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社員から「給料の前借り」をお願いされたら会社は支払うべきなのか

なんとなく昔の漫画やドラマに出てくるイメージのある「給料の前借り」という行為。今の時代にそれをできる会社はあるのでしょうか? 今回の無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では、著者で社会保険労務士の飯田弘和さんが、もし社員から給料の前借りを頼まれたらどうすべきかを解説しています。

社員が「給料の前借り」をすることは可能なのか?

従業員から給料の前借りをお願いされたとき、御社はどうしていますか?

前借りの申し入れについて、それに応じるかどうかは、原則、会社の自由です。しかし、労基法で、前借りの申し出に必ず応じなければならない場合を定めています。

労基法25条に“非常時払い”についての定めがあります。

従業員や“その収入によって生計を維持している家族”の、「出産、疾病、災害、結婚、死亡、やむを得ない理由による帰郷」の費用に充てるために、給料の前借りを申し入れてきたときは、たとえ給料日前であっても、“すでに働いた分の賃金”については支払わなければなりません。

これは労基法に定められているので、支払わなければ労基法違反となり、監督署からの行政指導の対象になります。

しかし、この“非常時払い”以外の理由での前借りについては、会社は応じる義務はありません。応じる・応じないは、会社で定めていただいて結構です。

ここからは、前貸しした給料の回収についてです。

まず、労基法25条の定めに従って“非常時払い”として前貸しした場合、本来の給料日には、残りの給与を支払えばよいです。

また、“非常時払い”でなかったとしても、“すでに働いた分の賃金”を前貸ししたのであれば、これは、給与の一部を早めに支払っただけですので、本来の給料日には、残りの給与を支払えば済みます。

当然といえば当然です。

ところが、“すでに働いた分の賃金”を超えて前貸しした場合には、労働者への貸付と考えます。

貸付金の返金については、労基法24条の“賃金全額払い”の定めによって、給与からの控除が原則禁止されています。

賃金から控除する場合には、労働者の過半数代表者と“賃金控除協定”を結ぶ必要があります。

その協定の中で、控除の対象となる具体的な項目を定めます。よくみかける項目としては、社宅費や組合費などがあります。

今回のお話であれば、“会社が従業員に貸し付けた貸付金”といった項目が必要です。その協定書がなければ、貸付金を賃金から控除することは労基法違反となります。

まとめると、

1.“すでに働いた分”の給料を前貸しした場合には、賃金控除協定なく、前貸し分を給料から差し引きことができます
2.“すでに働いた分”の給与額を超えて前貸しした場合には、“貸付金の返金”という扱いになるので、給料から差し引くには賃金控除協定が必要になります

給料の前貸しを行う場合には、労基法違反とならないよう注意が必要です。

また、非常時以外で給料の前借りを求めてくる従業員は、私の経験上、他にも色々とトラブルを起こします。貸金業者のブラックリストに載っていて、借り入れができないような人も多いです。極力、採用しない方が良いと思います。採用面接時に、「給料の前借りができますか?」などと聞いてくる者は、要注意です。

image by; Shutterstock.com

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就業規則とは、入社から退社までの「ルールブック」であり、労使トラブルを未然に防ぐ「ワクチン」であり、効率的な事業運営や人材活用を行うための「マニュアル」でもあり、会社と従業員を固く結びつける「運命の赤い糸」でもあります。就業規則の条文一つ一つが、会社を大きく発展させることに寄与し、更には、働く人たちの幸せにも直結します。ぜひ、この場を通じて御社の就業規則をチェックしていただき、問題が生じそうな箇所は見直していただきたいと思います。現役社会保険労務士である私が、そのお手伝いをいたします。

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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