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日本にも降りかかる火の粉。習近平“子飼い”の中国外相が突如解任されたウラ事情

6月25日を最後に動静が途絶えていた秦剛外相を、7月25日に解任した中国の全人代常務委員会。習近平国家主席の大抜擢人事により外相に就いた秦氏の突然の解任の裏には、一体どのような事情があるのでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、さまざまな報道を引きつつその真相を深堀り。反習近平勢力による「追い落とし」である可能性を指摘するとともに、中国の権力抗争の火の粉が日本に降りかかる危険性を懸念しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年7月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

中国で大規模権力抗争が勃発か。突然の外相解任の裏側

中國外交部「秦下王上」 專家:反映中國外交系統動盪(中国外交部の「秦下王上」 専門家:中国外交の混乱を示している)

中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会は7月25日、1ヶ月ものあいだ動静がわからなかった秦剛・国務委員兼外交部長を解任し、元外相で、中国共産党(中共)中央委員会の王毅外交工作委員会主任のポストに戻すことを決定しました。

この事態を台湾の自由時報は「秦下王上」と表現しました。秦が下がって、王が上がったという意味です。

秦剛がなぜ解任されたかについては、正式な発表がありませんが、香港のテレビ局キャスターの女性との関係が問題視され、調査を受けているという情報も出回っていました。しかし、外交部のトップがわずか7ヶ月で解任され、その理由が正式に発表されないというのも、異例のことです。

中国消えた外相はどこに?何が起きている?

ボイス・オブ・アメリカに中国の独立系政治アナリストである呉強氏が語ったところによると、秦氏の解任とその失踪にまつわる噂は、中国のトップ指導部内の不確実性を反映しており、秦氏の政治キャリアは終わったということです。

呉強氏は、北京は外国との取引における出血を止めたいと考えており、王毅の復帰により、王は外交体制の危機において過渡的な役割を果たし、不確実性を回避することができると考えているのだろうとしています。

一方、シンガポール国立大学政治学部のチュアン・カーウイング准教授によれば、秦氏の説明なき解任は、中国が正当な手続きを欠き、独裁的であるという印象を外部に与えたといいます。

チャイナウォッチャーは、秦が過去に急速に出世したことは、習近平の「ワンマン政治」の危険性を例証しており、任命や解任はもはや厳格な内部審査手続きによって行われるものではないと指摘します。

シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院の呉務正准教授も、かつての中国は人事に非常に厳しかったものの、習近平を中心とした意思決定プロセスによって、過去には人事のチェック・アンド・バランスが効かなくなり、中国の外交体制も「分断化」されたと言及しています。

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国内の不満を背景に強まる反習近平勢力の動き

秦氏は、香港の鳳凰衛視の司会者である傅暁天氏との不倫が取り沙汰されていました。傅氏は「スパイ容疑」で逮捕され、秦氏の名前を明かしたため、アメリカ人の隠し子が発覚するというスキャンダルにまで発展していたのです。

秦剛が習近平の後押しであまりに急速に出世したため、そのやっかみでスキャンダルがリーク、流布され、最終的に解任に繋がったという見方も少なくありません。いずれにせよ、権力闘争の結果ということになりますが、それにしても就任から7カ月しか経っていないところでの解任ですから、反習近平勢力による追い落としである可能性も少なくないわけです。

産経新聞台湾支局長の矢板明夫氏は、秦氏の事件に対する中国政府の最終的な結論は、彼が汚職に関与したか、党に不誠実であったということになるのではないかと推測しています。

秦剛離奇失蹤一個月今遭「免職」 王毅回鍋任中國外交部部長

両岸政策研究会の呉世池研究員によれば、これは保守派の反撃であり、習近平に秦剛の後任を迫ったものであるはずだといいます。秦剛は習近平が絶大な信頼を寄せる外交官であり、駐米大使に始まり、2002年10月の中国共産党第20回全国代表大会で、秦は56歳で中央委員に昇格し、同年末には常識を破って前倒しで外相に就任、今年3月、57歳の誕生日の10日前に、秦は国務副委員に就任しました。

この異例な昇進は、秦がいかに習近平から信頼されているかを示している一方で、伝統的な外交システムの変更でもありました。つまり、習近平は外交部に不信を抱いており、だからこそ子飼いの秦剛を外交部のトップに抜擢したわけです。

王毅回鍋外長!學者呉瑟致:保守派反撲 迫使習把秦剛換掉

もっとも、秦剛の解任は習近平にとって痛手ではあるものの、新外相として噂されていた党対外連絡部長の劉建超ではなく、習近平のコントロール下にある元外相の王毅にポストを戻したことは、習近平にとってダメージは最小限に抑えられたと、呉世池研究員は述べています。

というのも、劉建超の背後には団派(中国共産主義青年団)があり、もしも劉が新外相に就任すれば、習近平にとっては外交体制をコントロールできないという状態になるからです。王毅であれば、ある程度コントロールできるため、今回のことはそれでもまだ習近平にとっては最悪の事態ではないという見立てです。

とはいえ、中国の権力の中枢部で大きな闘争が起こったことは間違いありません。前回のメルマガでもお知らせしたように、中国各地で再び「白紙革命」を呼びかける動きもあり、習近平体制に対する一般市民の不満も高まりつつあります。そうした国内の不満を背景に、反習近平勢力の動きが強まってきているのでしょう。

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経済の失速もあり、中国国内はますますきな臭くなってきています。新たな権力闘争が随所で起こる可能性もあり、中国の人事や政治状況から目が離せない状況になっています。

中国はつねに権力闘争によって大きな事件や混乱が起こってきました。文化大革命も、天安門事件も、その根底には権力闘争がありました。天安門事件後は、民衆の不満を外部に向けさせるために反日教育が行われました。

いま起きている権力闘争が新たな未曾有の事態を招き、その火の粉が日本に飛び火する可能性も大いにあるのです。

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