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「自民が圧力をかけた」日本保守党のWikiページ削除に発狂する百田尚樹シンパたち

安倍氏亡き後の自民党に愛想を尽かし、自ら「日本保守党」を立ち上げた作家の百田尚樹氏。その新党を巡り、早くも「ひと悶着」起きていたようです。今回のメルマガ『小林よしのりライジング』では、漫画家・小林よしのりさん主宰の「ゴー宣道場」参加者としても知られる作家の泉美木蘭さんが、ウィキペディアから同党のページが削除されたことに納得がいかない百田氏の発言や、彼のライブ配信欄に書き込まれた支持者たちの声を紹介。その荒唐無稽さに鋭いツッコミを入れています。

エセ保守老害列伝~日本保守党を率いる百田尚樹氏の投げ銭集め芸

9月20日、この日、百田尚樹には事件が起きていた。

ネットの「フリー百科事典」サービス・ウィキペディアから「日本保守党」のページが削除されたというのだ。

ほう。削除とは穏やかではない。

ウィキペディアは、誰でも編集人として書き込み参加ができるが、ページを立ち上げる基準や、書き方、内容にはルールがあるらしい。そのルールに違反したものが見つかると、ボランティアの編集人たちが修正し、必要があれば議論をして、削除するという仕組みになっている。

学生や趣味人などがボランティアの編集をやっていて、日本語版ウィキペディアの編集に携わっている人は、15,000人ほどいるそうだ。間違っていたり、偏っていたりする記述は山ほどあるが、誰かの経歴や、主な事件、出来事などを大雑把に知りたい時には便利なものでもある。

「日本保守党」のウィキペディアページが、いつ、誰によって立ち上げられたのかはわからないが、9月20日にページが丸ごと削除されたのだそうだ。

一体、なにが起きたのか?

反日勢力の仕業なのか!?(百田シンパ風)

ウィキペディアは、ページを削除する事案が発生した場合、その賛否について、認定された編集人たちが議論し、なぜ削除に至ったかの経緯を保存してから、管理者が削除することになっている。「日本保守党」の削除されたページにもそれが掲載されていた。

百田尚樹が、ライブ配信でそれらを読み上げはじめた。

現時点では結成予定の政治団体であり、組織としての特筆性なし。発起人である百田尚樹と有本香の記事に一筆入れれば済む。また、政党名称も「日本保守党」とは限らず、Yahoo!ニュースでは「百田新党(仮称)」と表記。(編集人A)

10月17日に「結党」するそうです。記事の立項はそれからで良いと考えますが、その一方でわざわざ削除するのも二度手間に感じます。(編集人B)

全削除に一票。そもそも2023年9月15日17:45時点では、実績どころか結成すらしておらず、政治団体ですらありません。「こんなせいとうつくりたい」と言う個人の妄想レベル。言わば『政治団体として卵にすらなっていない状態』です。(編集人C)

ほかにもいろいろな編集人から書き込みがあり、総じて賛成多数で削除と相成ったようだ。

編集人Cの「『こんなせいとうつくりたい』と言う個人の妄想レベル」という書き方には、悪意があるような気がしないでもないが、要するに、ウィキペディアには、一定の特筆性がなければ、項目として採用しないというルールがあり、「政治活動の実績もなく、結党が予定されているだけの政治団体の仮名称」は、掲載には値しないという結論だった。

ものすごくよくわかる。

現時点では、百田尚樹がネット上で騒いでいるだけで、実際には正式な公党にもならず、一過性の話題で終わる可能性だってあるのだし、「やっぱり政党名変えました」と言い出すこともあり得る。

百田はライブ配信で、「党の印鑑作ってきました」と言って、印影まで披露していたが、それはあくまでも百田のYouTube内での話。いくら本人が本気でも、タコツボの外に一歩出れば、現時点では「特筆性なし」と見られるのが現実だ。

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花開く「自民は日本保守党を相当恐れている」という世界観

ライブ配信のチャット欄には、百田シンパが集結し、

「自民党の嫌がらせだな」
「自民党の破壊工作だ」
「言論統制だろ」
「ウィキペディアは反日だ!」

などの書き込みであふれていた。

アンチ自民党だけに、「自民党に圧力を受けた」と考えたい人が多いようだ。

自民党にネット監視部隊がいることは有名だが、仮にそうだとしても、ウィキペディアから結党前の「日本保守党」のページを消させて、一体どれほどの効果があるのかよくわからない。ぺんたごんが、日本人から鶏肉と卵を奪おうとして、養鶏場にちまちま放火しているという陰謀論と同じくらい、さっぱりわからない。

百田は、YoutubeやX(旧ツイッター)でガンガン発信していて、「ツイッター内与党、第1党になった!」「日本保守党のフォロワー数、圧巻の自民党超え!」「ネット世論の意中の政党だ!」などとみんなでお祭り騒ぎをしているのだから、そちらのほうが有意義じゃないか。

ウィキペディアとしては、「記事の立項は、結党されてからで良い」という考えで、どうせ来月には結党されるのだろうから、「わざわざ削除するのも二度手間に感じます」という意見を書いている編集人だっている。破壊工作でも嫌がらせでもないだろう。

だが、百田本人は納得がいかないご様子だった。

「でもね、特筆性がないと言えるでしょうか?9月1日にXのアカウントができました。ここからフォロワーがぶわーっと増えていってですね、たった15日間で自民党を追い抜いたんですよ!」

「ここで、やっぱりやーめたなんて言うはずがないですよね」

「著名やと思うんですよ、すでに。著名性がない、特筆性がない、だから削除と言うんだったら、こんなもん、ウィキペディアにある記事の半分ぐらいが削除ですよ」

SNSのフォロワー数が、自民党を追い抜いたということが、よほどの誇り……いや、唯一の「特筆事項」になっているようだ。

だが、月刊『WiLL』と『Hanada』、『夕刊フジ』という身内メディア以外には浸透しておらず、そもそもまだ結党前で、大手マスコミが扱う対象にもなっていない。

著名なのは、タコツボの中だけ。一般的にはまだ知られていないのだ。

「たしかに理由は納得できるんです。でもね、『それがウィキペディアちゃいますの』と言いたいわけです」

とは言え、百田も、削除の理由は理解しているらしい。ただ、どうせいい加減なネットのフリー百科事典、それがウィキペディアなんだから、いちいち消すなよと言いたいようだ。

それなら、「別にウィキペディアに載っていようがいまいが、どうということはない」というのが結論になりそうだが……。

チャット欄には、相変わらず

「公明党、創価学会のやつらやで」
「自民党は、本気で潰しに来るらしい」
「敵には相当効いてますよ」

など、「敵=自民党は、日本保守党を相当恐れている」という世界観が花開いていた。

そんな百田、別の日のライブ配信では、「衆院10月解散」というウワサについてとりあげ、日本保守党の正式な結党日が10月17日に予定されていることから、自民党が、「日本保守党の結党前に、解散総選挙に打って出て潰してしまえ」と考えているのではないかと語った。

「いろんなことを考えながら解散のタイミングを見計らっていると思いますが、その理由のひとつに、私は、『日本保守党を潰したい、日本保守党がリングにも立てない間に、なんとか試合を進めてしまいたい』というのがあると見てます!」

「その比重が大きいか小さいかはわかりません。でも日本保守党は、自民党関係者からものすごいバッシングされてます」

「焦りがあるのかなと思います」

ないない。

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新党立ち上げ前にすでに流れていた「10月解散説」

いや、もちろん、はたから見ていると、「自称保守票」が割れる原因にもなるのだろうし、いずれ自滅するのではと思えてくるが、解散総選挙の時期にまで影響を与えるほどのダークホース感まで発揮してるかあああ!??

これを言っちゃあおしまいよ、という話だが、そもそも「10月解散説」というウワサは、百田が新党を立ち上げると言い出すよりもずっと前、6月ごろにはすでに言われていたという事実もある……。

「10月22日投票のうわさ」 維新代表、次期衆院選巡り(2023年6月25日 日本経済新聞)

倉持麟太郎氏にたずねてみたが、やはり「10月解散の噂はありますが、百田ヘッジではないっす」という極めてライトな返信があった。

そんな百田のライブ配信だが、タコツボとは言え、人気がある。

ライブ配信時の同時視聴者数は、常時およそ18,000人~20,000人、配信後も再生回数は25万~35万回平均だ。

カレーせんべいが怒られた、三浦瑠麗に関する小林先生の切り取り動画でも10万回前後だったから、ネット上での動員力の強さが見える。

視聴者からは、毎回、百田に向けて投げ銭が落とされているが、特に新党を立ち上げると宣言してからは、その額が20万円を超えているらしい。

百田がその話をはじめると、チャット欄が呼応して大盛り上がりを見せはじめ、1000円、1600円、10000円とどんどん投げ銭が投入されはじめた。

「ごめんなさい!一気に投げ銭が!要求してません、してませんよ。浄財、清いお金は、党の活動資金に使わせていただきます!もうすでに私も有本さんも、だいぶお金をつぎ込んでます!」

「ま、ま、また増えていく。どんどん増えていく。すいません、ありがとう!ありがとうございます!」

「わ、もう投げ銭やめて下さいとは、私の個人チャンネルやったら言うとこですけど、ま、これ、個人チャンネルなんですけど、あの、活動費ははっきり申し上げまして、1円でも欲しいという気持ちがあります」

投げ銭は要求していないといいながら、自分も有本もかなりの額を活動資金に突っ込んでいると言って、あきらかに募っている百田。

480円、320円、800円、5000円、3000円……あっという間に、総額10万円を超えた。

「本当にありがとうございます。ありがとうございます!はい、ホントに私は、このハゲ頭をご覧いただくしかありません!」

「おおきに!もうこのハゲに、『おおきに』と書いて見せましょうかね」

「おおきに!」

おでこにマジックで「おおきに」と書き入れ、投げ銭が入るたびに「おおきに!」「おおきに!」と叫んで、わざとハゲ頭を見せる百田尚樹、67歳──。

さらに、「一般の党員の方の党費は月500円」と党費の話を持ち出し、ますます投げ銭を煽る煽る!

この党費の話と、「ハゲ頭おおきに芸」で、たちまちタコツボチャットは盛り上がり、数分間で20万円以上の投げ銭が集まった。

「ご寄付」を募りまくる竹田研究会のコジキ版?

なんというか、スゴイ世界を見たという気分だ。

この党首が、現政権を焦らせ、潰しにかかるためにウィキペディアに圧力をかけ、解散総選挙に打って出るほどの大物であったとは──。

んなわけあるかーい!

さて、今週発売された『月刊Hanada』令和5年11月号は、前号で私が想像したとおり、あっと言う間に百田新党にニャンニャン絡みついた雑誌になっていた。

トップ記事は、百田と有本の対談で「独占激白 日本保守党の真実」。

そして、「私たち、日本保守党を応援します!」というキャンペーンが展開され、見城徹、井沢元彦、篠田英朗、島田洋一、門田隆将、一色正春など10人の寄稿が掲載されている。

さきほど入手し、ちらっと読みはじめたが、またもやびっくり仰天の内容であった。

次回、じっくりレポートする。

(『小林よしのりライジング』2023年9月26日号より一部抜粋・文中敬称略)

2023年9月26日号の小林よしのりさんコラムは「キャンセルカルチャーとは何か?」。ご興味をお持ちの方はこの機会にご登録ください。

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image by: X(@日本保守党(公式)Conservative Party of Japan

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【著者】 小林よしのり 【月額】 ¥550/月(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4火曜日 発行予定

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