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見捨てられたプーチン。ロシア政府が「クーデター蜂起」を託す人物の名前

国際社会からの孤立を深めるプーチン大統領ですが、ロシア国内での地歩も危ういものになりつつあるようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ウクライナ戦争の最新の戦況を解説。さらに民間軍事会社ワグナーのトップが発した「不気味な予言」を取り上げ、ロシアにおけるクーデター勃発の可能性を指摘しています。

第2のロシア革命勃発か。止まらぬワグナー軍トップのプーチン批判

ウ軍は反転攻勢に出ていたが、バフムトでの反撃も、ロ軍のザポリージャからの援軍で、膠着した事態になっている。このため、ウ軍ではなく、自由ロ軍を使い、ロ軍の手薄な国境沿いに、ロシア国内への攻撃を仕掛けた。

また、全体的にウ軍の地上攻撃は下火になっている。ウ軍の反転攻勢はどうなったのであろうか、という事態である。

バフムト郊外で本格的な反転攻勢に打って出たウクライナ軍

ウ軍はバフムト郊外で本格的な反転攻勢に出ているが、ロ軍の守備が整い、そう簡単には撃破できなくなっている。

ベルヒウカ貯水池で、ロ軍は強固な陣地を構築して、ウ軍の攻撃を防いでいるので、膠着状態である。逆に、ロ軍が市内から、クロモベ方向に向かった攻撃を、ウ軍は撃退している。

バフムト市内のワグナー軍は、5月25日から撤退を開始して、6月1日まで完全撤退するとプリゴジンは言う。今、ウ軍はワグナー軍の撤退を待っているようにも見える。

しかし、25日を過ぎても、ISWによる映像確認ではワグナーはバフムト市街を出た様子がない。単に、DNR旅団などが入ってきて、配備兵力が増大しているだけである。

イワニフスク方向にロ軍は攻撃したが、ウ軍は撃退している。

ウ軍第3突撃旅団はクリシチウカやアンドリウカ方向に攻撃しているが、こちらの前進も、ロ軍陣地を1つ1つづつ潰していくので、時間がかかっている。

クリシチウカに向けて、第24と第3突撃旅団が攻撃しているが、前進速度は遅くなっている。このクリシチウカの後方のイワノハラドの弾薬庫が大爆発した。地域の中核的弾薬庫であったようだ。

一方、市内ではロ軍とワグナー軍が、ほぼ全地域を占領した状態であり、ウ軍は、南の一角を残して撤退した。ウ軍は市内でゲリラ戦を行っている。

このバフムトの戦いでは、ザポリージャ州のロ軍を増援でバフムトに投入したことで、ザポリージャ州の兵員が若干少なくなったようだ。バフムトの反撃が、本格的な反転攻勢の前哨戦の位置づけなのであろう。

もう1つが、バフムトのワグナー軍交代要員として、ロ軍部隊が入るが、その部隊もドネツクからの移動であり、アウディーイウカ方面の部隊のようである。

しかし、ウ軍の反撃がなくなったことで、この地域の戦闘は少なくなり、ロ軍の戦死者数も500名以下程度と今までと比べると、非常に少なくなっている。

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ロシア領内への攻撃を開始した自由ロシア軍とロシア義勇軍

5月22日、自由ロシア軍とロシア義勇軍が、ロシア西部ベルゴロド州で、ロシア政府機関の現地本部などを襲撃し、ロシア治安部隊と戦闘になった。

4台の装甲車、70人以上の兵員と5台のトラックで攻撃したが、ロシア国境には20名程度の訓練されていない兵員しかいないことで、簡単に国境を突破したようであり、龍の歯などの障害物も難なく越えている。

コジンカを制圧、国境から9km先のグライボロンまで侵攻したが、ロ軍4,000人が投入されて、24日夜までに国境線付近まで撤退したが、現時点でも、ベルゴロド州内で爆発音や銃声がしているようである。マイスキイ村でもドローンによる攻撃で爆発が起きているので、ドローンの撃墜を試みて、ロ軍が銃撃している可能性もある。

ベルゴロド州には、他に2ケ所で侵攻し、クルスク州でも奇襲攻撃をしている。こちら側は撤退したようである。

自由ロシア軍団は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから数週間後の2022年3月に結成された。所属するのは、ロシア軍からの離反者のほか、ロシア人やベラルーシ人の志願兵で攻勢されている。

もう1つのロシア義勇軍団は、2022年8月に結成された組織だ。極右論者として知られるデニス・ニキティンが率いている。

この攻撃は、ロ軍の手薄な国境線を複数箇所で侵攻して、ロ軍の国境防備を固めさせて、その分、ザポリージャ州の兵員を分散させようとする試みである。

ロ軍が国境地帯に配備されたことで、所定の目的を達成したようである。

そして、ロシア人のロシア義勇軍団のトップが24日、今後も同様の襲撃を繰り返すと表明した。

しかし、この侵攻で米国製装甲車を使ったことで、米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、「ウクライナはロシア国内で米製兵器を使うべきでない」と、ウクライナにくぎを刺した。

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ウクライナの無人艇攻撃で安全地帯を失った黒海艦隊

クピャンスク方面で、ロ軍はマシュティフカを攻撃したが、失敗している。

アウディーイウカ方面で、要塞やイボクリノベ、プレボマイスクにロ軍は攻撃したが、失敗している。ロ軍は25日にアウディーイウカ西のS300ミサイルでカルリブスキー貯水池ダムを破壊して、アウディーイウカへの補給路を封鎖しようとしたようである。

ウ軍は、ドネツク市の科学研究所、補給拠点、ロ軍基地など複数個所に砲撃を行っている。今までとは違う動きであり、後方地域を叩き、反撃の準備をしているようにも見える。

それと、ドネツク市にあるツインタワーをGMARSで破壊に成功している。このタワーにある計測装置で砲撃の位置を測っていたので、ロ軍の砲撃精度が落ちることになる。

マリンカに、ロ軍は強い攻撃に出て、市内中央通りを占領した。ウ軍は市内で抵抗している。クラスノホリフカへのロ軍は攻撃したが、ウ軍に撃退されている。

ロ軍偵察艦「イワン・フルス」に3隻の無人艇で攻撃して、少なくとも1隻は衝突したようであり、大きな損傷を受け、曳航されているようである。ロ軍黒海艦隊は、無人艇の攻撃を受ける可能性があり、相当な距離をおいても、危ないことになる。

港湾都市ベルジャンシクで25日夜、「アゾフカベル」ケーブル製造工場で大規模な爆発が複数回、発生したが、この工場は露の軍事基地として使用されているという。この攻撃は、ストーム・シャドーであろう。

26日朝、クリミア大橋から東へ約200kmの位置にあるロシア連邦クラスノダールの中心部で大きな爆発が発生した。この攻撃は、ドローンUJ-22による可能性がある。ロシア領には、ストームシャドーを使えないことで、ウクライナ製ドローンで攻撃するしかない。

ロシア連邦ロストフ州のロストフ市でも倉庫が大火災にしている。

ウクライナ南部マリウポリでも、ウ軍は26日、ストームシャドー2発で攻撃した。

ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、ウ軍の大規模な反転攻勢に関し、「敵の補給拠点の集中的な破壊が含まれる」と説明していた。

逆に、ロ軍は、ヘルソン州ベリスラフ付近でKAB(FAB-500の派生型)爆撃を2回実施した。もう1つが、ドニプロにもロ軍の攻撃があり、病院が爆撃されて、1名が死亡、16名が負傷したという。前線のウ軍兵の治療にあたっている病院だとロ軍は言う。

それと、ロ軍は25日と26日、ウクライナ全土で大規模なミサイルとドローンによる攻撃を実施した。ウ軍は、ロ軍巡航ミサイル10発とS-300ミサイル8発、シャヘド131/136ドローン31機の飛来を確認。うち、巡航ミサイルすべてとドローン23機を撃墜したと発表。

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着々と進むウクライナへのF-16供与開始の準備

すでに、12個旅団中、欧米で訓練された9個旅団がドニプロ市郊外に集結していて、戦闘開始に向けて、最終調整をしているという。このため、ロ軍もドニプロ市への砲撃を強化している。

当初、ヘルソン市とドニプロ市近郊の2方面に展開していたが、ドニプロ川の渡河作戦が、ロ軍の砲撃で無理となり、全面的にドニプロ市郊外に集結したようである。

ということで、メルトポリ攻撃をメインで、マリウポリへの攻撃がサブということのようである。この攻撃は数か月続くことになるが、攻撃開始から数か月後には、F-16の参戦もあり得ることになる。

この集結地にロ軍は空爆をして、事前に叩く必要があるが、それができないようである。

SU-24がザポリージャ州のウ軍陣地を空爆しようとしたが、対空ミサイルで撃墜されている。ウ軍のS300防空システムのミサイルが枯渇して、ロ軍の航空機を撃ち落せない状態であるが、集結地付近の防空体制は欧米防空システムで盤石なのであろう。

ゼレンスキー大統領のG7参加で、F-16の供与が確実になり、F-16の訓練も開始したので、4ケ月後の9月にはF-16の供与が始まることになる。12機を1つの塊として提供されるという。事実、オランダはパイロット訓練終了直後にF-16戦闘機をウクライナに移送するという。

スウェーデンは、グリペン戦闘機へのパイロット訓練を行うとして、ウ軍への供与を行うようである。このグリペンは、多目的戦闘機であり、使い勝手が良い。

そして、F16の兵装として、AMMRAM中距離対空ミサイルやマーベリック対地ミサイルの供与とカナダはAIM-9サイドワインダー43発を供与するという。これで、防空能力と、攻撃力は大きくなる。

ロ軍では、F-16以上の性能を持つ戦闘機はSU-35などの最新鋭戦闘機になるが、ウ軍の防空システムとの組み合わせで、勝つ可能性が高まるようだ。

もう1つ、ロシア占領地へのウ軍攻撃時には、ロ軍攻撃機の攻撃を受けるので、そのロ軍攻撃機基地への無人機による攻撃を強化している。

ロストフ州のタガンログ空軍基地やモストフ空軍基地がドローンUJ-22により攻撃を受けている。これらの基地からウ軍部隊へ空爆をするロ軍攻撃機が飛び立っているので叩く必要がある。

しかし、6月には、レオパルト1A5が110両がウ軍に供給されるし、9月にはF-6が供給されることになる。ウ軍のいつ、本格攻勢に出るのかは、まだわからない。

EUは、ロシア凍結資産1,966億ユーロの内、ロシア中央銀行資産の1,800億ユーロをウクライナに移動させるという。日本円で約27兆円であり、ウクライナの年間予算が11兆円であるので、2年分の予算に匹敵することになる。

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プリゴジンの蜂起を期待するFSB内の若手シロビキ

エフゲニー・プリゴジンは、「エリートは自分たちの子供を戦争から守り、庶民の子供が死んでいく状態が続けば、ロシア革命(1917年)がまた起こる。まず兵士たちが立ち上がり、その家族たちが立ち上がる」と言い、「我々はウクライナを非武装化しようとした。結果は逆だ、ヤツらを武装集団に変えてしまった。今のウ軍は最強だ!」とし、これまでに「ワグナー軍の兵士2万人以上が死亡した」と明かしている。

そして、「激戦地バフムトから撤退を始めた」と発表した。プリゴジンは、ロシアの国境守備が脆弱であると不安感を煽って、その対応ができるのはワグナー軍だと強調した。

それと、ロシアのベルゴロドでプリゴジンの選挙キャンペーンのポスターが貼られ始めているようだ。塹壕に籠ってばかりの臆病なリーダー、プーチンとは違い、リーダーとして戦争の前面に立つ姿があるからだ。もう1つが、ロシアの現状を正確に見通していることである。

これに対して、プーチンは26日、クレムリンで開かれた経済団体代表らとの会合で、欧米制裁や欧米企業撤退で打撃を受けた経済を立直す「5カ年計画」作成を提案した。5カ年計画は、国家主導の計画経済の手法で、冷戦下の経済封鎖に対抗したソ連時代の経験を基に生き残りを模索する。

長期の戦争に備えるためには、ロシア経済の立直しは不可欠であるし、中国などの友好国を1つでも多く獲得する必要がある。

経済面でのプリゴジン氏は、無力であるから、そこをプーチンは、大統領選挙戦で強調するのであろう。

しかし、クレムリンの安保会議構成員である、パトルシェフ安保会議書記、ボルトニコフFSB長官、ナルシキンSVR長官などは、戦争に負け始めて、国内が混乱したら、プーチンに退任を進める可能性がある。この時、ロ軍のゲラシモフ参謀総長も一緒に退任を求めることになる。

また、FSB内の若手などのシロビキは、プリゴジンにクーデターの口火を取ってもらい、その後、FSBを中心に事態を変革することも考えているようだ。

このような中、プーチンは、ワグナー軍がバフムトを完全占領したことに祝辞を述べている。現実を見ると、ウ軍との戦闘に勝てているのは、ワグナー軍しかない。このため、ワグナー軍のトップのプリゴジンを切れないでいる。

もう1つが、ロシアとベラルーシ両国は、ロの戦術核兵器のベラルーシ配備する協定に署名した。

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ロシア寄りの姿勢を鮮明化させた中国

欧州歴訪中の中国政府の李輝ユーラシア事務特別代表は26日、最後の訪問地モスクワでロシアのラブロフ外相と会談したが、西側当局者の話として、ロシアがウクライナ東・南部を占領した状態での即時停戦を呼び掛ける「和平案」を、李氏が仏独などに提示したと言う。

ロシアのミシュウスチン首相が訪中した際も、習近平主席も、中ロ相互の「核心的利益」を重大とみて支持するという。中ロが、欧米を中心とする国際的包囲網に対して、対応していくことが確認されたようである。ロシアと中国の関係は、かつてないほど高レベルにあるという。

これに対して、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、「ウクライナ全土の解放を想定しない妥協のシナリオ」だと指摘し、「民主主義の敗北、ロシアの勝利、プーチン政権の存続、国際政治での衝突急増を容認するのに等しい」と批判した。

とうとう、中国のロシア寄りが鮮明化したことになる。これにより、欧米と中国の対立が明確化して、欧米対中ロの構図になることが、より鮮明になったようだ。

一方、ミリー統合参謀本部議長は25日、「ロシアが軍事的に勝つことはない」が、同時に、ウ軍がロ軍の占領地域を解放することも「軍事的に達成可能かもしれないが、短期的には無理だろう」とも述べ、戦闘の長期化に懸念を示した。

このため、停戦後、どうウクライナの安全を保証するかの議論が出ている。今回のウ軍攻勢で、ウクライナ全土の解放は無理であり、どこかで停戦となる。その時、ウクライナとNATO加盟の「西ドイツ」型にするか、自衛力増強の「イスラエル」型かの議論になる。

もう1つが、欧州議会、ハンガリーのEU議長国としての不適格性に関する決議案を作成し、その決議案は、「ハンガリーがEU法および欧州連合設立条約第2条に明記された価値観、さらには誠実な協力の原則と相容れないことから、2024年にこの任務を確実に遂行できるかを問う」ものだそうだ。

これによりハンガリーのEUにおける投票権が剥奪される可能性がある。もう少し行くと、欧州議会で、ハンガリー追放の議題が出る可能性が高まっている。

さあどうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2023年5月29日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Naga11 / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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