中国の脅威に対抗するため、常に準備を怠らない台湾。しかしその「方向性」に疑問を持つ声も上がっています。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、英国の有力誌が掲載した台湾の防衛戦略の誤りを指摘する記事を紹介。さらに日本政府に対しては、論文が批判する誤りをどう受け取るべきかについての見解を記しています。
「方向性が間違っている」英エコノミストが掲載した台湾の防衛戦略への批判
台湾の防衛戦略についての英エコノミストに論文がでていたのでご紹介しましょう。
【台湾は中国に対応するために新しい防衛戦略を必要としている】
海軍最大の艦艇のひとつである「ユシャン」。
1月、国防省は記者を乗船させ、この艦が水陸両用強襲車、ヘリコプターの着艦、小型ボートの発艦が可能であることを説明した。
台湾初の大型水陸両用戦艦である。蔡英文総統は、台湾の「国防自治」の象徴であると賞賛した。
台湾は自国の軍隊に最高の装備を与えることで、中国の脅威に対抗しなければならない、と彼女は宣言した。
しかし…
アメリカの専門家は、台湾が戦争になったらどうするのかということを考えずに、高価なものにお金をかけすぎていると批判している。
大型の艦船やジェット機、戦車は中国のミサイルで簡単に無力化できるからである。台湾は弾薬の備蓄を増やし、より安価で機動性の高い兵器を購入すべきだと言うのである。
元の台湾総参謀長であるリー・シミン提督もこの批判に共感している。
つまり、最新で最大の戦車、ジェット機、船舶への支出を減らし、中国の侵攻を妨害する可能性のあるミサイルや機雷、機動兵器への支出を増やす方がよいというのである。
台湾には、中国が支配する事を苦痛に感じるようにするための「ヤマアラシ」戦略が必要である。
解説
台湾が防衛努力をしなければならないのは自明ですが、その方向性が間違っているというのです。
米国がもっているような最新鋭の戦車、ジェット機、船舶などを購入することは見栄えはよいが、実際には中国の侵攻を思いとどまらせる抑止力にならないとの批判です。
なぜなら、中国の最初のミサイル攻撃で一瞬で無力化されてしまうからです。
台湾には台湾の状況にあった防衛戦略があるはずなのです。
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
この批判、日本も他山の石として受け取るべきです。
防衛費の増額をめぐり、岸田総理大臣は5年後の2027年度に防衛費と関連する経費を合わせてGDP=国内総生産の2%に達する予算措置を講じるよう指示しています。
今年度のGDPの見通しをもとに計算すると、GDPの2%は11兆円規模になる見通しです。
GDPの1%もの大きな増強であり、どの分野の増額をするのは政治家・官僚・産業界で駆け引きも当然あるでしょう。
官僚に天下り先、政治家に票、等を提示する事によって有利に進めようとする企業もあるかもしれません。
結果として、見栄えはよいが実際の役に立たない防衛負担ばかりが増えるのでは国家がつぶれてしまいます。
参考までに米軍は30年ぶりにフィリピンの基地に戻ってきましたが、海兵隊は戦車を排除し、陸上軍をより小さな、島を飛び回る水陸両用連隊に再編成しています。
日本が拡充すべき防衛分野、装備は何なのか?
それは中国、ロシア、北朝鮮の脅威をどう評価するかによります。
そして中国と台湾で紛争が起こった時に、日本がどのような行動をとるかという問題もあります。もちろん、全体的な技術進歩の状況もあります。
単にGDP2%まで行くように買い物すればよいというものではないのです。従来の延長線上のハードウエアに偏ったものにならないようにすべきです。
日本の防衛状況についての客観的な共通認識が必要となります。 (この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』3月12日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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