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April 4, 2010. Vladimir Putin, photo of the official visit as to Caracas on April 4, 2010, where he held a meeting with Venezuelan President Hugo Chávez.

独ソ戦とウクライナ戦争を同一視。プーチンの許されぬ“すり替え術”

バイデン大統領は否定したものの、ウクライナに米国製戦闘機F16の供与の用意があるとしたポーランド。数カ月後に前線に投入される欧米最強戦車群同様、実現すればゼレンスキー大統領にとって願ってもない戦力の増強は、戦局をどう左右するのでしょうか。これまでも「プーチンは『自滅』へ。欧米のウクライナ戦車大量供与が世界を激変させる」等の記事でウクライナ戦争について解説してきたジャーナリストの内田誠さんが今回、自身のメルマガ『uttiiジャーナル』で考察しています。

【関連】プーチンは「自滅」へ。欧米のウクライナ戦車大量供与が世界を激変させる

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「レオパルト2」「F16」供与でウクライナ軍は本当に強い力を得られるのか?:「デモくらジオ」(2月3日)から

覚えておられますか、もう去年になるわけですが、2月の24日というのがロシア軍による侵攻が始まった日でした。まもなく1年を迎えるということですね。

色んな方の、専門家や当事者の話の中から出てくるのが、今、ロシア軍が大攻勢を始めようとしてるのではないかということ。兵隊の数だけはたくさんいるわけですよね。30万人集めたとロシア軍も言っているわけですが、実はもっといるのではないかという話もあって、それがベラルーシあたりを通るのかどうか、攻め込んでくるということが一つベースとして考えられていますね。分からないのはそれが陽動作戦という可能性もあって、実は違うところで力を強めてくるのかなど、分からないのですが、そういう今はとにかく大変な緊張状態にあると言って良いのだと思います。

個々の戦闘とか個々の戦場でのパフォーマンスという意味ではロシア軍は基本的に負け続けてきた。今、東部戦線の方で一部ロシア軍が、ここはどうもワグネルの部隊ではなくてロシア軍の正規兵、しかも海兵とか空挺部隊とか特殊部隊というような、まあ、本物の兵隊と言いますか、そういう部隊が今はゲラシモフ参謀総長の元で動いているというか、ようやくというのも変ですが、ロシア軍が軍隊らしい動きをしている。その現れが東部戦線での比較的膠着状態と言われるような事態を生んでいる。

膠着しつつもロシア軍が常に責め続けているという感じらしいです。圧倒的に人数が少ないウクライナ側ですが、守る側はそれなりのメリットといいますか、それなりの強みもあるので、それほどウクライナの防御戦があちこち破られているという状況ではない。ただし、これからは分からないというところですね。そんな中、時期を巡って色々な話が飛び交っており、どれが本当で結果としてどういうことになるのかが分からないのですが…。

戦車の話がありましたよね。レオパルト2というね。この他にも同じレベルの戦車、ヨーロッパあるいはNATO標準のような戦車ですね。アメリカのものからイギリス、フランス、そしてドイツと。で、ドイツのものがあちこちに拡散していて、拡散先の各国がウクライナに供与するという話で、大変盛り上がっている。

ゼレンスキー大統領が300輛必要だと言った、その300輛を軽く超えるような数字が、数字としては出てきている。しかしそれが一度に揃うかというと、まずそんなことは考えにくい。ならば2月24日の開戦1周年を挟んでロシア軍が何か大きな動きを作ろうとしている、そのときに戦車隊が間に合わないということになれば、ウクライナ軍にとってはかなり厳しい状況になる可能性が生まれてしまうということですね。

それから、これもまた時期的には、案外早いのではないかという話まで出ているわけですが、アメリカ軍の、アメリカが開発した有名な戦闘機ですが、F16という。あのF15が高価すぎて、もっと安く作れて運動性能もよく、しかもマルチロールでなんでもこなせる戦闘機を、というリクエストに応じる形で作られ、そのように働いているのがF16なので、これが欲しいというのは誠に賢い選択なのですが…。

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今のところアメリカはノーだと言っているけれども、各国が持っているF16を供与する話が個々に、あちこちで盛り上がっている。戦車同士の戦いが想定されていますが、後ろに砲兵がいたり、戦車がぶつかる前にその砲兵を叩く空軍が必要だったりする。となると、大決戦みたいなものがあるとイメージした上でウクライナ軍に勝機があるとすれば、それはなにがしかの航空機の支援と、それから強力な戦車、これがあれば状況が変わるのではないかという話です。

それからこれは、今日本で議論されている敵基地攻撃論とダブってくる面が少しだけある話ですが、といっても日本のそれは戦争を招き入れるような話なので、ちょっと違う話ですが、地上発射型の小口径爆弾、あるいは小さい巡航ミサイルみたいな、射程150キロというとんでもなく長い射程を持ったミサイルのような、巡航ミサイルのようなものを供与しようという話が浮かんでいたりします(最新の米国による軍事支援パッケージの中に、ハイマースのロケット弾として射程150キロのものが入りました)。

とにかくその他様々、兵員を乗せつつ攻撃が出来る大型の車両であるとか。とにかく軍事支援の火がついたというか、各国が滅茶苦茶それで盛り上がっている状況。先ほども言いましたように、それでウクライナ軍が本当に強い力を得られるのかどうかは分かりませんが。今、そういう状況にあるということだと思います。

今、ウクライナの防衛大臣がフランスに行ったり、あるいはEUのフォンデアライアンさんがキーウに来てゼレンスキーさんと話をしたり、いわゆる外交という意味ではヨーロッパ各国、ポーランドなどは特に熱心ですが、色んな外交攻勢を展開していて華々しいですが、かといって、軍事的な、明らかな結果のようなものが別に生じてしまうと、外交で何かをやったなどということはどこかに吹っ飛んでしまうこともあるだろうと思います。そうなるとじゃあどうすれば良いのか、という話が出てくる。なんとも、人道的な危機をあえて起こしてきたようなロシアの軍隊が大きな戦争に勝つというのはどう考えたら良いのかなと私などは思うわけですが…。プーチンさんは見事なすり替えをやってましたね。ボルゴグラード、旧スターリングラードの攻防戦、独ソ戦の一番激しい戦い、それこそ一部屋一部屋を取り合うというような、市街戦中の市街戦をやったわけですが、その戦いと、ウクライナに攻め込んでいることのどこがどう同じなのかという疑問。普通の人ならそう感じるだろうと思うのですが、プーチンさんはそれを同じ戦いだと見たいらしいですね。とんでもないことだと思います。

今日が2月の3日ですが、3週間先がちょうどこの放送の日、その前に何らかの動きが起きているだろうと思うので、24日はどんなことを話すことになるのかなという気がしております。

(『uttiiジャーナル』2023年2月5日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

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image by: Harold Escalona / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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