50年前に無人となった「消滅集落」に、なんとフレンチレストランがオープンしました。絶対にこんなところには誰も来ない!と思われていましたが、その結果は意外なものでした。今回のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では、そのお店のマーケティングを分析しています。
過疎の町に産業を創出!?消滅集落にポツンとフレンチレストラン!
富山県南砺市利賀村。
元は100人ほど暮らしていましたが、50年前に無人となってしまった消滅集落です。
2020年、この地にオーベルジュ形式のフレンチレストランがオープンしました。
「前衛的地方料理」をテーマに、厳選した地元の食材を使い、真の地産地消を目指しています。
世界的潮流である、「ローカルガストロノミー」として注目され、予約半年待ちの人気店となっています。
「ローカルガストロノミー」とは、地域の風土や歴史、文化、さらには農林漁業の営みを料理に表現する、という新しい流れのことです。
地域に根づいた「食」を観光資源として捉え、レストランや宿泊施設と農林漁業、加工業を連携させ、地域の経済力を高める仕組みを作ろうとする取り組みです。
このお店は、「前衛的」と言うだけあって、非常にユニークな料理を提供しています。
熊や猪、鹿、山羊、ムジナといったジビエをはじめ、スッポン、ヒキガエル、深海魚、モクズガニなどが供されます。
しかも、食材を無駄にしない考えから、熊の皮や内臓、鹿の舌などもテーブルに並びます。
珍しいものが食べられる、かつ美味しさが認められ、ミシュランガイド2つ星にも選ばれています。
このお店のシェフは、真の地産地消を極めるために富山中を歩き、食材とその生産者との出逢いを求めています。
そこで見つけた生産者との繋がりを深め、まだ眠っている食材を探したり、新しい食材の生産を依頼したりしています。
たとえば、観賞用の花の栽培農家では、食べられる花・エディブルフラワーの栽培を依頼しています。
これがキッカケで、この農家はエディブルフラワーの栽培がメインとなり、全国に出荷できるようになりました。
あんぽ柿を作る農家では、お店専用の商品を作ってもらい、デザートとして出しています。
また、売れなくなってきていた野生動物を獲る猟師もこのシェフと出逢ったことで、「生活が支えられている」とまで言っています。
さらに、お店で使う食器やカトラリー、調度品も、そのほとんどが富山の作家のもので揃えられています。
ビール、ワイン、日本酒も地元の製造所で、お店オリジナルのものを作ってもらっています。
自然豊かな場所とはいえ、消滅集落にポツンと建った1軒のレストラン。
「こんなところには誰も来ないぞ」と思われていたお店なのに、連日大盛況。
しかも、たった1軒なのに、周囲を巻き込み、地元の産業を創出しているとも言えます。
その影響力は計り知れず、今後、楽しみなお店です。
こうしたお店が過疎の町に出店すれば、その地域は賑やかさを取り戻すかもしれません。
活性化のために、飲食店の誘致を考えても良いのではないでしょうか。
過疎化を食い止める、ひとつの策ではあります。
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