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もはや無法地帯。殺人未遂いじめ放置事件の和歌山県海南市が見せた“異次元”対応

もはや殺人未遂と言っても過言ではないいじめを6年間も放置し、発覚するやあたかも解決に動いていたかのような保身的文書を公式HPに掲載した和歌山県海南市。ここに来てようやく第三者委員会が設置されることとなったのですが、定例市議会に提出された「いじめ条例案」は到底納得できるものではありませんでした。今回のメルマガ『伝説の探偵』では現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、入手した条例案の全文を公開し数々の問題点を指摘。その上で、「犯罪者が捜査する権限を持つのと変わらない」と厳しく批判しています。

海南市「重大事態いじめ放置事件」がSNSで拡散。市全体を巻き込んで事件を隠ぺいするつもりか?

和歌山県海南市のいじめ放置事件、伝説の探偵が取り上げた後、SNSで拡散が進み、報道機関が動いた。

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上の表題だけでも賢明な読者の皆様にはわかるだろう。

実質6年間いじめを放置、確認ができる書面での範囲で重大事態いじめを4年間も放置した。いや放置しただけではない、教員による被害児童への授業妨害、被害者に加害者への謝罪を強要するなどした。その上、これが世間に知られることになっても、海南市教育委員会は、市の公式ホームページに、「抜粋~報道では、教育委員会が、いじめに係る調査等を何もせず放置しているようにも読める記載がありますが、教育委員会は、当初から何回もいじめ調査を行い、事実確認を行っています。また、教育委員会としては、今日まで、いじめ被害を訴えている児童保護者からの要望にも配慮のうえ対応しており、今後も当該児童が健全な学校生活を送り、成長することができるよう、できるかぎりの対応を継続して行ってまいります」と記載したのだ。

これは、NHK報道に対しての牽制と言えるだろう。

しかし、世間の常識からかけ離れた教育委員会の常識は、一般社会の「非常識」であるのだ。

さらなる報道、市教委が作り出した嘘が明るみになっていく過程で、ついにその時が来たのだ。

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到底納得の行かぬ海南市議会に提出された条例案

2023年2月3日、報道によれば、西原孝幸教育長は「市民に心配をかけている状況を踏まえ、委員会を設置して調査・検証してもらうことにした」とコメント、2月の定例市議会で条例案を提出するとした。

つまり、第三者委員会設置を決めたのである。

「議案第3号、海南市いじめ問題調査委員会条例について、海南市いじめ問題調査委員会条例を次のように制定する。令和5年2月22日提出、海南市長 神出政已」という書類が私の手元にある。これは、2月22日にいじめ条例案として提出されたものだ。 ~以下原文のまま~

議案第3号
海南市いじめ問題調査委員会条例について

 

海南市いじめ問題調査委員会条例を次のように制定する。
令和5年2月22日提出
海南市長 神 出 政 巳

 

海南市いじめ問題調査委員会条例
(設置)
第1条 いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号。以下「法」という。)第28条第1項の規定に基づき、海南市いじめ問題調査委員会(以下「委員会」という。)を置く。
(所掌事務)
第2条 委員会は、海南市教育委員会(以下「教育委員会」という。)の諮問に応じ、法第28条第1項に規定する重大事態(以下「重大事態」という。)に係る事実関係を明確にするための調査を行う。
(組織)
第3条 委員会は、委員5人以内をもって組織する。
2 委員は、法律、医療、教育、福祉等に関する知識経験を有する者のうちから重大事態ごとに教育委員会が委嘱する。
3 重大事態の関係者又はこれらの者と直接の人的関係若しくは特別のリ外関係を有する者については、委員会となることができない。
4 委員の人気は、当該諮問に係る調査が終了するときまでとする。
(委員長及び副委員長)
第4条 委員会に委員長及び副委員長各1人を置き、それぞれ委員の互選により定める。
2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
3 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときは、その職務を代理する。
(会議)
第5条 委員会の会議は、委員長が招集する。
2 委員長は、会議の議長となる。
3 委員会は、委員の半数以上が出席しなければ、会議を開くことができない。
4 委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
5 委員会の会議は、公開しない。
(意見の聴衆等)
第6条 委員会は、必要があると認めるときは、委員会以外の者を会議に出席させて意見若しくは説明を聴き、又は資料の提出を求めることができる。
(守秘義務)
第7条 委員会は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
(庶務)
第8条 委員会の庶務は、教育委員会事務局において行う。
(委任)
第9条 この条例に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が委員会に諮って定める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、交布の日から施行する。
(経過措置)
2 重大事態ごとの最初に開催される委員会の会議は、第5条第1項の期待にかかわらず、教育委員会が招集する。
(海南市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)
3 海南市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例(平成17年海南市条例第31号)の一部を次のように改定する。
別紙(仮称)中央防災公園等民設運営事業者選定委員会の委員の項の次に次のように加える。
いじめ問題調査委員会の委員
日額 20,000円
時間額(調査の実施、収集した情報の整理・検証又は調査の結果に係る報告書の作成に関する乗務に従事する場合)
20,000円を超えない範囲内で任命権者が市長と協議して定める額
議案説明
いじめ問題に係る事実関係を明確にする調査を行うため、海南市いじめ問題調査委員会を設置いたしたく、本案を提出する。

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犯罪者が捜査の権限を持つに等しい海南市

これによると、第2条で所掌事務は海南市教育委員会で、いじめの事実関係を明確にするための調査を行う。とあるが、この問題は、それだけのはずは断じてない。

4年間もの間、重大事態いじめを放置し、まともな調査もせずに、議会では十分な調査をしたのだと嘘を言い続けている海南市教育委員会の行為は、極めて悪質な隠ぺいである。

つまり、この第三者委員会は、市教委と学校の対応についても調査対象にするのが普通の対応なのだ。

海南市いじめ問題調査委員会条例案の第3条にはこうある。

重大事態の関係者またはこれらの者と直接の人的関係若しくは特別の利害関係を有する者については、委員になることができない。

これが他市であれば当然に、第三者委員会はいじめのみならず、市教委と学校の対応を調査し、今後の対策提案をするのだ。

つまり、この条例案条文が規定されたのであれば、海南市の関係者、仕事などを受けた事がある者などは、当然に委員になることはできなくなる。

しかし、さすがは海南市である。

条例案では、「会議は非公開」「庶務は教育委員会事務局」が行うとされているのだ。

一般的な良識を持つ読者の皆様なら、もうお分かりになるであろう。

この第三者委員会が想定している調査には、「学校の対応」「市教委の対応と隠蔽」は含まれていないのだ。

なぜなら、これが他市であれば、または国のガイドラインの考えを踏襲するものであれば、こんなお粗末な条例は案としても恥ずかして出さないからだ。

調査対象に通常なる組織が庶務を行い、委員すら選任する。

これでは、犯罪者が判決と捜査をする権限を持つのと変わらないのだ。

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「何が問題なのか」。開き直りにすら見える海南市教委の姿勢

この3月に入って、教育委員に関係者が聞いた話によれば、「教育委員会は何度も調査をしたが重大事態ではないと言っている、何が問題なのだろう」と話したということであった。

これは2月14日に行われた海南市の教育会議の議事録からも見ることができる。

解釈のしようにもよるが、「被害側がいかに騒ごうが、よほどのことがない限り、市教委が決めた委員で第三者委員会を強行し、世間を騒がせたのだから、文科省の重大事態いじめのガイドラインに反しようが、進めるのだ」と読み取ることもできる。

和歌山県教育委員会の協力を得ながら今後も進めるということだが、いじめ法もガイドラインも守る姿勢が見えず、未だに、嘘をついて自らの問題にも触れようとしない海南市教育委員会にこのまま進めさせてよいのだろうか?

海南市教育委員会は報道機関の取材に対して、不登校といじめの因果関係はないと主張するが、その実、公印の押された書面で、いじめと不登校の関係を認めているのだ。

「学校に登校できていない状況は、学校で認知したいじめと関係があると、いじめ案件として認知した平成30年6月から考えています」としっかり明記されているのだ。

この場合、文科省の重大事態いじめのガイドラインからすれば、「いじめによって不登校が起きた」ことになり、誰がどう見ても「重大事態いじめ」なのである。この場合、第三や委員会の設置要望があったら、学校の設置者である教育委員会は、第三者委員会を組織設置しなければならないのだ。もはや、いわずもがな、なのである。

被害関係者には激しい嫌がらせ、マスコミには圧力も

これはあくまで伝聞に過ぎないが、記者が聞いた話によれば、すでに海南市教育委員会は委員の人選を進めており、その中には海南市の関係士業が委員長になるという。

事実、関係者は甚大な嫌がらせやマスメディアすら圧力をかけられているという。

あくまで、噂の範疇であるが、火のないところに煙はたたない。4年間もの放置という異次元の対応をしていることを考えれば、結果を見て、ほら見た事かになるかもしれない。

いじめ問題を本気で国がやるなら、即座に厳しい法改正をせよ。

異次元の少子化対策と政府は言う、専門家らのロビイングなどもあって、進みやすい分野は小さな一歩があると聞く。いじめ問題もやってますという声も聞くが、現場にいる我々や被害者の多くは、冷めた懐疑的な見方をせざるを得ない。

なぜなら、この海南市重大事態いじめ放置事件のように、法の通り、本来であれば、第三者委員会を設置し丁寧な調査をしなければならない事件が長く放置されたり、隠ぺいされたままになっているからだ。

さらに、第三者委員会が設置されても、十分な調査をせずに「いじめはなかった」とされたり「いじめと不登校の因果関係はない」「自死との関係はない」とされた後、首長による再調査で、結果がひっくり返る事案は枚挙に暇がない。

こうした隠ぺいや不正が蔓延る中で、不正や隠ぺいを行った者が処分を受けることはまずないのだ。さらに、監査をし、調査をする機関もない。つまりは、やりたい放題なのである。

こんなもの当事者として目にして、長く苦しい調査を経ても何の体制の変更もない組織をみれば、これから考えるという対策を、甘いなーと思うのは当然だろう。

本気でやるなら、これまで問題となったような事柄が起きないように最も強く厳しい法改正で挑むのが、これまでの反省を踏まえて、こどもまんなかで考えることになるのではなかろうか。

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海南市教委がついた嘘を証明する書面や録音物も保管

伝説の探偵は登録の方には、9日、23日に届きますので、本誌は3月9日に発行となっています。そして、3月10日、被害側は議会に出るそうです。その前のやり取りで、追い出されるかもしれないというような話があったようですが、海南市の市議会議員の方々にはぜひとも、自分が同じ立場になったらと本気で考えて頂きたいと思います。

海南市教育委員会がついた嘘を証明できる書面や録音物は、被害側はきちんと保管しています。その言葉には裏付けのある信じることができる言葉です。

その上で、高度な政治的な判断というやつを、市民にも納得ができる言葉で進んでもらえればと思います。

今しか膿を出すことはできない、今徹底的にやるしかないのです。

全てのこどもが笑顔で過ごせるように!ピース!!

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image by: 海南市役所 - Home | Facebook

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社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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