日本でも指折りの伝説を作った経営者として有名な稲盛和夫氏ですが、現場での彼はどんなことを語っていたのでしょうか。今回、無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』で土井英司さんが紹介するのは、稲盛和夫氏の側近が彼の言葉を毎日書き留めていたノートから集めた名言集です。
側近が書いた、稲盛和夫秘話⇒『稲盛和夫 明日からすぐ役立つ15の言葉』
大田嘉仁・著 三笠書房
こんにちは、土井英司です。
昔、『本田宗一郎に一番叱られた男の本田語録』という本があって、大変興味深く読ませていただいた記憶があります。
側近の方や部下の方など、現場で直接薫陶を受けた方の本って、大体面白いんですよね。
本日ご紹介する一冊は、故・稲盛和夫氏の「側近中の側近」と言われた著者が書いた、稲盛語録。
もちろん、側近本のお約束として、現場でのマル秘エピソードも含まれています。
著者の大田嘉仁(おおた・よしひと)さんは、元京セラの常務秘書室長で、元日本航空会長補佐も務めた人物。
秘書になった時から稲盛氏の言葉をノートに書き留め、そのノートが50冊を超えたというから驚きです。
本書には、著者が京セラで稲盛氏から受けた薫陶、JAL再生の時の現場でのやり取りなど、興味深い言葉とエピソードが集められています。
稲盛氏は既に多くの書籍を残していますので、半分くらいは既出の内容ですが、それ以外は著者しか知らない言葉、エピソードが書かれていて、興味深く読ませていただきました。
七味唐辛子を渡さず怒られたエピソードや、JALの抵抗勢力を黙らせた話、稲盛氏が寂しそうに語ったエピソードなどは、本書以外ではなかなか読めないと思います。
構成としては、全部で15の言葉を、以下のような章立てて整理して伝えています。
・「人間性が磨かれる」4つの言葉
・「より良い仕事ができる」4つの言葉
・「正しく判断できる」2つの言葉
・「高い目標を成し遂げる」3つの言葉
・「創造性が高まる」2つの言葉
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
謙虚さは「魔除け」になるんだ
「謙虚さが本当に大事なんだ。少しぐらい仕事がうまくいっても、けっして自分の成果だと思ってはいけない。つねに周囲の人に気を配って、謙虚でいる。結局、そういう人に、人は集まってくるんだ」
楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に行動する
幸福になるには「人生を長期的な視点で見ること」
何を始めるにしても、まずは現状に感謝しなければならないんだ
「新規事業というのは、たとえ規模が小さくても、ワクワクして始めるものだ。しかし、肝心のリーダーが、うまくいかないかもしれないと、否定的な言葉を口にしていては、ワクワクするどころか、暗くなるだけだ。それではうまくいくものも、うまくいかなくなる」
リーダーは怖くても、怖いそぶりを見せたらダメなんだ
「JALの皆さんは、経営計画という約束を守れなかったのではありませんか?人間として正しいこと、約束を守るということができなかった。だからこそ、JALは倒産したのではないのですか?」
「人から嫌われたくない人間では、部下を育てることも、強い組織を作ることもできない」
「たとえば、部下に新しい仕事を指示するとき、部署を代表して新たな可能性に挑戦してもらうわけだから、感謝の気持ちを持って話しているか、どうか――。また、部下を叱責するとき、部下に成長してほしいという、思いやりを持って話しているか、どうか――。結局、そういうことが大事なんだ」
完成品が見えてくるまで考える
なかなか側近の立場では書けないと思いますが、もうちょっと稲盛氏の負の側面にも触れていたら、さらに良い本になったと思います。
ただ、それを差し引いても、経営において、仕事において、勉強になる言葉集だと思います。
ぜひ、読んでみてください。
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