「大量生産」は過去の話。カタログに載る商品を生産しないメーカーの事情
by 梅本泰則『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!…
2年前
前回の記事で、原材料の値上げで窮地に立たされる小売店が「打つべき手」を分析した無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ! 』の著者で経営コンサルタントの梅本泰則さん。今回は、小売店を悩ませる「品切れと納期遅れ」ついて、取るべき対策を解説しています。
小売店の三重苦(品切れ・納期遅れ編)
1.品切れと納期遅れ
前号では、小売店さんの三重苦をとりあげました。
【関連】原材料の値上げで「三重苦」 の窮地に立たされる小売店の未来はどうなるのか? https://www.mag2.com/p/news/ 577368
三重苦とは、「値上げ」「品切れ・納期遅れ」「卸掛率」 のことでした。「値上げ編」に続いて、今回は、「品切れ・ 納期遅れ」がテーマです。
コロナ禍が始まってからというだけではありません。 スポーツ用品業界では、メーカーさんも問屋さんも、 在庫を積まなくなってしまいました。 何が売れるか分からないからでしょう。
そのため、小売店さんが、売れた商品を追加で注文しても、 在庫がないので「品切れ」という返事です。 小売店さんにしてみれば、 販売チャンスを逃すことにもなりかねません。
また、お客様が店頭でメーカーさんのカタログを見て、「 これが欲しい」と言われたとします。しかし、 メーカーさんにも問屋さんにも在庫がありません。 追加生産の予定もありません。お客様は、 やむなく別の商品を買うことに。
「そんなことなら、カタログに載せなきゃいいのに」
それが、ここ最近の状況です。
そしてまた、メーカーさんの展示会で注文した商品が、 納期通りに入荷してきません。 計画通りに生産されないからでしょう。生産はされても、 海外からの出荷が遅れているのかもしれません。
小売店さんは、必要な時期に入荷することを信じて、 注文しています。それが入荷してこなければ、 販売機会を逃すことに。「品切れ」より痛手が大きいです。
2.品切れ、納期遅れが起こる理由
実は、品切れや納期遅れは今に始まったことではありません。 もう大量生産、大量販売の時代とは違います。 売れるだろうと思われる分量だけの商品を生産する時代です。
メーカーさんは、 なるべく在庫に残らないように生産計画を立てています。 ですから、メーカーさんは余分な在庫を持ちません。 カタログに載っている商品でも、生産しない商品さえもあります。
これは、問屋さんも同じです。なるべく在庫に残らないように、 メーカーさんに注文します。そうなると、 小売店さんがメーカーさんや問屋さんに、 欲しい商品を注文しても、在庫に無いことが多いです。 頼みのメーカーさんや問屋さんで「品切れ」では、 お客様に商品を提供することができません。 どうしたら良いでしょう。
そして、「品切れ」はなんとか我慢が出来ても、「納期遅れ」 はなかなか我慢出来るものではありません。納期遅れは、 メーカーさんの生産工場の都合で発生します。
いつの頃からか、メーカーさんは、 多くの商品を中国や東南アジアで生産するようになりました。 国内で生産するより原価が安いからです。
その代わり、現地工場に一定の数量を発注しなければなりません。 すると、出来上がりまでに期間がかかります。 生産が計画通りに進まないこともあるでしょう。 船便で輸入をする時間も必要です。これらが、 納期の遅れる原因になります。
このように、海外生産が中心となることで、 納期の狂いが起こりやすいのです。ですから、 小売店さんとしては、 今後も納期遅れが起こるものと考えた方が良いでしょう。
このように、 メーカーさんも問屋さんも以前のように潤沢な在庫を持ってはくれ ませんし、今すぐ海外生産をやめることもないようです。
それでは、この問題に対して、 小売店さんはどうしたら良いでしょう。ここでは、 5つの方法を考えてみます。
3.品切れ、納期遅れへの対処法
それは、
1.追加生産予定のある商品を売る 2.納期の短い商品を売る 3.メーカー、問屋の在庫商品を売る 4.国内生産の商品を売る 5.受注生産を増やす
というものです。何だか当たり前のことですね。
そうです。当たり前のことをすれば、問題は解決されて行きます。 それぞれ、もう少し詳しく説明しましょう。
最初の「追加生産予定のある商品を売る」というのは、 メーカーさんや問屋さんに、 追加生産のある商品を確かめておくことです。特に、 自店で積極的に売りたい商品については、 追加生産の時期や数量を聞き出しておきましょう。 それが分かっていれば、売り逃しが減る可能性があります。
2つ目は、「納期の短い商品を売る」ことです。中には、 短い納期を得意にしているメーカーさんがいます。 そうした商品を多く扱って、 納期遅れを感じさせないようにしてはどうでしょう。
3つ目は、「メーカー、問屋の在庫商品を売る」ことです。 メーカーさん、問屋さんが在庫を持たないと言っても、 全く持たないというわけではありません。それなりに、 在庫をしています。 それらの在庫を仕入れられてはいかがでしょう。メーカーさんも、 問屋さんも在庫が減って嬉しいのではないでしょうか。
4つ目は「国内生産の商品を売る」ことです。メーカーさんは、 海外で生産をするばかりではありません。 国内生産の商品もあります。そうした商品を見つけて、 その生産計画を教えてもらいましょう。海外生産品に比べて、 小回りや融通がきくはずです。 品切れや納期遅れが避けられるかもしれません。
5つ目は、「受注生産を増やす」ことです。 お店の在庫商品ばかりを販売しようとしてはいけません。 スポーツ用品には、「受注生産」 をしてくれるメーカーさんや商品が多くあります。例えば、 チームユニフォームや学納品ですね。 それらに力を入れて販売をすれば、品切れは起こりにくいですし、 大抵の場合、納期は守られます。
いかがでしょうか。このように、「品切れ・納期遅れ」 をなくす方法はあります。メーカーさん、 問屋さんの在庫や生産に頼っていた時代は昔のことです。 自ら動いて、品切れや納期遅れを無くす努力をしましょう。
さて、次回は小売店の三重苦「卸掛率」の問題です。
■今日のツボ■
・メーカーさん、問屋さんが在庫を積まないことで、「品切れ」 が起こる ・メーカーさんの海外生産が増えたことで、「納期遅れ」が起こる ・どちらの問題も、小売店さんの努力で避けることができる
image by: humphery /Shutterstock.com
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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。 スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。
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