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ロシア敗北を見越した中国。習近平が早くも進める「プーチン後」の人事

プーチン大統領の「3月末までのウクライナ東部完全制圧」という命令を遂行することができなかったロシア軍。ウクライナ軍に対する攻撃の頻度もスピードも落ちてきたとの報道もありますが、戦争はこの先、どのような推移を見せるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、前回に引き続き最新の戦況を解説。さらにウクライナが進める春の大攻勢の準備を紹介するとともに、予想される中国の動きを考察しています。

ロ軍の攻撃に勢いがなくなり兵員不足に。ウ軍の大攻勢はあるか?

ロ軍は、バフムトとアウディーイウカの2拠点の攻撃に絞り、兵員不足と装備枯渇を凌いでいる。ウ軍の春攻勢が4月か5月に始まる。

バフムト方面

ウ軍も増援部隊を出して、バフムト市を死守しているが、ロ軍も攻撃を市内に絞り、バフムト中心部、市庁舎の占拠を優先している。

ワグナー軍は、損耗が大きくかつ補充ができないことで、現存する部隊の多くを市内攻撃に振り向けた。市内でのT0513号線を北から前進し、南側からもT0513号線を北上して市中心部に到達したようである。ウ軍増援部隊が到着したが、前進を食い止められていない。ウ軍は徐々に撤退して、ワグナー軍の損害を大きくしている。

バフムトフカ川を渡河したワグナー軍は橋頭保を確保したが、市内のビルから狙撃されて、それ以上には前進できないでいる。このため、ロ軍は市内のビルを集中砲火を浴びせている。

ウ軍はロ軍の火砲を攻撃して、1日10門程度を破壊しているし、500名程度を死亡させていると述べている。自軍の損害を最小化して、ロ軍の損害を大きくすることに注力しているようだ。

ショッピングセンターのロ正規軍は攻撃しても前進できていない。

どうも、バフムト郊外の平地では、損害が大きいが、市街戦の方が損害が大きくないことで、ワグナー軍は市街戦を優先し始めたようである。

ワグナー軍は、郊外ではオリホボ・バシリフカへの攻撃しかなく、、イワニフスク方向のロ軍空挺部隊はウ軍に押さえこまれて、攻撃できないようである。

バフムト包囲作戦を中止したことで、包囲が解け始めている。市街戦だけの状況になっている。

バフムトに兵員を集めていることで、クレミンナ方面やリシチャンスク方面でも攻撃がない。

ウ軍はチャンプ・ヤールに戦車、装甲車部隊を待機させているので、ロ軍の損耗を見て、兵員数が少なくなったら、反撃に出るように見える。

ここに派遣されたロ軍兵がSNSで、「ロ軍は犯罪集団だ」と述べている。中隊160人が前線で戦ったが、下がると督戦隊に殺され、上官からは、皆死んで来いと言われ、事実160人が20人になった。このような軍隊ではおかしいとプーチンに直訴している。

ロ軍の実態は、軍隊の組織をなしていないようである。ワグナー軍だけが、軍隊としての体裁を持っているようだ。ロ軍は組織化されてない暴力集団化した組織になってしまっている。これでは勝てない。

アウディーイウカ方面

アウディーイウカ周辺で、ロ軍は包囲作戦を開始したが、クラスノホリフカを占領後、ノボクリノベやボダニウカ、セベルネ、プレボマイスクに攻撃しているが、ウ軍に撃退され、占領地を広げることができないでいる。

その他地域

マリンカにもロ軍が攻撃しているが、ウ軍は撃退している。この地点は、数か月攻撃をしているが、ロ軍は前進できないでいる。

ボハレバラでのロ軍の攻撃はなくなっている。

ウ軍は、TU-141無人機を使い、ロシア国内各地の防空体制をチェックしているようである。3,000km以上飛べる無人機も開発でき、春攻勢時に陽動作戦で、ロシア各地を攻撃するようである。また、TU-141を約100機持っているので、これを使うことになる。そのためにロシア国内防空体制を調べているようである。このため、つい最近、モスクワ州の隣のテゥーラ州の化学工場を攻撃爆破。その前にも、首都モスクワに接する地域に数度も無人機が着弾している。

同様にクリミアにも無人機や無人ボートで攻撃して、ロ軍の防御体制を見ているようである。

ザポリージャ州の前線では、ウ軍が威力偵察を繰り返し行っているが、ウ軍は報告していないために、詳細が分からないが、春攻勢での突破口を何処にするのかを調査しているとみる。

ウ軍は春大攻勢の準備をし始めているようである。

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クリミア半島を奪還へ。ウクライナ軍春の大攻勢のシナリオ

3月下旬に、ドイツからレオパルド2戦車18両が続々とウクライナに到着している。チャレンジャー2戦車28両も英国から到着して、レズニコフ国防相は、4月か5月に春の大攻勢を始めるという。

4月中旬までには、スペインなどからのレオパルト2が4両届くなど70両程度にはなる。また、レオパルト1戦車も各国の倉庫から出し、修理して届くことになり、178両のレオパルト1戦車がウ軍に届くことになる。欧米製戦車は276両にもなる。

また、ドイツはマルダー歩兵戦闘車40両も送り、大規模な歩兵戦闘車も揃うことになる。その他、T72やPT-91戦車が300両程度温存しているので、これらを使った反転攻勢が始まることになる。

北マケドニアからMi-24攻撃ヘリやSu-24などを受け取り、ザルジーニ総司令官はF-16の提供が必要であると述べている。それは、ウ空軍のパイロットの戦死も多く、とくに熟練者の戦死が続き、空軍力が弱くなり、元米軍パイロットとともにF-16の供与が欲しいようである。空軍の熟練人員不足があるように見える。しかし、今は現有勢力で春攻勢をするしかない。

防御面でも65名のウクライナ兵がパトリオット防空システムの訓練を終了して、実戦配備される。20台以上のパトリオットが配備されたようである。これで、弾道ミサイルも迎撃できることになる。春攻勢に合わせて、防御も拡充したことになる。

それと空軍力を補うために、中国DJI Mavic 3Tサーマルドローン300機が前線のウ軍に渡された。中国製品はロシアだけではなく、ウ軍でも使われている。

春攻勢の予想では、

  1. ザポリージャ州のボルノワハからメルトポリへの鉄道路線を遮断することから始まり
  2. ザポリージャ州南部を奪還して、その後
  3. ヘルソン州の奪還
  4. クリミアを攻撃してクリミア半島を奪還

することになると見られている。

ウ軍は、この大攻勢に10から12旅団、兵員4万人から5万人、戦車300両、歩兵戦闘車600~700台、火砲500門を使用するとみられている。

ザポリージャ州南部を奪還すると、GLSDBでクリミア大橋を攻撃できるので、クリミアを孤立化できることになる。

1つの作戦は、4週間程度かかるので、4ヶ月以上は掛かることになる。

このため、ウ軍は今年、すべてのロ軍を領土から追放する可能性は低い、と米軍のミリー統合参謀本部議長は言う。しかし、欧米側には、戦争終結へのシナリオがない。

そして、各国報道機関がウ軍の春攻勢報道するので、ロ軍がザポリージャ州に人員・装備を集めると、ドネツクを先に攻撃する可能性もある。すでに、チャンプ・ヤールに大量の装甲部隊が集結していることからも、可能性がある。

このウ軍の春攻勢をロ軍も、看過することはできないので、次の動員を開始しているが、召集というと反発が大きいので、募集にしている。40万人規模ということであり、また、北朝鮮から弾薬と兵器を食糧と交換で入手するようである。

クリミア半島では、ウ軍の無人機攻撃が頻発して、クリミアに住むロシア人たちが退去し始めて、不動産価格が半分程度になったという。クリミア占領当局もクリミアから本土に撤退するので、浮足立っている。

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ロシアの友好国にすら外遊できなくなったプーチン

プーチンなどが、ICCからの戦争犯罪人として逮捕状が出たにもかかわらず、CSTO加盟国のアルメニアは、ICC加盟申請をした。

CSTO加盟国のタジキスタンもICC加盟国であることから、プーチンはロシア友好国にも外遊できないことになっている。南アでBRICSの首脳会議があるが、それにも出席ができない。

この13ヶ月にロ軍が失ったのは、3,595の戦車、7,000の歩兵戦闘車、2,638の火砲、523のロケットランチャー、277の防空システム、305の戦闘機と291のヘリである。

動員で今年40万人を集めるが、志願兵には、前線で1km前進したら、5万ルーブルの報奨金を出すとした。そして、手始めに、プーチンは14.7万人の新兵を召集する動員令に署名した。

プーチンは、西側制裁がロシア経済に打撃を与えていることを認めた。ロシア経済は2023年は、マイナス5.6%だとOECDは予測している。また、企業は労働者不足になり、50万人の動員と100万人の動員逃れの海外脱出による。

ベラルーシにプーチンは、戦術核を配備するとしたが、3月21日の中ロ首脳会談で、「海外に核の分散はしない」という共同声明を出したばかりである。ロシア外務省は、ベラルーシはロシア連邦加盟国であり、海外とはならないと声明を出した。

ロシアでWSJの記者が拘束されたことを受けて、米政府は、ロシアに在住または旅行中の米国人は直ちに出発することを勧告した。ロシアは米国を敵と認識したことで、米国もそうせざるを得ない。

日本もロシアへの輸出禁止措置を新たに418品目まで拡大するとした。今回発表された措置は4月7日までに実施される。対象としては、無人航空機とその部品の他、鉄鋼・アルミニウム類、建設機械、航空機・船舶用エンジン、電子機器、発電機、輸送用機械、光学機器、写真用機器、測定機器、検査機器、三輪車、玩具(車輪付き玩具、人形、縮尺模型、パズルなど)などであるが、中古自動車が含まれていないようである。日本政府は、ロシアの一番必要なものを止めないようである。

ロシアの民主化を阻止したい中国が進めるプーチン後の人事

中国への半導体製造装置の禁止が日本でも始まった。これに対抗して、中国も、米メモリー半導体大手マイクロン・テクノロジーをサイバーセキュリティーの観点で調査し、製品輸入を止めるようである。中国製半導体メモリを使うことができるので、米国製を必要としなことになる。というように、半導体戦争になってきた。

この中、日本の林外務相が4月2日に中国を訪問する。日本人の逮捕容疑や半導体輸出制限、東シナ海での行動などを協議し、中国のウクライナ和平仲介案を聞くことになるかもしれない。

中国は、ロシアに対して、ウ軍の春大攻勢でロ軍敗退が、ある程度見通せた時期に、先週に述べたような「広義の外国人を全て追放し、70~100キロの中・近距離で機能するあらゆる種類の兵器の使用を禁止する緩衝地帯を設定する」仲裁案を出すとみる。勿論、その地域はウクライナ国内であるが、ウクライナの支配権を認めることになる。

ロシアがなくなるとか、ロシアが民主化することは、中国にとっては大きな痛手になるからで、専制主義体制のロシアを存続させることは必要だからである。このため、パトリシェフ安保会議書記を中心にプーチン後の人選をしている。

中国の台湾侵攻時に、ロシアが民主化して、中国の裏側を攻められたら、台湾進攻ができないことになる。中国も海軍の増強はしたが、陸軍の近代化は遅れている。

もし、ロシアが民主化して、欧米兵器で近代化した陸軍で中国を攻めると、中国は今のロシアと同じことになる。中国の望むことは、台湾進攻時のロシアの国体が中国同盟国であり、このことが最重要なのである。

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ヒトラーと同じ思想で自らと祖国を追い詰めるプーチン

もう1つが、中国の拡大志向で始めた一帯一路での途上国融資が不良債権化していて、経済的に苦しい状況にあり、かつ世界的な景気後退局面にもあり、ここで、欧米日との貿易がなくなると、経済的にも持たないことになる。

このため、ロシアを軍事的に助けることはしない。欧米輸出を止められると中国経済が崩壊するからであるが、欧米諸国が中国の輸入を止めたら、それは、ロシアを軍事的に助けることになる。

このため、欧米諸国も中国に対して、輸入禁止をしないで、高度半導体だけに、焦点を絞った経済制裁をすることになっている。

中国が和平に動くのは、ロ軍がウ軍の春攻勢で敗退したことで、プーチンが国民を大動員してもウ軍に勝てないと思い知った後であろう。

中国は、それでも比較的に経済原理で動いているので、ロシアとは違い、損得勘定ができる。ロシアは、イデオロギーで強く動くので経済原理を完全に無視するので、経済でのコントロールができない。

プーチンは「ロシアを独特な『国家文明』と宣言し、強国として特別な地位にあり、国外のロシア人やロシア語を保護する権利がある」というハウスホーファーの地政学思想を持ち、ドイツのヒットラーの思想でもあるが、これを経済より優先することでそうなる。

しかし、停戦が実現しないと、ロシア国内が崩壊することになり、核戦争になるかもしれないし、中国がロシアを全面的に軍事支援して、中ロ対欧米日の戦いになる可能性もある。勿論、この時は、台湾侵攻も起きることになる。

台湾の蔡英文総統が米国で講演しただけで、中国の軍用機10機が台湾海峡の「中間線」を越えたので、蔡英文総統が米国でマッカーシー下院議長(共和党)と会談すれば、それ以上の行動を起こすことになる。

このため、米軍ミリー統合参謀本部議長は、米軍の支援で台湾の防衛力を3~4年で強化し、軍事圧力を強める中国を抑止するとした。ウクライナの次に中国侵攻に備えることになる。もしくは同時に起こる可能性もある。

この時のために、米国は、日本を含む主要7カ国(G7)に対し、台湾侵攻に及んだ場合、共同で輸入関税引上げ等の対抗措置をとることを要求した。

対抗処置と同時に、中国に進出している日本企業の資産は没収させることになる。

さあどうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2023年4月3日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Sasa Dzambic Photography / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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