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巨人と日ハムの年俸格差「3倍」の衝撃。日本のプロ野球をダメにする「金満球団」の存在

日本中を熱狂させたWBCの熱狂。プロ野球でも声出し応援が解禁され、盛り上がりを見せています。ところが、メジャーリーグでは事情が異なるようです。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』の著者でジャーナリストの伊東森さんは、メジャーリーグの平均観客動員数が増加しているのは“大谷頼み”であるという根拠と、メジャーの人気低迷の理由である”絶望的な“チーム間格差について解説。そして、日本プロ野球のメジャー化についても言及しています。

WBCの熱狂でも救えないメジャーリーグ・日本のプロ野球人気の暗い現実 北米4大スポーツの現状 メジャーリーグの“絶望的な”チーム間格差

WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の熱狂が冷めやらぬなか、日米ともに野球のシーズンが本格的に開幕してから2カ月が経とうとしている。

今シーズン、ピッチクロックの導入、ベースの拡大、大胆な守備シフトの禁止といった大幅なルール変更を行ったMLB(メジャーリーグ)は、いくつかの点においては、変革が功を奏しているようだ。

経済紙Forbesによると、メジャーリーグでは4月26日時点で、1試合あたりの平均観客動員数は2万6,753人。昨年と比較して5%増となった。

テレビ中継に関しても前向きな数字が並ぶ。日曜夜の「サンデーナイトベースボール」と題された試合を中継するスポーツ専門局ESPNの開幕戦(オープニングナイト)は、150万人の視聴率を集めたという。

この数字は、昨年比4%増だった。

日本の状況はどうか。2023年のプロ野球に観客入場者数は1試合平均で29,620人(4月11日時点)。ほぼ、コロナ禍前の水準まで回復した。

ただし、メジャーリーグに目を向けてみると結局は“大谷頼み”であることが実情。MLBは今シーズンから、試合日程を大幅に変更。リーグ同地区同士の試合を削減し、インターリーグ(交流戦)試合が倍増した。

結果、1チームが全球団と対戦。変更の理由は、各球団の現地ファンが“大谷目当て”に球場に押し寄せることを狙ってのことだという。

目次

・メジャーリーグの”絶望的な“チーム間格差
・北米4大スポーツの現状
・見通しが暗い日本のプロ野球 進むメジャーリーグ化?

メジャーリーグの”絶望的な”チーム間格差

ただ、メジャーリーグの場合、実際には“WBC効果”は全く起きていないことが現実。たとえば、4月4日にオークランドで行われたアスレチックス-ガーディアンズの試合の観客動員数は、3,407人。

この数字は、同日に行われたマイナー3Aの11試合の人数よりも少なかった。

そもそも、メジャーリーグがここまで人気が低迷した本当の理由は、「試合時間が長い」とかいう要因ではない。“絶望的な”チーム間の格差が理由だ。

たとえば、昨シーズンの年俸総額の最大は、メッツで2億6,828万8,000ドル(約340億6,900万円)。一方で、この20年間で最も年俸総額が低いアスレチックスは4,980万ドル(約63億2,000万ドル)。その差は5倍にまで膨らむ。

MLBを代表する代理人の一人であるスコット・ボラスは、2017年末、「勝つ気がないチーム」があると公然と批判した。

それはその通りで、資金力のなチームが将来有望な選手を資金力があるチームへと次々と放出。結果、戦力格差がどんどん進む。

戦力格差を生じさせているのが、「サラーリーキャップ」という制度の有無だ。これは戦力の“均衡”を目指し、チームの総年俸を均一化する制度。

NFL(アメフト)やNBA(バスケットボール)ではこの制度が導入されているものの、メジャーリーグでは導入されていない。そのために圧倒的な戦力差が生じている。

北米4大スポーツの現状

いわゆる「北米4大スポーツ」と称されるNFL(アメリカンフットボール)、MLB(メジャーリーグ)、NBA(バスケットボール)、NHL(アイスホッケー)のうち、競技全体の人気では、実際にはサッカー(メジャーリーグ・サッカー)の人気がNHLを上回っており、あるいは主要リーグの中でも最長の歴史を誇るMLBの人気は、1980年代にNFLと拮抗。

現状、大手「ハリス・インタラクティブ」による2015年の調査では、NFLの人気が33%、野球が15%と2倍以上の差をつけている。

各リーグの年間総収入は、NFLが150億ドル、MLBが103億ドル、NBAが100億ドル、NHLが37億ドル、MLS(メジャーリーグ・サッカー)が4億9,000ドルとなっている。

他方、NFLは世界で最も高額なテレビ放映権を契約を有するプロリーグであり、2023年から2033年までの11年間にわたり、総額1,100億ドル、年平均で100億ドルの放映権収入を稼ぐ。

しかしながら、MLBは2014年から2021年までの8年間で、年間15億ドルと、放映権料の面では大きく差をあけられているのが現状だ。

一方、NFLは思うような世界展開でできていない。1991年より、海外で試合を行うも、“アメフト文化”を世界中に根付かせることができていない。選手も、アメリカ国内で95%以上を占めている。

それに対し、MLBは多くの海外選手を確保。その点でいえば、WBCの存在意義は大きい。

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見通しが暗い日本のプロ野球 進むメジャーリーグ化?

日本のプロ野球でも、“チーム間格差”が起きつつある。4月24日、日本プロ野球選手会は、今年の年俸調査結果を発表。

それによると、年俸合計1位の巨人は36億7,560万円(平均年俸6,807万円)に対し、最下位の日本ハムは15億6,680万円(平均2,559万円)と、年俸合計でも2倍、平均でも3倍近い差が開いた。

日本のプロ野球がさらに問題なのは、“戦力の均衡”への取り組みが不十分であること。サラリーキャップ制度もなく、ドラフト制度も不完全。

とくにドラフト制度については、「ウェイバー方式」という、前年の低い順位のチームを優遇して、戦力の均衡を図る取り組みを行っておらず、いまだに“くじ引き”により指名を行う制度は、プロ野球そのものの活性化を阻害する。

メジャーリーグで見られるようなチーム数の拡大(エクスパンション)も行わず、それでいて、近年は「育成」という制度を導入し、球団によっては“4軍”まで持つようになった。

ただ、それは言い方を換えれば、一部の金満球団による“囲い込み”“飼い殺し”であることは事実。

基本的に、アメリカのスポーツ文化では「補欠」という役割はなく、全員が試合に出るのが前提だ。その点でいえば、日本のプロ野球は自らの首を絞めているようなものだ。

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2023年5月28日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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