動員兵と装甲車両とで構成するようだ。

ルハンスク州であれば、ウ軍が攻撃した時点で反撃して、カウンター・パンチでウ軍に大損害を与えることを狙っているようであり、ハルキウ州であれば、ウ軍の体制が整っていないので、奇襲になる。ベラルーシ軍の攻撃参加があれば、ベラルーシからキーウへの攻撃もある。

ワグナー軍の人海戦術も取り込みながら、従来の機甲兵力も組み合わせて攻撃する形になるようである。人的損害を無視したことでロ軍の攻撃方法は多様になっている。

やっと、ベラルーシで訓練していた第1親衛戦車軍の動員兵の訓練も終わり、全員がロシアに戻り、今後、どこかに配備されることになるが、機甲部隊が増加したことになる。

ウ軍は、逆にレオパルト2戦車が100両、M1エイブラムス30両、チャレンジャー2戦車が5月までには揃うことになるが、現時点でもT-72などの戦車が300両も温存していて、この300両の戦車で現状でも攻撃できるし、ブラッドレー歩兵戦闘車も、続々と届いているので、大規模な攻撃をできる状況ではある。しかし、ロ軍の大規模攻撃に対応する防御のために、ウ軍は当分、大規模な攻撃はしないようだ。

そして、ウ軍は、レオパルト2戦車と装輪装甲車が手に入り、次にF-16戦闘機、アパッチヘリやGLDBなどの長射程爆弾などの兵器・弾薬やロ軍のインフラ攻撃防止の防空システムの供与を欧米諸国に要請している。

これらが揃う春以降に大規模攻撃を行うので、当分は停滞した状態が続くことになる。F-16などの提供が遅れると、秋になる可能性も出てくる。すでにオランダがF-16の供与を打診している。

しかし、ドイツのピストリウス国防相は27日、ドイツからウクライナへ戦闘機を供与する考えはないと答えたという。F-16の承認は米国であるので、米国の考え方を知りたいですね。

もう1つ、ウ軍の無人機「キジバト」が運用開始したことで、ロシアは、クレムリン、官庁街、モスクワ近郊に防空ミサイルを多数設置した。ロシア国内の防空体制は脆弱であり、モスクワまで飛んでくることを想定しているようだ。

ロシアでは、昨年6月のセベロドネツク制圧でロ正規軍が消耗して、攻勢ができなくなり、急遽30万人の動員したが、ワグナーで戦果を上げていると宣伝でつなぎ、動員30万人の内、9万を戦線穴埋めのため訓練せずに即時投入し、残りの21万人を訓練完了して、ロ軍は正規軍主導に戻った状態である。このため、実戦兵力が充実してきている。

繋ぎ期間、プーチンは、プリゴジン氏のワグナーの要求を受け入れていたが、動員兵の訓練が終了して、もうプリゴジン氏の横暴な要求を聞く必要が無くなったことで、ロシア軍の体制も元に戻した。

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このため、ロ軍は大規模攻撃が可能な状態であり、人的損害を無視した戦闘と機甲部隊の戦闘を掛け合わせた戦いが可能になっている。そして、前線のロ軍兵には「レオパルト2の倒し方」が配られているそうだ。

戦車の数もウ軍の倍以上あり、機甲戦力も十分にある。欧米兵器がウ軍に渡る前にウ軍に大損害を与えて、停戦に持ち込むしかない。

ロシアは、ロ軍兵器の質が欧米兵器より低いことを悟り、人員の犠牲を厭わず、経済や社会への悪影響も厭わず、戦争のニーズに邁進するしかないということである。

この状況では、ロ軍が勝つシナリオは描けない。ロシアは、自国に有利な停戦しかない。ウ軍もロ軍を領土内から追い出すまでしかできない。そこで停戦になる。

ロシアは生き残れるし、現政権も国内統制ができていれば、続くことになる。国際社会からは村八分であるが、賠償を支払らわないこともできるし、プーチン政権幹部が死刑になることもない。

しかし、一番心配しているのが、核戦争になることである。もし、核兵器をロシアが使用したら、ロシア崩壊まで、欧米諸国は戦争を続けて、ロシアは完全敗北となり、プーチンをはじめ現政権幹部は全員死刑になり、欧米日軍は占領軍としてロシアを支配することになる。ウクライナへの賠償金が重く圧し掛かり、ロシアは当分非常に貧しい状態になる。

しかし、今はウ軍にとって苦しい時期であるが、ウクライナでの最強部隊である特殊作戦軍アゾフ連隊が、第3独立強襲旅団「アゾフ」に格上げされ、規模を増した。この最強部隊が、今後全面に出てくることになる。なお、本家の「アゾフ連隊」は、そのまま「アゾフ連隊」の名称であり、区別するためでもあるようだ。

なお、レオパルト2などの欧米戦車の提供国は、12ケ国である。米国のM1エイブラムス30両、英国のチャレンジャー14両、ドイツ14両、ポーランド14両、オランダ18両、ポルトガル4両、ノルウェー8両、フィンランド14両、デンマーク6両、カナダ4両、スペイン20-53両までで179両になり、レオパルト製造メーカーである独防衛大手ラインメタル社は、レオパルト139両を引き渡すことが可能と言う。レオパルト2前のレオパルト1戦車が88両で、2A4が51両であるが、大量である。これも引き渡されると、318両になり、ウ軍が要望した300両になる。

ウクライナのオメルチェンコ駐仏大使も、ウクライナに対しこれまでに321両の重戦車の供与が確約されたと述べた。

その他、フランスは、ルクソール戦車の供与を検討し、ギリシャも参加する可能性があるし、ポーランドは手持ちの200両を供与する可能性もある。ということで、ウ軍は、ロ軍の戦車より性能が良い戦車を持つことになり、戦車台数もロ軍に並ぶことになりそうである。

現時点で、ポーランドは、PT-91を30両とT-72を16両を追加供与して、レオパルト2の14両とで、60両の供与をするという。

そして、EU外務省に当たる欧州対外活動庁(EEAS)のサンニーノ事務総長は、ドイツがウクライナへの主力戦車供与を決めた背景について、「ロシアの攻撃が新たな段階に入り、軍事目標や重要インフラだけでなく、非戦闘員を無差別攻撃している」ことであるとした。

もう1つが、米国のM1エイブラムスの提供と同時であることにシュルツ首相は拘った。ロシアから多額の政治資金の提供を受けていた社会民主党内の意見をまとめる必要があったのである。

米国は、ワグナー軍を国際犯罪組織として、制裁を強化している。中国の衛星情報会社が、ワグナーに情報を提供しているので、その中国企業への取引禁止をした。衛星部品・半導体が手に入らなくなる。

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世界の状況

イラン全土(イスファハン、コイ、アザーシャフル、カラジ)の複数の軍事目標(おそらくドローンなどの兵器工場)が攻撃されているようであり、イスラエルのミサイルであると、イラン・イスラエル戦争になる可能性がある。または、クルド自治政府とすると、そこに、ミサイルを提供した国が存在することになる。

これは、どちらにしても戦争になる。欧州の戦争が中東に波及することにになる。爆発規模からすると、ドローンでの攻撃ではなく、大型のミサイルの攻撃である。複数個所へ同時攻撃されたイランは報復攻撃をするので、中東戦争になる。

それと、米軍上層部は、部下らに対し「2年後(2025年)の米中戦争」に備えるよう要請した。日本にも当然、その準備を要請しているはずであり、装備などを揃える必要がある。米軍は、弾薬製造を6倍に増やすのも、ウクライナだけではなく、米中戦争を見据えた準備なのであろう。

もし、2年後に米中戦争が起きれば、ロシアは2年間戦争を継続すれば、中国との連合軍を形成できて、勝つチャンスも出てくることになる。そう目算すると、ウクライナ戦争は、当分終わらない。

さあどうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2023年1月30日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Asatur Yesayants / Shutterstock.com

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