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日本で地方移住したい人の前に立ちはだかる「仲間意識」という高い壁

せわしない都会から地方へ移住する流れが日本国内で数年前から出てきているようですが、イメージと現実のギャップを憂う声も多く聞かれます。今回のメルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』では、マレーシアに11年以上在住する文筆家で編集者の、のもときょうこさんが、日本ではかなり極端な「イニシエーション(通過儀礼)」があるとして、地方移住の大変さの理由について語っています。

【関連】日本人には「会社員」と「会社員以外」という2種類の人間がいると感じた理由

「うちに来て欲しいけど、あなたの人格は求めていないです」と人を呼ぶのは無理ゲーだと思う件

地方移住の厳しさが問題になっているけれども、

・地方移住して労働してほしい
・国を支えるために子どもを産んで欲しい
・海外から優秀な若者に来て働いてほしい

根っこは全部同じで、価値観を変えず「経済的な価値『だけ』を求めて、人間を迎え入れる」のは実はたいへん難しいのでは、と思います。

最近、東京から地方への交付税も話題ですが、いくらお金をばら撒いてもソフトが変わらない限りはほぼ無駄な気がします。

「来て欲しいけど、あなたの人格を求めていない」が本音

上記3つに共通するのは、暗黙の「来て欲しいけど、あなたの持ち込む文化や人格は求めていない。うちの世界を乱さないで」です。「我が家の家風に染まってね」です。

ある程度はどの国でも「郷に入れば郷に従え」は言えます。しかし日本の場合、これがかなり極端で、仲間に入る「イニシエーション」があったりします。

これは日本の組織の大きな特徴ではないのだろうか。以下は永見薫さんのツイッターより引用です。

子どもをうるさいと感じる人が多いのも、同じ理屈で「郷に入れば」の「郷」のルールが厳しすぎるからだと思う。

日本の大学で大した教育をしないのは、企業側から「生意気な知恵をつけてもらったら困る。我が社に染まってもらうため、真っ白なまま来てください。うちで教育します」の思想があるんでは。

私が最初に入った会社には挨拶の仕方から社歌の歌い方、マナーに至るまで徹底した社員教育がありました。

だから転職がやりにくいです。文化の違いを受け入れてもらうのに時間がかかる。書籍にも書いたけど、中途で入ると「あいつはプロパーじゃない」と差別される現実がありました。

海外大卒が「知恵をつけて生意気だ」などと言われて敬遠されるのもこれですね。

「考える力」なんて社会が求めてないので、いくら教育を変えようとしても無駄です。親は社会全体での本音と建前に気づかないとなりません。

一方で、マレーシアで勤めた外資系に入ってくる新卒たちは、即日「即戦力」です。私はマーケティングにいたのですが、大学でそれなりにSNSマーケティングなどを学び、実践も積んできていて、私が教わる始末でした。

もうなんというか、全然違う。異世界でした。

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住みやすいのは利便性でもなんでもない「フレンドリーさ」

人が集まっているから「東京はまだ大丈夫ではないか」と思われるかもしれませんが、今や日本そのものが巨大な限界集落化していく危険を孕んでいます。

書籍にも書きましたが、「駐在員の住みやすさランキング」ではクアラルンプールが1位で、東京は53位です。

実際に住んでみると、利便性や安全性では東京の方が上回るのに、です。この差はソフトパワー、いわゆる、「人々の受け入れ力」なのです。

マレーシアに来るおおくの外国人(国籍問わず)が、「自分は歓迎されている」「友達を作りやすい」と感じているようなのです。

「フレンドリーであること」「オープンであること」の価値は、日本ではあまり重視されていませんが、「新しい教育」では非常に重視されます。この辺は書籍に詳しく書きました。

日本人である私も、地方に住む時は、「なじめるだろうか」と心配します。でも、マレーシアでどこかに引っ越して、その心配をすることはまずないのです。日本人が日本人のまま受け入れられる。世界にはそういう場所があります。

マレーシアは22年のGDPの成長率が過去最高でした。人が集まるからこそ、ビジネスが生まれる時代です。

Malaysia’s economy grows 8.7pct in 2022, fastest in Southeast Asia and best since 2000

そんなこと言うと、「いや日本はこのままでいいから、放っておいてくれ」と言われそうですよね。

そう、実はそのままでよいと思う。他国のGDPなんて本当はどうでもよく、先ほどランキングを出しましたが、いちいち比べるのも、実はそんなに意味がないのです。

栄枯盛衰です。だから英語で繋がった「グローバル社会」とは別の文脈で生きていく。経済成長とは違った幸福を、国民一人ひとりが見つけていく時代になっていくんだろうな、と思ったりします。

※本記事は有料メルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』2023年3月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

image by: Shutterstock.com

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文筆家・編集者。金融機関を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」を経て以降フリーに。「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者として主にIT業界を取材。1990年代よりマレーシア人家族と交流したのときっかけにマレーシアに興味を持ち11年以上滞在。現地PR企業・ローカルメディアの編集長・教育事業のスタッフなど経てフリー。米国の大学院「University of the People」にて教育学(修士)を学んでいます。 著書に「東南アジア式『まあいっか』で楽に生きる本」(文藝春秋)「子どもが教育を選ぶ時代へ」「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。早稲田大学法学部卒業。

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【著者】 のもときょうこ 【月額】 ¥1,320/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 木曜日

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