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“アメリカ没落”を察知したジャーナリストが解説、いま再び「ドル離れ」が起きている原因

「100年に1度の大不況」で崩壊したアメリカ一極の世界。そして、今再び「ドル離れ」が起きていると語るのは、今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんです。前回はユーロの誕生でドルに危機が…。そして、今回の敵は「人民元」だと北野さんが解説しています。

米中通貨戦争の行方

私は最近、「パワーゲーム会員」の皆さんに「気をつけてください」と警告しはじめました。どういう話でしょうか?

リーマンショックが起こる前

私の一冊目の本は、『ボロボロになった覇権国家アメリカ』といいます。2005年に発売になりました。この本の内容を一言でいうと、「アメリカ発の危機が起こり、アメリカは没落しますよ」です。そして3年後、「リーマンショック」から「100年に1度の大不況」が起こり、「アメリカ一極世界」は崩壊したのです。

なぜ、私はこの動きを予測できたのでしょうか?「アメリカ不動産バブル崩壊」は2006年。「サブプライム問題顕在化」は2007年。2005年には、何の徴候もなかったのでは?

あったのです。なんでしょうか?「ドル体制に挑戦する動き」です。具体的には?

・1999年、欧州共通通貨ユーロ誕生
・2000年、サダム・フセインが、イラク原油の決済通貨をドルからユーロにかえる
・ユーロ紙幣、硬貨流通開始
・2003年、イラク戦争開始。

拒否権を持つ国連安保理常任理事国のうち、フセインをそそのかしたフランス、ロシア、中国が、イラク戦争に反対。それでアメリカは、国連安保理を無視して開戦。しかも、開戦理由(フセインは大量破壊兵器を保有している、アルカイダを支援している)が大うそであることが後に判明。アメリカは速やかにフセイン政権を打倒し、イラクの原油決済通貨をユーロからドルに戻しました。しかし、世界の「ドル離れ」は止まらなかったのです。

2005年に『ボロボロになった覇権国家アメリカ』がでた後何が起こったのでしょうか?

2006年、ユーロの紙幣流通量がドルを超えた。2007年、原油価格高騰でウハウハだったプーチンが、「ルーブルを世界通貨にする」と宣言した。2007年、イランが原油のドル決済を停止。その他、南米共通通貨、アフリカ共通通貨、湾岸共通通貨などの創設が議論されるようになっていました。

2008年1月、ジョージ・ソロスは、「現在の危機は、ドルを国際通貨とする時代の終焉を意味する」と超爆弾発言。そして、2008年9月15日、「リーマン・ショック」から「100年に1度の大不況」がはじまったのです。これで、「アメリカ一極時代」は終焉し、2009年から「米中二極時代」がはじまりました。

 

再び起こっている「ドル離れ」

さて、前回の危機は、1999年のユーロ誕生。2000年、フセインがイラク原油の決済通貨をドルからユーロにかえたこと。2003年、イラク戦争。という感じではじまっていきました。「ドルに対抗する通貨ユーロが誕生し、広まっていったこと」が危機を誘因したのです。

そして、再び世界で「ドル離れ」が起こっています。ドル体制、今回の敵になっているのは「人民元」です。何が起こっているか、いくつか例を挙げておきましょう。

・SWIFTから排除されたロシアが、「人民元圏」にくみこまれた。
・ブラジル、アルゼンチンが、中国との貿易を人民元で行うようになった
・南米共同体で、「南米共通通貨構想」が復活してきた
・中国中央アジアサミットで、「運命共同体」を創ることが合意された。中央アジアが将来「人民元圏」に組み込まれることは、ほぼ確実。

さらに、『フォーブス』6月5日付。

インド、パキスタン、イランを含む9カ国の中央銀行から成るアジア決済同盟(ACU)は、既存の主要な国際決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT)に代わる新たな金融メッセージシステムを今後数週間で立ち上げる計画だ。現在ACUの議長国を務めるイランの関係筋によると、先月24日に首都テヘランで開かれた会議で、1カ月以内に新制度を立ち上げることで合意に至った。

「アジア決済同盟」(ACU)。皆さんご存知でしたか?ウクライナ戦争でロシアが排除されて困った国際決済システム「SWIFT」に替わるシステムです。ちなみに中国には「CIPS」というのがあります。ACUの参加国は、バングラデシュ、ブータン、イラン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカ、ミャンマー。要するに、この9か国が取引するときは、「SWIFTをつかわず、ACUでやりましょうよ」と。

メンツを見ると、インドが参加しているのがとても気になります。しかし、他のメンツを見ると、「ドル体制にとってそれほど脅威ではないかな」と思えるかもしれません。ですが、これは「ドル離れという大きなトレンドの一つ」ととらえるべきです。

というわけで、前回の危機は、「ドル 対 ユーロ」の戦いだった。これから訪れるかもしれない危機は、「ドル 対 人民元」が原因になる可能性が高いのです。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2023年8月11日号より一部抜粋)

image by: Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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