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ナポレオンの心を射止めた“美魔女”と「妖婦」の名で呼ばれた日本の教育者

日本の女性議員たちのフランス研修が大炎上し、SNSを中心に大きな話題となったのは記憶に新しいところ。そこで、今回のメルマガ『歴史時代作家 早見俊の無料メルマガ』では、時代小説の名手として知られる作家の早見さんが、日本とフランスの「豪傑女性」について紹介しています。

日仏豪傑女性伝

女性議員のフランス研修が話題になりました。今回はフランスと日本の豪傑女性の紹介です。

まずは日本の下田歌子です。

下田歌子は明治から大正にかけて活躍した教育者、歌人で、特に女子教育の先駆者として有名です。有名であったのは、教育者とは思えない、妖婦とあだ名をつけられたスキャンダルにもよりました。歌子は立身出世のためだったら男を手玉の取る妖婦だと批難されたのです。教育者と妖婦、相反する二つの顔を持つ下田歌子とはどんな女性だったのでしょうか。

歌子は幕末、美濃国岩村藩の藩士の娘として生まれました。5歳の時、漢詩を詠み、和歌を作る神童ぶりだったそうです。明治になって、父と共に東京に出、17歳の時、西郷隆盛に認められて宮中の女官になります。

宮中では明治の紫式部と称えられる才媛ぶりを発揮します。実は歌子は本名ではなく、彼女の才能を愛でた明治天皇の皇后美子から授けられたのでした。ところが、女官たちから激しいいじめに遭い、7年で剣客下田猛雄との結婚を理由に宮中を去りました。この時、歌子が宮中を辞したのは、品行が悪く、問題視されたという噂が広がりました。

歌子は宮中から追い出された屈辱をバネとし、夫猛雄が病に臥すと、療養費を稼ぐため、私塾を開きます。明治の元勲の妻女たちを教育し、政界の大物たちと繋がりができます。伊藤博文がパトロンだと噂され、新興宗教家で日本のラスプーチンと言われた飯野吉三郎と恋仲になったと評判されました。

やがて、社会主義者幸徳秋水が運営する平民新聞紙上で、『妖婦下田歌子』と題された実名小説が連載されます。連載内容はスキャンダラスで、彼女は伊藤博文に強姦されて性と野心に目覚め、政界や学界の有力者を次々に誘惑、彼らを踏み台に出世していく様が描かれました。

また、女の徳を語った歌子の演説を引き合いに出し、妖婦が語る資格はないと弾劾しました。この連載が掲載されたのは、彼女が女子学習院院長であった頃で、為に彼女は乃木稀典によって辞職させられました。それでも、実践女子学校、順心女学校を創設するなど女子教育に人生を捧げました。

下田歌子、果たして女子の鑑だったのでしょうか、それとも男を手玉に取る妖婦だったのでしょうか。

次にフランスの女傑、ナポレオンの妻ジョゼフィーヌです。

ジョゼフィーヌはフランスの植民地だった西インド諸島に下級貴族の娘として生まれました。美貌に恵まれ、社交的であった彼女は16歳でボアルネという子爵と結婚し、一男一女をもうけますが二十歳で離婚します。

離婚後、ボアルネはフランス革命に巻き込まれてギロチンにかけられ、ジョゼフィーヌも投獄されました。獄中ではめげるどころか、オッシュ将軍という軍人と愛を交わします。やがて、革命政府が倒れると釈放され、オッシュを捨て、ちゃっかり新政府の有力者ポール・バラスの愛人になりました。

ナポレオンと結婚したのは32歳の時です。ナポレオンは6つ下の26歳、美魔女にメロメロとなりました。彼女の方はというと、ナポレオンが留守がちなのをいいことに、浮気三昧でした。遠征先からナポレオンが送ってきたラブレターを周囲の者に見せびらかして笑っていたとか。

そして思わぬハプニングが起きます。ジョゼフィーヌの浮気を叱責するナポレオンの手紙を乗せた船が敵将ネルソン提督に捕まり、手紙が新聞ネタになったのです。こんな大醜聞にもかかわらず、ジョゼフィーヌはナポレオンの愛を繋ぎ留め、ナポレオンが皇帝に即位すると皇后となりました。

しかし、子供ができなかったため6年後に離婚されてしまいます。臣下はジョゼフィーヌが離婚されたことに喝采を送ったと思いきや離婚に反対でした。ナポレオンも散々浮気していたからといこともありますが、ジョゼフィーヌは持前の社交性で夫が軍事、政治に専念できる環境を整えていた、つまり、内助の功を発揮していたからです。

果たして、離婚後ナポレオンは敗北を重ねます。ジョゼフィーヌはあげまんであったのです。離婚されてからも彼女は皇后の称号を持ち続け、裕福に暮らし、ナポレオンとも交流が続きました。最期の言葉の中に「ボナパルト」と夫の名があったとか。ナポレオンもジョゼフィーヌと呼んで息を引き取っていますから、きっと二人は深い絆で結ばれていたのでしょう。

image by: Shutterstock.com

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歴史、ミステリー四方山話、思いつくまま日本史、世界史、国内、海外のミステリーを語ります。また、自作の裏話なども披露致します。

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【著者】 早見俊 【発行周期】 週刊

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