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花王もキリンビールも。売れる企業はどう「仮説」を立てているか

今やあらゆるビジネスシーンで求められる、マーケティング戦略の立案。その際に重要な役割を果たすものをご存知でしょうか。今回のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』ではMBAホルダーの理央 周さんが、「仮説構築」こそが重要である理由と、その立て方をレクチャー。さらに花王の日焼け止め商品を例に取り、仮説構築の具体的なステップを解説しています。

売れる企業はなぜ先手が打てるのか?」 “風が吹けば桶屋が儲かる”の発想で仮説を立てる 花王に学ぶ仮説構築の重要性

企業各社が、この夏商戦に向けて、夏向けの商品を新発売したり、増産したりしています。

6月20日の日経新聞によると、花王は日焼け止めを増産し、キリンビールも、ビールやチューハイの生産量を増した、とのことです。

なぜ、このような動きをするのでしょうか?暑くなれば、日焼け止めやビールが売れて当然ですよね、という声が聞こえてきそうです。

もちろんその通りなのですが、この背景には、コロナが5類に分類されて、「ここ2、3年よりも多くの人が、外に出るようになる」「外出の際に日焼け止めを必要とする」といった具合に仮説を立て動いているからです。

今号では、仮説とマーケティングでの成果の、関係について考えてみましょう。

売れる企業はなぜ先手が打てるのでしょうか?それは、仮説が立てられるからです。

そして、その仮説の立て方と内容が、企業が次の一手を先んじて打つかどうかを決める鍵になるからです。

仮説とは何か?

まずは、仮説とは何か?を、定義していきましょう。

仮説とは、まだ確認されていない、“未来の事象や現象を予想”するための、前提や仮定のことを指します。

これから起きるだろう、ということを予測して、「仮に結論」を出すことです。

これは、経済やビジネスだけでなく、科学的な研究でも重要な役割を果たします。

マーケティングでは、特に消費者の行動や、市場の動向を予測するために仮説を立てます。そもそもわかりにくいですからね。

マーケティングプランを立てる時の仮説の事例

マーケティング活動で例えてみましょう。

たとえば、新製品の販売を開始する前に、どのような人々がそれを購入するのか、どのような価格設定が適切か、どのようなマーケティング手段が効果的か、などを予測する際に、仮説を立てます。

なぜ仮説が重要なのか?

仮説はビジネスにおける、戦略的な意思決定を行うための、出発点となります。

仮説構築が、マーケティングの戦略立案で、重要な役割を果たすのでしょうか?その理由をいくつかあげてみます。

方向性を提供

仮説は、チームが集中すべき方向性を示します。企業は限られたリソースを効率的に使うために、特定の目標や視点に焦点を絞る必要があります。仮説は、どこに労力を注ぐべきか,を決定するための道しるべとなります。

学習を促進

仮説は検証されるため、正確なものであれば確認され、誤っていれば改善のための学習機会となります。失敗から学んだ結果は、ビジネスを改善し、さらに成功するための道筋を示すことがあります。

リスクを軽減

ビジネスには常にリスクが伴いますが、仮説を通じて検証と評価を行うことで、
不確実性を減らし、リスクを管理することが可能になります。

結果を予測

仮説は未来の事象や結果についての、予測を立てることを可能にします。これは新製品の市場導入、新規事業の立ち上げ、マーケティング戦略の実行など、企業のあらゆる決定において重要な役割を果たします。

革新を促進

新たなアイデアやアプローチを試すための、枠組みを提供します。それらのアイデアやアプローチが成功すれば、それが新しいビジネスモデルや、製品の開発へとつながる可能性があります。したがって、仮説はビジネスの成功を促進し、組織の学習と成長をサポートする、重要なツールとなるのです。

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マーケティングプランを立てる際の仮説

マーケティング計画を立てる時に、マーケット、消費者の行動、自社製品やサービスのパフォーマンスに関する予測をします。

これらは、市場分析、消費者行動分析、競合分析などを通じて導き出されます。

新製品のマーケティングプランには、次のように仮説を立てていきます。

ターゲット顧客仮説

「新製品は、20代から30代の若者に向けたもので、彼らはテクノロジーへの興味が高く、常に新しいものを求めている」

価格設定仮説

「高品質を訴求するためには、中~高価格帯での設定が有効である」

プロモーション戦略仮説

「若者はSNSを頻繁に利用するため、SNSを活用したプロモーションが効果的である」

販売チャネル仮説

「若者はオンライン購入に慣れているので、主にオンラインを中心に販売する」

といった具合です。

仮説と検証は1セットで考える

先に述べたように、仮説は全て仮に出す結論です。なので、合っているかどうかは、やってみるまでわかりません。

なので、仮説は全て検証が必要で、その結果によりマーケティングプランを、柔軟に調整するべきなのです。

マーケティングプランを成功に導くには、市場の動向を的確に捉え、適切な仮説を立て、それを検証し続けることが必要です。

仮説を検証する具体的な方法について、説明します。

市場テスト

小規模ながらも実際の市場環境で、製品やサービスをテストすることで、仮説が実際の市場で、どのように機能するのかを確認します。これには製品テスト、価格テスト、プロモーションテストなどが含まれます。

アンケート調査

顧客やターゲットとなる市場にアンケートを行い、直接的な意見や反応を得ることで、仮説の妥当性を確認します。

データ分析

データは仮説検証における、最も重要なツールの一つです。販売データ、ウェブサイトの訪問者データ、SNSのエンゲージメントデータなど、各種データを分析することで、仮説の正確さを検証します。

フィードバックの収集

顧客や販売員からのフィードバックを集め、その声を製品開発やマーケティング戦略の改善に生かします。

これらの方法を用いて仮説を検証することで、事業の成功確率を大幅に高めることが可能になります。

重要なのは、検証の結果に基づいて仮説を修正し、戦略を柔軟に調整することです。

なぜなら、常に変化する市場環境に対応するためには、固定的な思考ではなく、柔軟な思考が必要だからです。

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先程の花王の日焼け止め商品を例に、仮説構築の具体的なステップを見ていきましょう。以下は、もちろん私の推測による、仮説構築の事例です。

1.市場調査

まず、日焼け止めの市場全体を理解します。市場の規模、成長率、主要なプレイヤー、消費者の傾向などを調査します。

仮説1:「日焼け止め市場は年々成長しており、消費者は自然由来成分と、高いUVカット効果を求めている」

2.競合分析

他の日焼け止めメーカーの製品、価格、プロモーション、販売チャネルなどを分析します。

仮説2:「花王の日焼け止めは、競合製品と比較して肌に優しい成分を強調することで、競争力を持つことができる」

3.消費者行動の分析

花王の既存の顧客や、潜在的な顧客の行動を分析します。どのような情報源を信頼し、どのような製品を選ぶかなどを調査します。

仮説3:「消費者は製品のレビューや、専門家の意見を重視し、安全で効果的な日焼け止めを選ぶ傾向がある」

4.製品開発

上記の仮説を基に、新しい日焼け止めを開発します。市場調査で明らかになった、消費者のニーズを満たす製品を設計します。

仮説4:「自然由来成分を用い、高いUVカット効果を持つ日焼け止めを開発すると、市場で成功する可能性が高い」

5.仮説の検証

製品を市場に投入し、仮説の正確さを検証します。販売データ、消費者のフィードバック、市場の反応などを分析します。

仮説5:「自然由来成分と、高いUVカット効果を持つ花王の新しい日焼け止めは、消費者に受け入れられ、良好な販売結果を達成する」

以上が、花王の日焼け止めを例にした、仮説構築の具体的なステップです。

このようなステップで、営業・販売・マーケティング計画を作成し、意思決定をするのです。

ぜひ自社のビジネスに当てはめて考えてみてください。

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image by: Shutterstock.com

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