メーカーが直営店を出すことも増えている昨今、小売店の需要は減っていくのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、業界における小売店の役目について語っています。メーカーから重宝される小売店は何をしているのでしょうか?
小売店の役目
メーカーさんが直営店を出すケースが増えています。何が目的なのでしょう。プロモーションのためでしょうか。ブランド強化のためでしょうか。
小売店さんも、うかうかしておられません。今回は、業界における小売店さんの役目を考えてみます。
1.現場はどこ?
「答は現場にある」と、よく言われます。
スポーツメーカーさんにとっての現場は、工場、問屋さん、小売店さん、スポーツ選手、消費者ということになるでしょう。問屋さんにとっての現場は、営業部隊、小売店さん、消費者だと言えます。
では、小売店さんにとっての現場は、どこに当たるでしょう。それは、売場とお客様ですね。それらの現場には、経営や商売に必要な情報が落ちています。そこで得られた情報を活かせば、自社のためにもなりますし、業界のためにもなります。
メーカーさんは、顧客に喜ばれる商品を作ることが仕事です。そのため、優秀なスポーツ選手やチームとアドバイザリー契約を結びます。彼らから、製品の良し悪しについての意見をもらうためです。既に市場に出ている商品ならば、もらった意見を今後の改良に役立てます。発売前の製品ならば、完成品の作成に活かせるでしょう。
とはいえ、これらの情報はトップアスリートからもたらされたものです。一般的なスポーツ選手からの情報ではありません。トップアスリートの製品に対する感じ方は、一般の選手の感じ方とは大きな違いがあります。技術レベルが違うからです。
ですから、彼らの意見は、一般の選手に合った製品作りに活かせるとは限りません。そんなこともあってか、大手のメーカーさんは直営店を開いています。
2.メーカー直営店の役目
メーカーさんは、直営店でどんな情報を集めようとしているのでしょうか。いくつか考えられます。
・この商品のどこを気に入っているか
・この商品の使用感はどうか
・この商品に不満な点はないか
・この商品の価格は高いと思うか、安いと思うか
・この商品に改良する点はないか
・このブランドに要望することはないか
・お客様自身のことについて
おそらく、このようなことをお客様から聞き出して、本部に伝えます。本部は、それらの情報を分析検討し、製品づくりに活かすでしょう。
ところが、ここには一つの問題があります。それは、メーカー直営店ではそのメーカーの商品しか扱っていないことです。従って、自社製品についての情報は手に入りますが、他社製品の情報は手に入りません。
ここに、小売店さんの存在価値があります。小売店さんは、どの競技を扱うにしても、複数のブランドを扱っているからです。ですから、それぞれのブランドを比較した情報が手に入ります。
この情報は、メーカーさんも問屋さんも、喉から手が出るほど欲しい現場の情報です。あなたのお店では、そうしたお客様からの情報を、問屋さん、メーカーさんに伝えているでしょうか。
その情報は、メーカーさんにとっては改良点の発見につながりますし、他社との差別化ポイントを打ち出す機会ともなります。また、問屋さんにとっては、商品政策に役立つ情報です。それを基に、各社が研究することになれば、業界全体の発展にもつながります。
このことは、業界における小売店さんの大きな役割の一つではないでしょうか。
3.現場の情報を活かす
もちろん、それぞれの小売店さんで集められる情報は、同じではありません。お店のお客様はそれぞれ違いますし、地域や状況によっても違いがあります。
それでも構いません。というか、むしろその方が良いです。メーカーさんにとっては、違った意見が上がってくることで、さまざまなことに気がつきますし、製品開発のヒントにもなります。
このように、小売店さんは、商品を売ることだけが仕事ではありません。現場の情報をメーカーさん、問屋さんにあげることも仕事です。さらに言えば、商品についての意見だけでなく、販売の数字を情報として上げられてはどうでしょう。例えば、
・一定期間に売れた数と順位(商品別、ブランド別)
・一定期間に売れた価格帯の順位(商品別、ブランド別)
・購入したお客様の層と順位(年齢別、競技レベル別)
といったことです。数量を公開できなければ、順位だけでもかまいません。こうしたデータも、問屋さんやメーカーさんにとっては、貴重なものとなります。そして、この貴重な情報を渡してくれる小売店さんのことを、大切に思ってくれるはずです。逆に、メーカーさん、問屋さんから貴重な情報をいただけることもあるでしょう。
とにもかくにも、小売店さんの現場では、貴重な情報がたくさん集まります。その情報を有効に活かすことが、業界の発展につながるものと信じて疑いません。
■今日のツボ■
・現場で集めた情報の中に、答がある
・現場の情報をメーカー、問屋に伝えるのも小売店の役目である
・商品に関する意見だけでなく、販売データも伝えると良い
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